空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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VRワールド編

ep287 どうしてあの人の存在を匂わせてくるの?

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「は? へ? フ、フクロウさんって、コメットノアのことまで知ってんの?」
「オレッチも下っ端とはいえ、将軍艦隊ジェネラルフリートの一員ではある。組織の懐に潜り込んでいるからこそ、得られる情報もあるってこった」

 こちらの話が終わってフクロウさんの話を聞いてみると、まず最初に挙がって来たのはコメットノアの話題。
 確かにアタシ達はついさっきまで、そのコメットノアがVRワールドで形となった空間にいた。
 だけど、そんなことまでフクロウさんが知ってるなんて驚きだ。詳細を知らない下っ端にしては、妙に詳しいところがある。

 ――いや、詳しいと言うよりは、フクロウさん自身が独自に調べてた雰囲気だよね?
 この人、なんでわざわざそんな危ない橋を渡ってるのさ?

「……フクロウさん。俺としては、まずあなたの正確な素性を明らかにしてもらいたいですね。どうにも話を聞いてると、いくら玉杉さんの友人であっても、あなたの話を鵜呑みにはできません」
「ボクもそう思う。もしかして、将軍艦隊ジェネラルフリートのスパイ?」
「おうおう。ソラッチャンの家族は用心深くて、母親想いなこった。そう考えるのも当然だが、オレッチも簡単に素性は明かせなくてね。今はただ『タマッチャンの知り合いの情報屋』ってことで勘弁しておくんな。タマッチャンにも迷惑かけたくねえし、敵に回ったりはしねえ。……だから、頼む。教えてくれ」

 どうにも裏がありそうなせいで、タケゾーとショーちゃんはかなり用心深くなっている。
 アタシのことを想ってなのは分かるけど、あまりフクロウさんを問い詰めすぎるのもどうかと思うのよね。

 ――軽い調子も見えるけど、どこか真剣な様子も見え隠れしてるのが気になる。

「……いいよ、フクロウさん。アタシが知る限りのことを話してあげるさ」
「お、おい、隼!? そんなにあっさり認めて大丈夫なのか!?」
「まあ、直感的にだけどね。アタシ達がコメットノアで知ってることにしたって、そこまで大した話でもないでしょ?」
「……まあ、隼がそう言うならそれでいいが……」

 甘っちょろい話だけど、フクロウさんの姿を見てると心動かされちゃうのよね。
 最初に会った時から軽い調子ばかりの人だけど、そんな人が真剣な態度を見せるとアタシの口は動いてしまう。
 タケゾーにも軽く呆れられちゃうけど、そもそも知ってる話もちょっとだけしかない。

「アタシ達がコメットノアで知ってることなんて、星皇社長のデッドコピーにして、VRワールドの構築にも使われてたってことぐらいさ。多分これ、フクロウさんでも知ってる話だよね?」
「ああ。そこはオレッチもよく知ってる。聞きたいのは、その『コメットノアがVRワールドでどんな姿になっていたか?』ってことさ」
「VRワールド内でのコメットノア? フロスト博士がデバッグコマンドのように使ってたけど、形自体は空中戦艦みたいな感じだったねぇ……」

 そんなちょっと知ってるだけの話でも、フクロウさんは興味深そうに耳を傾けてくる。
 VRワールドでの姿まで聞いてくるし、コメットノアにどういう興味があるのだろうか?
 とりあえず、アタシが言えることはここまでなんだよね。

「空中戦艦……か。まあ、分かった。急に押しかけて、変な質問までして悪かったな、ソラッチャン」
「う、うん……。納得したのならいいんだけど……」

 正直、内容としてはかなり浅かったと思う。それなのに、フクロウさんは少し考えながらもどこか満足げだ。
 本当にどういう意図があったんだろう? 流れが読めなくて、かえって気になってしまう。

「ねえ、フクロウさん。本当にこんな程度の情報でよかったの? なんだか、こっちが申し訳なくなってくるんだけど?」
「なぁに、構わねえさ。ソラッチャン達はオレッチと違って、将軍艦隊ジェネラルフリート内部の人間じゃないっしょ? ヒーローと言っても普段は一般ピーポーなんだし、あんまり深入りするもんじゃないっしょ?」
「そういった厚意はありがたいんだけど……本当にいいの?」
「むぅ、そうだな……。だったら、最後にオレッチから一つだけ質問させてくれ。つっても、意識調査みたいな質問だ」

 気になり過ぎるせいで、思わずアタシの方からさらに質問を求めてしまった。
 なんだか誘導尋問された気もするけど、アタシ的にはフクロウさんの身の振り方が気になって仕方ない。

 将軍艦隊ジェネラルフリートに所属しながら、その情報を裏で玉杉さんに流す仕事をしていることといい、どうにもこの人は一癖も二癖もある。
 星皇社長の一件では裏で協力してくれてたようなものだし、アタシも恩を返したい気持ちが湧いてくる。
 そんなこちらの気持ちに応じるように、フクロウさんがもう一つ質問してくるのだけど――



「ソラッチャンはもしも……星皇 時音がこの世界に残れていたら、コメットノアも関わるこの一件でどう動いていた? 星皇 時音がどう考え、ソラッチャン自身は何のために動いていた?」



 ――ここでどういうわけか、星皇社長の名前まで出てきた。
 確かにコメットノアは星皇社長のデッドコピーであり『もう一人の星皇社長』とも言える存在だ。
 だけど、それと『星皇社長が今もまだいたら』という話がどう繋がるのだろうか?

「……もしも星皇社長が健在で国のヒーロー計画に関わってても、アタシのやることは変わらないさ。固厳首相と組んでいようが、フロスト博士と組んでいようが、アタシは星皇社長を止める」
「それが……この仮説に対するソラッチャンの答え?」
「そうだね。もっとも星皇社長が健在だったら、将軍艦隊ジェネラルフリートと関わることなんてなかったはずさ。アタシと最後に会った時のあの人なら、こんなことに手を貸したりはしない」

 それでも、聞かれた以上はアタシも答える。
 あくまでIFの話だけど、星皇社長がいたらそもそもヒーロー制定法なんて話さえも出てこなかったはずだ。
 今こうして星皇カンパニーが国のヒーロー計画に携わっているのも、星皇社長というカリスマを失ったことによる名誉挽回のチャンスの意味合いを感じる。
 星皇社長がかつて将軍艦隊ジェネラルフリートと組んでまで騒動を起こしただって、そもそも『我が子を蘇らせたい』という願いからきたものだ。
 アタシが最後に見た星皇社長の姿を考えても、余計な混乱を招く真似をするとは思えない。

 ――でなきゃ、アタシにヒーローとしての道を託しはしない。

「……ソラッチャンがそう言うんなら、その通りなんだろうな。……本当に時音はいい娘に出会えたもんだ」
「へ? どういう意味で――」
「おっと、話はここまでだ。今日は色々とありがとうな。オレッチ的にもいい話が聞けた。……何かあっても、オレッチはソラッチャン達の味方だからよ。頼りたい時があれば、いくらかは頼ってくれよな」
「『いくらか』であって『いくらでも』じゃないんだね……。あっ、もう帰っちゃった」

 質問全体の内容はアタシにもよく分かんなかったし、最後に少し呟いた言葉もアタシには理解できなかった。
 フクロウさんも窓から颯爽と立ち去り、これ以上の話を聞くこともできない。

 ――なんだか『コメットノアの話を聞きたかった』って言うより『星皇社長の話が聞きたかった』とも感じられるけど、一体何が目的だったんだろうね?

「フクロウさんって、台風みたいな人だよね。なんだか、アタシも流されるままに流されちゃったや」
「隼が言えた立場か? でもまあ、俺もあの人の態度は気になるよな……」
「あのフクロウって人、悪い人には見えない。将軍艦隊ジェネラルフリートの人だけど、敵ではない感じ?」
「アタシもそう思うよ。あの人、組織の一員って言うより密偵みたいな雰囲気が強いよね」

 どうにも気になるフクロウさんの動向。最初はクジャクさんのお忍び来日の付き添いだったらしいけど、明らかにそれだけとは思えない。
 フロスト博士やラルカさんといった五艦将の意向に反する動きもしてるし、ただの下っ端構成員とも思えない。



 ――せめて願うのは、フクロウさんが敵に回らないことだ。
 階級や実力の話ではなく、アタシが尊敬する星皇社長の影をチラつかせる人と争うなんてまっぴら御免だ。
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