空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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魔女と家族の新たな日常編

ep240 だから! もうちょっとヒーローとして考えてよ!?

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 空港で洗居さんとフェリアさんを見送り、同時に目にしたヒーロー制定法のニュースから数日が経った。
 アタシは洗居さんからもらった仕事を吟味しながら、その裏で空色の魔女というヒーローを続けている。
 ヒーローに関する法案なんてできちゃったけど、そこを気にして困ってる人を見過ごすわけにはいかないからね。

 とまあそんなわけで、今日も銀行強盗の現場に居合わせたもんだから、いつものごとく動いてはいるんだけど――



「銀行強盗どもめ! おとなしく観念しろ!」
「俺らは政府公認のヒーローだぞ! 抵抗しても無駄だ!」
「私達に勝てると思わないことね!」

「……早速とばかりに、政府公認の皆様まで出て来ちゃったか」



 ――アタシ以外のヒーローもお出まししていた。
 自ら『政府公認』という肩書を声高らかに掲げ、外で隠れて様子を伺っていたアタシの存在など知ることもなく、真正面から銀行強盗の一団に挑んでいる。
 まあ、銀行強盗に挑む心意気は立派だと思うよ? 『政府公認』って肩書だって、ついつい掲げたくなる気持ちは分かる。

 ――だけどさ、そんなタイミングも見ずに正面突破なんて、アタシから見ても無計画すぎるのよね。

「なんだこいつらは!? 空色の魔女じゃないのか!?」
「だったら警戒なんざいらねえ! 野郎ども! この三人を蜂の巣にしてやれぇえ!」

 案の定と言うべきか、銀行強盗の一団は持っていたライフルの銃口を三人組に向け、一斉に引き金に指をかける。
 てか、この街の銀行強盗って、デフォルトでライフル持ってんのよね。大凍亜連合の爪痕は今も深いか。
 普通なら危険だけど、新人三人組もそこは対応できる。

「バリアを頼む!」
「分かりました! バリア展開!」

 勇者仮面の声を聴いて、僧侶仮面が前へ出てバリアを展開する。あれはアタシの電磁フィールドに近い性質みたいだから、鉛弾なら防御可能だ。
 そのバリアのおかげで新人三人組に被害は及ばないけど――

「ひ、ひいぃ!? じゅ、銃弾がこっちにも!?」
「た、助けてくれぇえ!?」

「ほーら、言わんこっちゃない! 周囲への被害を考えなっての!」

 ――人質にされていた一般人にまで、流れ弾の被害が及んでしまう。
 こういうことがあるから、銃相手に無闇な突撃は悪手なのよ。アタシだって、普段からそこは気を使ってるのよ?

 しかし、なってしまったものは仕方がない。
 アタシも銀行の中へ飛び込み、流れ弾から一般人を守るように前方で仁王立ちし、電磁フィールドで守りに入る。

「あ、あなたは空色の魔女! た、助かりました!」
「まあ、これがアタシの役目だからね。無事で何よりってもんだ」

 いくらか流れ弾を止めることになったけど、幸いにして一般人に被害はない。まずはそれが何よりだ。
 銀行強盗の一団についても、新人三人組が無事に撃退してくれたようだ。
 今回は以前と違い、やり過ぎたということもない。あくまで犯人達をノックアウトする程度に留めてくれている。

 ――それはいいんだけど、これはアタシも文句を言わざるをえない。

「あー……君達? ちょーっと、アタシから言いたいことがあるんだけど?」
「ん? 空色の魔女か? 残念だが、君の出番はなかったようだ。銀行強盗は僕達、政府公認のヒーローが撃退した」
「別にアタシの出番とかどうでもいいよ。そんなことより、あんた達は何を考えていきなり突入なんてしたわけ? お客さんや従業員の安全は考えなかったの?」
「無闇に突入を遅らせれば、それだけ被害が大きくなる可能性が高かった。だから俺らは即行勝負を仕掛けるため、危険を顧みずに飛び込んだんだ」
「……そーですかー」

 ああ言えばこう言うとはこのことか。勇者仮面も戦士仮面も、アタシの文句を適当にあしらって来る。
 僧侶仮面も体こそこちらに向けているが、完全にそっぽを向いて知らん顔。なんか腹立つ。無性に腹立つ。
 アタシとしては守るべき対象をぞんざいに扱われ、全部犯人撃破の口実へと繋げられてしまう。
 その口実にしたって、本当にそうなのか怪しいのよね。『危険を顧みず』なんて言ってるけど、こいつらにとってはそこまで危険じゃないよね?
 どっちかって言うと『派手に目立つ登場をしたかった』とか、そんな印象を受けてしまう。

 ――ダメだ。いくら政府公認と言っても、この三人組とは分かりあえそうにない。

「いいかい? 今後はもっと、周囲の人々に危害が及ばないように動いておくんなよ? 今回はアタシが居合わせたからよかったものを、こんなことを続けていれば――」
「おい! さっきからしつこいぞ! 僕達は政府公認のヒーローなんだ! それに比べて、君は言うなればモグリの野良ヒーローだろう!? 偉そうに先輩面をするんじゃない!」

 ともかくアタシは色々と注意しないと気が済まない。別にアタシのことをぞんざいに扱うのは構わないけど、人々を危険に巻き込むヒーローなんて、アタシのポリシーが許さない。
 そう思ってグチグチ説教を始めちゃったけど、リーダーの勇者仮面はそんなアタシの先輩面も気に食わないようだ。
 持っていた剣を両手で握りしめ、アタシ目がけて振りかざしてくる。

 いくら気に食わないからって、いきなりの暴力はよろしくない。
 アタシも腹が立って仕方ないし、ここは一つ格の違いをお見せしましょうか。


 ブゥゥウン!! ――ギン!!


「ぐっ!? 剣を止められた!?」
「あ、あれは私のバリアと同じもの!? まさかパクったの!?」
「生憎とこれはアタシのオリジナルだよ。まあ、特許は取ってないけどさ」

 勇者仮面が振り下ろした剣を、アタシは腕だけに部分展開した電磁フィールドで容易く防御。こういう防御術にも慣れてきたものだ。
 それなりのパワーはあるみたいだけど、ショーちゃんみたいな高周波ブレードでもなんでもない。アタシからしてみれば、刃があってもただの鉄の棒と同じだ。

「僕達のように政府機関の教育を受けたわけでもないのにその力……。君は一体、何者なんだ?」
「『ブーメラン』って言葉知ってる? アタシにとっちゃ、後発で出てきたあんた達の方が不思議なんだけど?」
「……どうにも、君とは分かりあえる気がしないな。今後のヒーロー活動は僕に任せて、君はさっさと引退してくれたまえ」
「分かりあう気云々については、アタシも同じように感じてたよ。こっちとしては同業者同士仲良くしたかったんだけどね。まあ、あんた達の言い分については無視させてもらうよ」

 気が付けばアタシは勇者仮面と睨み合い、一触即発な状態になっちゃった。同じヒーローとはいえ、向こうはアタシを商売敵みたいに感じてるみたいだね。
 別に人助けに理由がいるとは思えないし、協力できれば一番なのに。もちろん、アタシも引退する気はない。

 ――もういいや。なんだか気疲れしてきちゃった。
 もうじき警察も到着するだろうし、助かった人々にこれ以上の醜態も晒したくない。
 持っていたデバイスロッドを宙に浮かせ、腰かけながらアタシも帰り支度を始める。

「そいじゃ、アタシはこれにて失礼するよ。銀行にいたみんなも、変なところを見せちゃってごめんねー」
「全然大丈夫さ! 俺達はあんたの味方だ!」
「この街のヒーローと言えば、空色の魔女だからな!」
「ニシシ~。そう言ってもらえると、アタシも元気が出るってもんだ。そいじゃ、アディオース!」

 ヒーロー同士の喧嘩なんて見苦しいことこの上なかったけど、この街の人達にも空色の魔女アタシの存在は根強いようだ。
 こうやって応援の言葉をもらえるだけでも、勇気をもらえるってもんよ。



 ――それにしても、政府公認のヒーローか。
 今はまだこうして応援してくれる人もいるけど、いずれは本当にアタシにとって代わっちゃうのかね?
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