記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第23章 追憶の番人『ドク』

第333話 対決・元ルクガイア王国騎士団二番隊隊士『アサルト』③

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 ズシィィイイン……!!

 フレイムの巨体が地面へと落ち、相応の衝撃音があたりに響く。
 俺とシシバは空中から無事に着地し、再びフレイムの方を見る。

「……やったか?」
「あ~、ゼロラはん。そのセリフはあかんやつや」
「やってないってことスか? 流石に効いたと思うんスけど?」

 俺の言葉へシシバがツッコミを入れてきたが、サイバラも言う通り、フレイムのダメージは甚大なようだ。

「フ……フオオオ……!」

 その巨体と武装が祟ったのか、フレイムの装甲は所々剥がれ落ち、そこから蒸気が吹き出している。
 かなりの高さからの落下だ。シシバの<凶眼>で幻惑状態だったし、受け身もとれなかったのだろう。

「フオオオ!! オオオオ!!」

 それでもフレイムは諦めないようだ。
 もう一本の鉄筒に右手をかけ、最後の武装を取り出す――


 ガシャァアアン!!


 ――そしてその左腕に新たに取り付けられたのは、これまで見たことのない武器。
 四本の爪を持った、これまでの銃の類とは異なるデザイン――

「馬鹿な!? フロストの奴、"ドリルクロー"と"プラズマブラスター"まで完成させたのか!?」
「なんだそれは!? なんであの武器だけ二つも名称がついてるんだ!?」

 バクトが言う武器の名称に、俺は何故だか戦慄を覚えた。

「俺が知る限り、フロストが開発していた武器の中でも最強のものだ! まだ未完成だったはずだが、あれこそが……フレイムの切り札と見て間違いない!」

 バクトも俺と同じく戦慄を覚える、フレイムの"最終兵器"――
 フレイムは壊れた装甲の間から蒸気を吹き出しながらも、その左腕を掲げ――


 ギュィイイイン!!


 ――高速で回転させ始めた!

「な、なんやあれ!? ドリルか!? ヤカタがトンネル工事のために使っとった、ドリルと同じなんか!?」

 どうやらシシバはあの武器の動き自体には見覚えがあるらしい。
 "ドリル"と言ったか……。トンネルを掘るための道具と同じなのか?

「おい、サイバラ。お前、あの武器の動きを止められるか?」
「無理に決まってるッスよ!? 以前ゼロラさんにオレが使った、チェーンソーよりヤバイッスよ!?」

 そうか、チェーンソーよりもヤバいのか。流石にそれはサイバラの馬鹿力と頑丈さをもってしても無理そうだな。
 だが見たところ、あの武器は近接戦用。こちらから近づかなければ、被害はない――



「気を付けろ! あの武器はただ回転させてるだけじゃない! ロケットランチャー以上の一撃を放ってくるぞ!」

 ――そんな俺の考察は、バクトの声でかき消された。
 そして当のフレイム本人は、その回転させた左腕をこちらに向ける――



 ズギャァアアン!!



 ――そして放たれたのは……巨大な電気の弾丸!?
 なんだそれは!? とにかく避けないとマズい!

「サイバラ! お前も避けるんや!」
「分かって――いてっ!? ちょ!? 何も蹴らなくても――」

 シシバも避けるのが苦手なサイバラを蹴り飛ばし、強引に電気の弾丸を避けさせる!
 俺達三人はなんとかその攻撃を回避したが――



 ――ギュオォン……!



「……なあ、シシバ、サイバラ。さっきの電気の弾丸が通た跡に、何が見える?」
「……なんもあらへんな」
「……あったはずの草木までなくなってるッスね」

 フレイムが左腕から放った電気の弾丸――
 それが通った跡には何も残っていなかった。



 ――本来そこにあったものも含めて。

「今のは<プラズマ弾>だな。フレイム自身が持つ熱エネルギーを使い、左腕に仕込まれたモーターを高速で回転。それによって生じた電気エネルギーで電気の弾丸を形成し、あらゆる物質を飲み込む――」
「説明はいい! とにかくとんでもなくヤバいことだけは分かった!」

 バクトが驚愕で固まる俺達三人に説明をしてくれたが、正直そんなことはどうでもよかった。
 もう今の攻撃はちゃちな魔法とかこれまでの銃とも全く違う――

 ――一番近いものを言うならば、全てを飲み込む<魔王の闇>だ。

 今のフレイムの戦闘能力は、おそらく【伝説の魔王】とも互角……!

「フオオオオ!! オオオオオ!!!」

 バキンッ! バキンッ!

 さらにフレイムは全身から吹き出す蒸気の出力を上げ、剥がれかけていた装甲を自ら落とす。
 どうやら下手な守りは捨てて、完全に機動力重視の戦い方に切り替えるようだ……!

「装甲がなくなった以上、フレイムの防御力はかなり落ちたが――」
「そもそも、攻撃する手立てがあらへんな……」

 俺とシシバはフレイムという【王国最強】の力を前に苦悩する――





「仕方ないッスね。一か八かになるッスが、オレがどうにかしてみせるッス」
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