記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第28章 勇者が誘う、最後の舞台

第423話 栄光への執着

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「おい、アホバクト。お前、そのカードは反則じゃねーか?」
「黙れ、バカフロスト。俺のローカルルールなら問題ない」

 現在、監獄となっている魔幻塔。
 後々取り壊しが予定されているこの場所で、二人の男がカードゲームにいそしんでいた。
 一人は元侯爵であるバクト。
 もう一人は魔幻塔の管理者代行であり、囚人でもあるフロスト。

 旧友であり、喧嘩友達でもあるこの二人。
 フロストが魔幻塔から離れられないため、こうしてバクトの方からおもむいて、空いた時間を潰していた。

「ほれ、"階段"だ~。俺の勝ちだぜ~。クーカカカ!」
「おい! その"階段"は反則だろ! カードの柄が合ってないぞ!」
「俺のローカルルールならありだぜ~」

 互いにローカルルールの違いで揉めてはいるが、なんだかんだでカードゲームは進んでいた。
 そもそもこのカードゲーム。本来ならば大人数でやるものである。
 だが、ここにいるのは二人だけ。
 もう何ゲーム目か分からない勝負を終え、流石に飽きてきたためか、二人は手元のカードを机に投げ捨てた。

「か~、シシバの奴から頼まれた仕事終わったけどよ~、終わったら終わったで、暇だな~」
「あの馬鹿が……。俺とこのバカ学者に頼んでまで、左目を作らせやがって……」

 そして始まるのは二人の愚痴。
 少し前にシシバに頼まれていた"機械の左目"を共同で作り、一仕事終えた後での空き時間。
 バクトも特に予定がなかったため、こうして魔幻塔から出られないフロストの相手をしていた。

「つーかよ~。さっさとこの魔幻塔を解体しろよな~。そーすれば、俺もお役御免なのによ~」
「仕方ないだろ。そこで喚いてる罪人二人の処分を、今王宮でも打診中だ。こいつらは悪徳貴族の象徴。慎重に検討はしているが、このクズ二人さえ崩せれば、貴族制度は完全に崩壊する」

 フロストとバクトは話をしながら、話題の矛先となった二人へと目を向ける。
 現在、魔幻塔が監獄として残っている、最大の理由――
 それが二人の視線の先にいる、二人の存在であった。



「おい! わしを早くここから出さぬか! 公爵にこのような扱いをして、ただで済むと思っているのか!?」
「わしも王国騎士団の軍師じゃぞ!? 貴様ら、それを分かっとるのか!?」
「だ~! うるせーな~! てめーらの身分なんて、なーんの意味もねーんだよ~!」

 ボーネス公爵と王国騎士団軍師ジャコウ。
 鉄格子を掴みながら、必死に外にいるフロストとバクトへと訴えかける。

 牢の中にいる二人には、外の現状が理解できていない。
 ただそれは、"伝わっていない"のではなく、"理解を拒絶した"状態。

「何度も言ってるが、貴様らの身分などもはや意味をなさない。無駄に地位ばかり高かったせいで処分に時間がかかっているが、大人しくそこで破滅の機会を待ってろ」
「内政ってのは面倒だな~。こんなクズどものために、色々手続きしなきゃいけねーなんてよ~」

 バクトもフロストも、この二人の処分など早く決めてしまいたい。
 だが、これまでのルクガイア王国の膿の象徴でもあるこの二人を処分するには時間を要していた。

 連なって悪事を働いて者達への対処――
 被害を受けた関係者との連携――
 崩すのに時間はかかっていたが、慎重に事を進めた先に、"改革の完全成立"が待っている。

 そのためにも、バクトとフロストは各々の役目を全うしていた。





「バ……バクト様……」
「お、お逃げください……」
「どうした!? 貴様らは入り口で待機してたはずだろ!?」

 そんな場の安定を破るように、二人の男が駆け込んできた。
 バクトの護衛を務める、ギャングレオ盗賊団精鋭護衛衆――
 二人はボロボロになりながら、必死にバクトへ事態の報告にやってきた。

「おいおい!? この二人って、結構強いんだろ!? それがどーして、こんなことに――」
「どれだけ強くても、"勇者"には敵わない」

 フロストも事態の異常さをすぐに感知するが、その原因は後ろから現れた男の声で理解できた。

 これまでレーコ公爵の後ろ盾でその地位を確立していた、当代勇者――

「レイキース!? 貴様! これは一体、何の真似だ!?」
「『何の真似』? それはこちらのセリフだ。よくも勇者の――僕の立場を踏みにじるような真似をしてくれたものだ」

 レイキースは怒りを露にし、バクトとフロストを睨む。
 それは勇者である自らの立場を危うくさせた、改革への怒り――
 貴族制度が撤廃されていくことで、後ろ盾を失ったことへの怒り――

「わたくし達には大義があります。"勇者という正義"を陥れることは、ことわりに反する大罪ですわ」
「賢者リフィーか~……。てめーらだけの都合で、ここに押し掛けてきたってーわけか……」

 レイキースの後ろから、リフィーも顔をのぞかせる。
 リフィーもレイキースと同じく、この改革を面白く思っていなかった。
 ルクガイア王国全体が改革を受け入れる中、勇者パーティーは完全なる部外者扱い。
 貴族の権力に頼ることで確立してきた地位も名誉も、意味をなさないものへとなっていた――



「……おい、フロスト」
「……分かってる。<マジックジャマー>!!」

 バクトはフロストに目線で合図を送る。
 その意味を即座に理解したフロストは、懐から<マジックジャマー>を投げつける。


 ジジジッ―― ジジジィイ――


「これは……魔法を無効化したのか?」
「あー! そーだよ! てめーらの目的は理解したぜ~!」
「ボーネスとジャコウを助け出し、この国に反乱でも起こす気だろう!」

 レイキースは<マジックジャマー>の効果に一定の驚きを示すが、冷静さを保っている。
 フロストとバクトもまずは魔法を無効化したが、その目に油断は一切ない。

 バクトは刀と拳銃を取り出して構える。
 フロストも四本の機械のアームを装着する。

 二人が警戒しているのは、レイキースの剣技。
 魔法を封じたとはいえ、二人で勝てるかも分からない――





「勇者レイキースよ。ここは小生が相手をしよう」

 レイキースを迎え撃とうとするバクトとフロストの前に、押しのけるように一人の男が前に出た。
 全身を赤いローブで覆い、右手には宝玉のついた杖を持った男――

「"紅の賢者"……。いいだろう。だが、魔法は使えないぞ?」
「結構結構。小生にとっては、関係のないこと……だ」

 それは自らを"紅の賢者"と名乗る、元魔王軍四天王の一人――
 【欲望の劫火】――ダンジェロ。

 かつての魔王の腹心が、勇者であるレイキースと行動を共にしていた。
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