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第16章 自分はあの日から変わりました
第225話 あの時見たもの
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「ゼロラさんって本当に奥手ですよね。そこがいいところでもあるんですが」
「ふむ、同感だね。ゼロラ殿は相手の気持ちを尊重しようとする男だ。だが、その優しさが彼を優柔不断にしてしまっている」
弟のラルフル達と洞窟から帰ってきた後、私とリョウさんは二人でゼロラさんのことを語り合っていた。
切っ掛けはリョウさんが『恋バナをしよう』と提案してきたから。
この人って普段の奇行のせいで霞みがちだけど、結構ロマンチストなところあるわよね。
「ところでさっきからリョウさんは何をしているのですか?」
リョウさんは私と話を始めてからずっと右手の人差し指で私の方に魔法陣を描いている。
「ん~? これかい? 話ながらで申し訳ないけど、マカロンの魔力をボクで調べさせてもらってる。こうして事前に調べておけば、魔法の使い方をマカロンにどうレクチャーすればいいのかすぐ分かるからね」
どうやらリョウさんは私に魔法の使い方を教えるために、私の身に宿ったラルフルの魔力を調べてくれているようだ。
「気持ちは有難いのですが……無理はしないでくださいね?」
「その言葉は有難く受け取っておこう。でも、ボクはちょっと無理してでも君に魔法の使い方を覚えてほしいんだ。ボクの時間も限られてるしね」
私はリョウさんのことを心配しましたが、リョウさんは無理をしてでも自らの意志を押し通すつもりだ。
この人はとにかく自分に正直だ。それ故に頑固なところもある。
だがそれらは自分の欲求を満たすためのものばかりではない。
欲望のために奇行に走ることも多々あるが、ラルフルとミリアちゃんの仲を取り持とうとしたこと、私の本心を私自身に理解させたこと、今こうして私のために創意工夫を重ねてくれること。
そうやって自らの身を顧みずに尽力できるところなども含め、すごく魅力的な女性だ。
――なんだかゼロラさんと被って見えて、私よりもお似合いに見える。
――そういえば、ゼロラさんもラルフルと同じで魔力ゼロだったわよね?
「ねえ、リョウさん。もしかしてゼロラさんも"誰かに魔力を奪われた"のかしら?」
ラルフルとも重なって見えたゼロラさんのことについて、私は質問してみた。
「どうだろうね? 彼の場合は記憶までないから。もしかしたら、"記憶も魔力も奪われた"という可能性も否定できない。ゼロラ殿が本来どういう人物だったかにもよるけど、もしそんなことができるのならば、"生命さえ作り出す"こともできそうだ。その記憶と魔力の大きさにもよるだろうけどね」
生命さえ作り出す……。
ただの記憶喪失のおじさんだと思ってたゼロラさんだけど、本当は何かもっと大きな運命に巻き込まれているのかもしれない……。
私達でも想像できないような、そんな過酷な運命を背負って――
――そんな時、私はふと思ってしまった。
『ゼロラさんの記憶が戻らなければいいのに』と。
もしゼロラさんの記憶が戻ってしまったら、私達の元を離れて行ってしまうかもしれない。
そんな浅ましい考えが私の頭をよぎってしまった。
「……この件についてはボク達が干渉することではないだろう。ゼロラ殿のことはゼロラ殿自身が決めることだ。彼に記憶が戻ろうが、魔力が宿ろうが、ボク達は"今の"ゼロラ殿だからこそ慕っている。この先にどんな変化が起ころうと、ボク達はゼロラ殿の意志を尊重するべきだ」
そんな私の考えを読み取ったのか、リョウさんは黙っている私に自らの主張を述べてきた。
あくまで自らの意志ではなく、ゼロラさんの意思を尊重する主張……。
――この人には……あらゆる面で勝てないのかもしれないなー……。
「……ん? ゼロラさんって魔力ゼロなんですよね?」
「そうだよ。最近のゼロラ殿の魔力を正確には測ってないけど、そんなすぐに魔力なんて身につくものじゃないからね」
私は話をしていて疑問に思ったことをふと口にした。
「でも……私、見たんです。ゼロラさんが体から<灰色のオーラ>を出しているところを……」
「<灰色のオーラ>……!?」
ゼロラさんが目覚めた日の翌日の早朝、あの人が近くの林で体を動かしていた時に見た<灰色のオーラ>。
あの時はゼロラさんが上半身裸だったので思わず目を逸らしてしまい、次見た時には消えていたが、あのオーラは確かにゼロラさんから溢れ出ているものだった。
あれは魔力によるものだったのか? 気になった私はリョウさんに状況を伝えながら尋ねてみた。
「ゼロラ殿が上着を脱いで鍛錬に集中していた時か……。汗や蒸気とかじゃないかい?」
「いえ。そんなものではなかったです」
「じゃあ……マカロンがゼロラ殿の半裸姿に興奮して見た、目の錯覚とか?」
「そ、そんなのじゃありません! ……多分」
た、確かにあの時はゼロラさんの半裸姿に思わず目を覆ってしまいましたが、そんなのではないはずです!
……ないはずです。
「<灰色のオーラ>――まさかジフ兄やシシ兄と同じ――いや、でも――だが可能性は……」
そんな私の動揺を他所に、リョウさんは一人でブツブツ考え込んでいます。
「……マカロン。ゼロラ殿が帰ってきたら確認してみたい。ボクもその<灰色のオーラ>について興味がある」
リョウさんは何か分かったような表情で私に話してきました。
私も気になります。ゼロラさんから溢れ出ていた<灰色のオーラ>が何だったのか……。
ゼロラさんがどんな人なのか、その奥底にどんな力が眠っているのか。
リョウさんと同じく、私の興味も募ります。
「ふむ、同感だね。ゼロラ殿は相手の気持ちを尊重しようとする男だ。だが、その優しさが彼を優柔不断にしてしまっている」
弟のラルフル達と洞窟から帰ってきた後、私とリョウさんは二人でゼロラさんのことを語り合っていた。
切っ掛けはリョウさんが『恋バナをしよう』と提案してきたから。
この人って普段の奇行のせいで霞みがちだけど、結構ロマンチストなところあるわよね。
「ところでさっきからリョウさんは何をしているのですか?」
リョウさんは私と話を始めてからずっと右手の人差し指で私の方に魔法陣を描いている。
「ん~? これかい? 話ながらで申し訳ないけど、マカロンの魔力をボクで調べさせてもらってる。こうして事前に調べておけば、魔法の使い方をマカロンにどうレクチャーすればいいのかすぐ分かるからね」
どうやらリョウさんは私に魔法の使い方を教えるために、私の身に宿ったラルフルの魔力を調べてくれているようだ。
「気持ちは有難いのですが……無理はしないでくださいね?」
「その言葉は有難く受け取っておこう。でも、ボクはちょっと無理してでも君に魔法の使い方を覚えてほしいんだ。ボクの時間も限られてるしね」
私はリョウさんのことを心配しましたが、リョウさんは無理をしてでも自らの意志を押し通すつもりだ。
この人はとにかく自分に正直だ。それ故に頑固なところもある。
だがそれらは自分の欲求を満たすためのものばかりではない。
欲望のために奇行に走ることも多々あるが、ラルフルとミリアちゃんの仲を取り持とうとしたこと、私の本心を私自身に理解させたこと、今こうして私のために創意工夫を重ねてくれること。
そうやって自らの身を顧みずに尽力できるところなども含め、すごく魅力的な女性だ。
――なんだかゼロラさんと被って見えて、私よりもお似合いに見える。
――そういえば、ゼロラさんもラルフルと同じで魔力ゼロだったわよね?
「ねえ、リョウさん。もしかしてゼロラさんも"誰かに魔力を奪われた"のかしら?」
ラルフルとも重なって見えたゼロラさんのことについて、私は質問してみた。
「どうだろうね? 彼の場合は記憶までないから。もしかしたら、"記憶も魔力も奪われた"という可能性も否定できない。ゼロラ殿が本来どういう人物だったかにもよるけど、もしそんなことができるのならば、"生命さえ作り出す"こともできそうだ。その記憶と魔力の大きさにもよるだろうけどね」
生命さえ作り出す……。
ただの記憶喪失のおじさんだと思ってたゼロラさんだけど、本当は何かもっと大きな運命に巻き込まれているのかもしれない……。
私達でも想像できないような、そんな過酷な運命を背負って――
――そんな時、私はふと思ってしまった。
『ゼロラさんの記憶が戻らなければいいのに』と。
もしゼロラさんの記憶が戻ってしまったら、私達の元を離れて行ってしまうかもしれない。
そんな浅ましい考えが私の頭をよぎってしまった。
「……この件についてはボク達が干渉することではないだろう。ゼロラ殿のことはゼロラ殿自身が決めることだ。彼に記憶が戻ろうが、魔力が宿ろうが、ボク達は"今の"ゼロラ殿だからこそ慕っている。この先にどんな変化が起ころうと、ボク達はゼロラ殿の意志を尊重するべきだ」
そんな私の考えを読み取ったのか、リョウさんは黙っている私に自らの主張を述べてきた。
あくまで自らの意志ではなく、ゼロラさんの意思を尊重する主張……。
――この人には……あらゆる面で勝てないのかもしれないなー……。
「……ん? ゼロラさんって魔力ゼロなんですよね?」
「そうだよ。最近のゼロラ殿の魔力を正確には測ってないけど、そんなすぐに魔力なんて身につくものじゃないからね」
私は話をしていて疑問に思ったことをふと口にした。
「でも……私、見たんです。ゼロラさんが体から<灰色のオーラ>を出しているところを……」
「<灰色のオーラ>……!?」
ゼロラさんが目覚めた日の翌日の早朝、あの人が近くの林で体を動かしていた時に見た<灰色のオーラ>。
あの時はゼロラさんが上半身裸だったので思わず目を逸らしてしまい、次見た時には消えていたが、あのオーラは確かにゼロラさんから溢れ出ているものだった。
あれは魔力によるものだったのか? 気になった私はリョウさんに状況を伝えながら尋ねてみた。
「ゼロラ殿が上着を脱いで鍛錬に集中していた時か……。汗や蒸気とかじゃないかい?」
「いえ。そんなものではなかったです」
「じゃあ……マカロンがゼロラ殿の半裸姿に興奮して見た、目の錯覚とか?」
「そ、そんなのじゃありません! ……多分」
た、確かにあの時はゼロラさんの半裸姿に思わず目を覆ってしまいましたが、そんなのではないはずです!
……ないはずです。
「<灰色のオーラ>――まさかジフ兄やシシ兄と同じ――いや、でも――だが可能性は……」
そんな私の動揺を他所に、リョウさんは一人でブツブツ考え込んでいます。
「……マカロン。ゼロラ殿が帰ってきたら確認してみたい。ボクもその<灰色のオーラ>について興味がある」
リョウさんは何か分かったような表情で私に話してきました。
私も気になります。ゼロラさんから溢れ出ていた<灰色のオーラ>が何だったのか……。
ゼロラさんがどんな人なのか、その奥底にどんな力が眠っているのか。
リョウさんと同じく、私の興味も募ります。
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