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第20章 獅子は吠え、虎は猛る

第274話 奮戦・ルクガイア暗部構成員

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「ハァアアア!!」
「…………!」

 自分は【虎殺しの暴虎】の首筋目がけて回し蹴りを放ちました!

 ドゴム――

「…………」
「え!? な、なんですかこの感覚は!?」

 自分の蹴りは確かに相手の首筋に直撃しました。
 ――ですが、まるで効いている感覚がありません。
 まるで鉄の塊でも蹴ったような――

 ブォオオン!

 今度は相手のパンチがこちらを襲ってきました!
 自分はそのまま体を回転させて、パンチを捌くように回避します!

 バチン――

「ハァ、ハァ! な、なんとか捌けましたか……!」
「…………」

 相手のパンチをキックで捌きながら、自分は一度距離を置きます。
 捌けはしたものの、パンチを振りぬくスピードはかなりのものでした。

 【龍殺しの狂龍】ジフウさんと並び称される【虎殺しの暴虎】――
 今のやり取りだけでもこの人が只者ではないことが分かります。
 今の自分で手に負える相手ではなさそうです。

 ――それでも、逃がすわけにはいきません!
 ミリアさんを襲い、ギャングレオ盗賊団を暴走させた人の手にあるこの人を!

「テヤァアア!!」

 自分は猛攻を続けます!
 パンチとキックのラッシュを雨のように浴びせて行きます!
 相手もパンチで応戦してきますが、拳を振りぬくスピードこそ速いものの、弱点はあります!
 振りぬいた後に拳を返す時間に、わずかですが間があります!
 こちらの一撃一撃の威力は相手に大きなダメージを与えられませんが、確実にダメージは重なっているはずです!

 このまま押し通せば――



 ――ガシィイ!

「あぐぅう!?」
「…………」

 相手は突如パンチをやめて、こちらの首筋を掴み上げてきました……!
 息が苦しいです……!
 片手で宙に持ち上げられたまま、自分の首をどんどんと締め上げてきます……!
 い、意識が――





「ラルフル!!!」
「ッ!!?」

 ミリアさんの呼び声で自分の体に力が戻りました!
 首を掴んでいる腕を掴み、大きく自らの体に反動をつけて相手の顔面を蹴り上げます――



 バシンッ――





「――え……?」
「な、なんで……?」

 自分が蹴り上げたことで、相手のフードがめくれ上がりました――
 その下にあった顔に、自分もミリアさんも驚きました――

「ッ!!??」

 フードがめくれて顔を見られた相手は、慌ててフードを被りなおします。
 顔が見えたのは一瞬でしたが、それでもこの人が"誰なのか"は分かってしまいました。

「――ッ!!!」

 顔を見られたことに激昂したのか、相手は突如乱暴にこちらの首を掴んでいる腕を振り回してきました。

 ドシンッ! ドガンッ! バキャンッ!

「あ、あぐぅ……!?」

 力任せに何度もこちらの体を地面に叩きつけてきます――
 そのたびに自分の体は地面を跳ね、凄まじい衝撃が走ります――

「ラ、ラルフル!? しっかりしてぇええ!!」

 ミリアさんも必死に自分へと呼びかけます。

 ですが――これほどの力の差はどうすることも――





 ――バキュゥウン!!

「ッ!?」
「ガハッ!? ゲホッ、ゲホッ……!?」

 そんな自分を掴んでいた腕に、突如風の弾丸がぶつけられました。
 そのおかげで相手の手は解かれ、自分は拘束から逃れられました。

「ラルフル君! しっかりするのです!!」
「あの漆黒のローブ……。まさか、【虎殺しの暴虎】か!?」

 風の弾丸を放ったのはガルペラ侯爵のようです。
 その近くにはロギウス殿下とローゼスさんも一緒にいます。

「…………!!」

 駆け付けた三人の姿を見て不利と悟ったのか、【虎殺しの暴虎】と呼ばれる黒ローブの人は逃げ出していきました。
 どうやら助かったようです――

「ラルフル、大丈夫!? しっかりして!?」
「ええ……大丈夫です。ありがとうございます、ミリアさん……」

 ミリアさんはすぐに自分に駆け寄って回復魔法をかけてくれました。
 何度も地面に叩きつけられましたが、これまで鍛えてきたおかげか思ったよりは大丈夫でした。

「ラルフル、ミリア様。先程逃げた人物は【虎殺しの暴虎】じゃないか?」
「はい……。そんなことを言ってました……」

 ロギウス殿下は自分達に尋ねてきました。
 そして今のこの状況も説明してくれました――

 ギャングレオ盗賊団の暴走。
 それらは<ナイトメアハザード>によって引き起こされたと思われること。
 その計画の首謀者は王国騎士団軍師のジャコウであること。

 そして――自分達の仲間の中に、"内通者"という裏切り者が紛れ込んでいること――
 その内通者は"ギャングレオ盗賊団の人間"である可能性が高いこと――

「やっぱり【虎殺しの暴虎】という人も関わっているのですね……」
「ガルペラ様。そのことも気になりますが、今は安全な場所に避難しましょう……」

 ガルペラ侯爵とローゼスさんは【虎殺しの暴虎】について考えています。
 おそらくはその人こそが内通者なのでしょう。



 ただ、自分とミリアさんは見てしまいました――

 内通者――【虎殺しの暴虎】。
 それが一体誰なのかを……。
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