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第26章 追憶の番人『斎』
第387話 理刀斎の真実
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「ああ。お前さんの言う通りだよ……ゼロラ」
イトーさんは寂しげな声で言葉を紡いでくれた。
「もっとも、父親と言っても血の繋がりはない。あの子は――ユメは孤児だったんだ。本人ですらどこで生まれたのかも分からない……。そんなユメを、俺はたまたま拾ったんだ」
「そうだったのか……」
ユメとイトーさんの血縁関係までは、俺も知らされていなかった。
正直、そんなことは関係ないように思えた。
ユメは自らの父のことを――イトーさんのことを語る時、とても楽しそうだった。
「イトーさん。ユメはあんたのことを本当の父親だと思ってた。血の繋がりなんて関係ない」
「分かってるよ。あの子のことは、お前さんよりも分かってるつもりだ。……あの子は誰にだって優しかったし、関係に壁を作るような子じゃなかったよ……本当にいい子だ……」
イトーさんは顔を押さえ、涙をこらえるように話してくれる。
イトーさんが言いたいことは俺にも分かる。
ユメはどんな種族に対しても、分け隔てのない心の持ち主だった。
【伝説の魔王】と呼ばれ恐れられていた俺にも、明るく接してきてくれた。
"人と魔の共存"――
そんな無謀とも言える理想を本気で叶えようとし、叶えられるだけの器量の持ち主だった。
「イトーさん、ユメはなんで勇者に?」
「ある日、神聖国からの遣いだって人間が、当時俺とユメの住んでた黒陽帝国までやって来てな。ユメに『勇者の資格がある』とか言って、連れていかれたんだよ」
一度顔を上げて、イトーさんは寂しそうに語り始めてくれた。
「止めなかったのか?」
「止めようとも思ったさ。【伝説の魔王】との戦いなんて、危険しか伴わない。それでも、ユメ自身が勇者になることを臨んだ。それに……俺もあの子なら、"世界を変えられる"と思った」
やはりイトーさんにとって、ユメは大事な娘だったようだ。
それはイトーさんの懐かしむような声からも分かる。
「何より、ユメは強い。俺が知ってる<理刀流>の技を、あの子はどんどんとものにしていった。そこに<勇者の光>も合わされば、【伝説の魔王】だって倒せるはずだった……」
「だが、そうはならなかった……」
「ああ。まさかユメの奴、倒すべき【伝説の魔王】と結婚しちまうなんてよぉ……。しかも、その【伝説の魔王】ってのが、お前さんだったんだぜ? ゼロラ」
イトーさんはどこか自嘲気味に笑いながら、俺に問いかけるように話してきた。
「笑っちまうよなぁ……。俺にとって"一番大事な宝"を――ユメを奪った男が、こうして今目の前にいるなんてよ。へへっ……」
イトーさんにとって俺は、『たまたま出会って助けた今の友人』以上に、『父親の了承もなく、娘と結婚した男』だった。
俺にとっての義父、ミライにとっての祖父――
――それがイトーさんの正体。
「このことはロギウスにも言ってなかったのか?」
「ロギウスどころか、バクトやフロストにも言ってない。下手に俺の正体をバラしたくなかったからな。ロギウスの頼みを聞いてルクガイア王国に来たのは確かだが、とにかく俺は……ユメが旅した場所にいたかったんだ……」
イトーさんを含む"共通の目的"を持った四人が守る、"追憶の領域"――
それが何なのかは分からないが、一つだけ分かることがある。
この人はただ、愛した娘の傍にいたかっただけなんだ。
そしてそんなイトーさんの大事な娘を、俺は奪ってしまった。
「イトーさん……すまない。俺はあんたにどうやって謝ればいいのか――」
「謝る必要なんかねえさ。ユメが望んだ結婚ならば、俺は口出しするつもりはない。ただ……そのだな……」
イトーさんは急に言いづらそうになってしまった。
それはきっと、イトーさんが俺に一番聞きたかったことなんだろう。
だから、俺は先に自ら述べた――
「イトーさん。俺はユメと過ごせて幸せだった。ユメもきっと同じ気持ちだ。それに――今は娘だっている。……あんたの孫だ」
その言葉を聞いて、イトーさんは再び顔を押さえて俯いた。
「そうか……。ユメは、幸せだったんだな……! よかった……本当に……! ううぅ……!」
イトーさんは、言葉にならない感情を表す。
顔を押さえた手からあふれる涙。それは止めどなくあふれ続ける。
思えば俺が【伝説の魔王】として死に、人間としてこの人の元へやってこれたのは、ユメが導いてくれたからかもしれない。
最初にこの人に出会えたから、俺は今日まで行き、ミライとも再会できた。
記憶を失い、素性も分からない俺を迎え入れてくれた、ユメの父親――イトーさん。
そう考えると、俺も涙が出そうになる。
ありがとうな、ユメ――
「イトーさん。ミライに――あんたの孫に会ってはくれないか?」
そしてミライが落ち着いた今、この人には是非とも会ってほしい。
ユメの忘れ形見に、俺とユメの愛娘に――
「ああ、もちろん会いに行くさ。お前さんが『嫌だ』って言っても、無理矢理会いに行くからな」
イトーさんは寂しげな声で言葉を紡いでくれた。
「もっとも、父親と言っても血の繋がりはない。あの子は――ユメは孤児だったんだ。本人ですらどこで生まれたのかも分からない……。そんなユメを、俺はたまたま拾ったんだ」
「そうだったのか……」
ユメとイトーさんの血縁関係までは、俺も知らされていなかった。
正直、そんなことは関係ないように思えた。
ユメは自らの父のことを――イトーさんのことを語る時、とても楽しそうだった。
「イトーさん。ユメはあんたのことを本当の父親だと思ってた。血の繋がりなんて関係ない」
「分かってるよ。あの子のことは、お前さんよりも分かってるつもりだ。……あの子は誰にだって優しかったし、関係に壁を作るような子じゃなかったよ……本当にいい子だ……」
イトーさんは顔を押さえ、涙をこらえるように話してくれる。
イトーさんが言いたいことは俺にも分かる。
ユメはどんな種族に対しても、分け隔てのない心の持ち主だった。
【伝説の魔王】と呼ばれ恐れられていた俺にも、明るく接してきてくれた。
"人と魔の共存"――
そんな無謀とも言える理想を本気で叶えようとし、叶えられるだけの器量の持ち主だった。
「イトーさん、ユメはなんで勇者に?」
「ある日、神聖国からの遣いだって人間が、当時俺とユメの住んでた黒陽帝国までやって来てな。ユメに『勇者の資格がある』とか言って、連れていかれたんだよ」
一度顔を上げて、イトーさんは寂しそうに語り始めてくれた。
「止めなかったのか?」
「止めようとも思ったさ。【伝説の魔王】との戦いなんて、危険しか伴わない。それでも、ユメ自身が勇者になることを臨んだ。それに……俺もあの子なら、"世界を変えられる"と思った」
やはりイトーさんにとって、ユメは大事な娘だったようだ。
それはイトーさんの懐かしむような声からも分かる。
「何より、ユメは強い。俺が知ってる<理刀流>の技を、あの子はどんどんとものにしていった。そこに<勇者の光>も合わされば、【伝説の魔王】だって倒せるはずだった……」
「だが、そうはならなかった……」
「ああ。まさかユメの奴、倒すべき【伝説の魔王】と結婚しちまうなんてよぉ……。しかも、その【伝説の魔王】ってのが、お前さんだったんだぜ? ゼロラ」
イトーさんはどこか自嘲気味に笑いながら、俺に問いかけるように話してきた。
「笑っちまうよなぁ……。俺にとって"一番大事な宝"を――ユメを奪った男が、こうして今目の前にいるなんてよ。へへっ……」
イトーさんにとって俺は、『たまたま出会って助けた今の友人』以上に、『父親の了承もなく、娘と結婚した男』だった。
俺にとっての義父、ミライにとっての祖父――
――それがイトーさんの正体。
「このことはロギウスにも言ってなかったのか?」
「ロギウスどころか、バクトやフロストにも言ってない。下手に俺の正体をバラしたくなかったからな。ロギウスの頼みを聞いてルクガイア王国に来たのは確かだが、とにかく俺は……ユメが旅した場所にいたかったんだ……」
イトーさんを含む"共通の目的"を持った四人が守る、"追憶の領域"――
それが何なのかは分からないが、一つだけ分かることがある。
この人はただ、愛した娘の傍にいたかっただけなんだ。
そしてそんなイトーさんの大事な娘を、俺は奪ってしまった。
「イトーさん……すまない。俺はあんたにどうやって謝ればいいのか――」
「謝る必要なんかねえさ。ユメが望んだ結婚ならば、俺は口出しするつもりはない。ただ……そのだな……」
イトーさんは急に言いづらそうになってしまった。
それはきっと、イトーさんが俺に一番聞きたかったことなんだろう。
だから、俺は先に自ら述べた――
「イトーさん。俺はユメと過ごせて幸せだった。ユメもきっと同じ気持ちだ。それに――今は娘だっている。……あんたの孫だ」
その言葉を聞いて、イトーさんは再び顔を押さえて俯いた。
「そうか……。ユメは、幸せだったんだな……! よかった……本当に……! ううぅ……!」
イトーさんは、言葉にならない感情を表す。
顔を押さえた手からあふれる涙。それは止めどなくあふれ続ける。
思えば俺が【伝説の魔王】として死に、人間としてこの人の元へやってこれたのは、ユメが導いてくれたからかもしれない。
最初にこの人に出会えたから、俺は今日まで行き、ミライとも再会できた。
記憶を失い、素性も分からない俺を迎え入れてくれた、ユメの父親――イトーさん。
そう考えると、俺も涙が出そうになる。
ありがとうな、ユメ――
「イトーさん。ミライに――あんたの孫に会ってはくれないか?」
そしてミライが落ち着いた今、この人には是非とも会ってほしい。
ユメの忘れ形見に、俺とユメの愛娘に――
「ああ、もちろん会いに行くさ。お前さんが『嫌だ』って言っても、無理矢理会いに行くからな」
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