空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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魔女と家族の新たな日常編

ep241 タケゾー! 慰めて!

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「――てなことがあったのよ。アタシも流石にお冠って奴さ」
「当たり前のように銀行強盗の相手をしてることにもツッコミたいが、隼も複雑な心境なのは分かるよ。お疲れさん」

 銀行強盗と新人三人組との一件を終えたアタシは我が家へと帰宅。夕食を食べた後、旦那のタケゾーに今日の一件を愚痴っていた。
 いや、本当に頭に来たわけよ。あの三人、強盗に襲われた人達のことを何だと思ってたのさ?
 攻めることは守るための手段だと思わない? アタシなりのヒーロー哲学だけど。

 ――今度この辺りのことを論文にでも書いて、空色の魔女名義で学会にでも発表しようかしら? どこの学会が取り上げるのか知らないけど。



「……それで? どうして隼は俺の胸に背中を預けて、煎餅を摘まんでるんだ?」
「お煎餅とタケゾー成分を同時補給することで、このストレスを解消してる」
「意味が分からない……」



 ちょいと頭の中で論文の下書きを作っているアタシなのだが、体の方は現在、タケゾーの胸元に預けている。これぞ、アタシ専用タケゾーリクライニングソファー。
 胸元にはお煎餅の袋を持ち、中身をボリボリおつまみ中。昔から変わらない醤油味の海苔煎餅って、ついつい摘まんじゃうよね。
 こうやって何気なく日常のまったりを味わうことで、アタシの中で行き場を失ったヒーローとしての苛立ちも抑えられる。

「あっ。タケゾーもお煎餅食べる?」
「俺の頬に押し付けてくるな。隼からは俺の顔が見えてないだろ? ……まあ、食べるけど」

 タケゾーもなんだかんだでアタシのリラックスタイムに付き合ってくれている。本当に付き合いのいい旦那様だ。
 そんなわけで、アタシはタケゾーの膝の上で胸を背もたれにしながら、一緒に煎餅をボリボリ食べる。
 実に平和な光景。実に平穏な夫婦水入らず。やっぱ、こうやってる時が一番幸せだよね。

「隼さん、武蔵さん。二人だけでズルい。ボクも一緒にする」
「おー、ごめんね、ショーちゃん。だったら、アタシの膝の上に乗りなよ」
「なんだか、どんどんと俺への負荷が大きくなるな。まあ、いいけどさ」

 これはいけない。アタシとしたことが、ショーちゃんをこの人間ソファーに招待していなかった。
 ここは夫婦だけでなく、息子であるショーちゃんも仲間に入れないとね。
 ショーちゃんはアタシの膝の上に乗り、これにて我らが一家のソファートレインの完成だ。アタシが持っていたお煎餅もみんなで分け合う。そしてみんなでボリボリ食べる。
 一人で抱えていたモヤモヤも、こうすれば解消速度は三倍だ。

 ――その辺の方程式、アタシでも分かんないけど。

「……ん? ショーちゃん、何か持ってるの?」
「さっき、郵便箱に入ってた。二通のお手紙で、それぞれ隼さんと武蔵さん宛て」
「そういうものは先に渡して欲しかったもんだねぇ。でもまあ、取って来てくれてありがとね。ちょいと確認させてもらうよ」

 アタシの膝の上に乗っかったショーちゃんなのだが、よく見るとその手にはお煎餅以外に二通の手紙が握られていた。
 しかも、宛先はアタシとタケゾー。なんだかどちらの手紙も同じような型式に見えるし、差出人も同じように見えるけど誰からだろう?

「……おぉ!? これって、中学の同窓会案内じゃんか!?」
「成程。それで俺と隼宛てにそれぞれ同じものが届いたのか。……それにしても、あれから随分と時間も経ってるからなぁ」

 ショーちゃんからそれぞれ手紙を受け取って確認すると、その内容はすぐに理解できた。
 それはアタシとタケゾーも通っていた中学から、同窓会についての案内。あの当時の同級生が企画して、場を設けてくれたようだ。
 思わず懐かしさがこみ上げてくる。当時のみんなは元気だろうか?

「日程的にも、俺の仕事は休みだな。隼も行けそうか?」
「洗居さんにもらった仕事についても、急を要するものはないからねぇ。これは久しぶりにみんなにも会いたいもんだ」

 手紙の内容を見る限り、アタシもタケゾーも出席できそうだ。
 約五年越しのみんなとの再会か。中々会う機会もなかったし、これはどうにも楽しみだ。

「せっかくだから、ちょいとおめかしした衣装でアタシも来場しようかねぇ」
「隼が着飾った姿なんか見たら、当時の奴らも驚くだろうな」
「え? なんでさ?」
「俺と付き合うまで、お洒落に無頓着だった人間が何を言うか」
「……デスヨネ~」

 思わずタケゾーとも話が弾み、ソファートレインのまま話を続けてしまう。
 この態勢、話し合うのにはあんまり向いてないんだけどね。アタシが顔を上にあげて、タケゾーの顔を覗き込む姿勢になっちゃう。
 お互いの顔が結構近い。なんだか、こっちも不思議と恥ずかしくなってくる。

 ――よく分かんないけど、妙に悔しい。タケゾーのくせに生意気だ。

「それにしても、よくタケゾーの住所もここだって分かったもんだね」
「そりゃあ、俺の方で転送届は出してたからな。実家に送られてくる俺宛ての郵便物は、全部こっちに転送されて――あっ」
「ん? どしたのさ、タケゾー?」

 そうやって話を弾ませながらも、少し気になったのがタケゾーにもこの同窓会案内が無事に届いた理由。
 中学の同級生とはアタシもタケゾーもちょいと疎遠だったし、タケゾーがこっちに引っ越してきたことなど主催者も知らないはずだ。
 まあ、その理由については転送届で解決だけどね。ただ、もう一つ気になることがタケゾーにはあるようで――



「俺と隼が結婚したこと……誰も知らないよな……?」
「あっ……」



 ――それは思いっきり、アタシにも関係ある話だった。
 思えば、タケゾーとの結婚自体がかなり急な展開(アタシが同棲と結婚を間違え、そのまま婚姻届を提出した)だった。てか、アタシとタケゾーが付き合ってたことさえ(むしろ交際期間が結婚期間よりも短いのだから)誰も知らない。

 ――これはちょっとだけマズいかもしれない。

「同窓会となると、当時女子からも隠れた人気者だったタケゾーと結婚したことで、アタシも色々言われそうだ……」
「それは隼も同じ話だぞ? お前だって、男子の間じゃマドンナ扱いだったからな……」
「え? そうだったの?」
「本当に無自覚ジゴロな奴だ……」

 同窓会での展開を二人で予想すると、どうにも慌ただしい展開しか予想できない。
 かと言って、これが理由で欠席というのもおかしな話だ。むしろ、どこかのタイミングで正式な発表は必要だよね。
 でも、尻込みしちゃう。周囲の圧力が怖い。

「……隼さんも武蔵さんも、同窓会に行くべき。ボク、二人がいなくても大丈夫」
「ショ、ショーちゃん。……そうだよね。アタシも本心では行きたいし、ここは当たって砕けろぐらいで行くか!」
「俺も別に恥ずかしがることじゃないしな。むしろ、誇るべきことだ。ショーちゃんは俺達が出かけてる間、どうする?」
「顔だけ怖いおじさんのお店で、一緒にお話ししてる」
「あー、玉杉さんの店ね。アタシも話を通しておくから、迷惑をかけちゃダメだよ?」

 とはいえ、こうやって同窓会にお呼ばれしたのだから、是非とも出席したいのが本音だ。
 ショーちゃんもちょっとアタシ達がいなくたって、もう何も問題ないよね。玉杉さんのお世話にはなるけど、あの人なら二つ返事でオッケーしてくれそうだ。顔だけは怖いけど。



 ――それにしても、中学時代の同級生と同窓会か。しかも、アタシとタケゾーは夫婦としての出席だ。
 これは何か波乱の予感がする。なんとなくだけど。

 ――まあ、それも楽しみの一つってね。
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