空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
318 / 465
将軍艦隊編・破

ep318 月華暗行の右舷将:ルナアサシン

しおりを挟む
「右舷将隊。銃は下げて、空色の魔女とその夫の包囲に回ってください。モデル・パンドラという力の前では、非導体弾も効果が薄いです。自分が直接相手いたします」
「かしこまりました。ラルカ右舷将」

 森に逃げ込んだアタシとタケゾーを追い、背後から迫るは右舷将ラルカさんがリーダーを務める五台のバイク。
 相変わらず統率が取れており、オフロードだろうが関係なく整った隊列でこちらを包囲してくる。
 バイクのタイヤにはご丁寧にオフロード用っぽいスパイクがついてるし、本当に用意周到な人だ。
 さっき電磁フィールドでスナイパーライフルを防がれたことも考慮するあたり、これぞプロって感じだね。

 ――てか、ラルカさんはさっきバイクに乗りながら狙撃してきたの? こんなオフロードで両手をハンドルから離して? どんなバランス感覚よ?
 ルナアサシンなんて二つ名は飾りじゃないってか。

「お待たせしました、ミス空鳥。今回は最初から本気で行きます。おとなしく殺されてください」
「ヤバい。殺し屋のスイッチが入っちゃってる」

 部下四人にはアタシ達を包囲させ、ラルカさんが単身でアタシの乗るサイドカーに横付けしてくる。
 なんだか目つきが普段より鋭いし、殺意剥き出しな感じがハンパない。
 スナイパーライフルの先端には銃剣が取り付けられ、武器からして殺意が増している。
 ここまで本気のラルカさんは初めてだ。いくらモデル・パンドラを装備しているとはいえ、アタシはこの人に一度も勝てたことがない。
 これはこっちも本気でやらないと、本当に殺されて――



「さっきボスからも連絡が入ったのですが、洞窟でのあなたとのやりとりが次の給与査定に響くそうです。この恨み、ここで晴らさせていただきますよ……!」
「それって私怨じゃん!? もしかして、お賃金で殺意剥き出しなの!?」



 ――しまうんだろうけど、アタシの横に並んだラルカさんの言葉で力が抜ける。
 何、この人? ラルカさんって、こんな感じの人だったっけ? もっと任務に忠実な工作員だか殺し屋だかじゃなかったっけ?
 そりゃ、お金は大事だと思うよ? だけどさ、それを殺意に変換しないでよ。

 ――アタシの中でのラルカさんのイメージが一気に崩落しちゃう。

「五艦将なんて最高幹部でも、所詮は中間管理職みたいなものです! 管理職だから残業代も出ません! 正直、星皇カンパニー社長秘書だった時の方が収入は安定してました!」
「き、気持ちは分かるんだけどさ! その怒りを任務と一緒にアタシにぶつけるのは何か違くない!? てか、危ないっての!? 銃剣突き付けないで!?」
「任務の内容もあなたの始末です! この際なので、一緒に成し遂げさせていただきます!」
「お金の恨みって怖い!」

 もうね、アタシも何が何だかって感じ。任務+お金の逆恨みで命を狙われるヒーローって、何よこれ?
 ただ考えてもみると、ラルカさんが目を吊り上げて怒りを露わにする姿も、怒りを理由に襲ってくる姿も見たことないのよね。
 いつも冷静沈着どころか冷酷なレベルの人なのに、やっぱ色々と溜まってたのかな?

「さあ! おとなしく殺されてください! 自分の給与のために!」
「うおおぉ!? 鬱憤晴らしで襲ってはいても、実力自体は流石のラルカさんか!」

 とはいえ、ラルカさんが恐ろしいヴィランであることは変わらない。
 向こうはサイドカーも何もないただの二輪バイクなのに、サイドカーに乗るアタシと並走しながらバイクの上でバランス立ち。
 そこから銃剣付きライフルを振り回し、アタシの首元を狙ってくる。
 こんだけ気が荒れてるのに、腕前自体は相変わらずだ。『人間にできる範疇の能力』で『超人である空色の魔女』を的確に追い込んでくる。

「こ、こっちだって負けないさ! デバイスロッド、スタンロッド変換! 魔女式ロッドスイング!」
「どれだけパワーがあっても、そんな素人感丸出しの杖術では自分には及びませんよ」
「ちょ、ちょっと!? バイクの上で飛び跳ねないでよ!? 見てるこっちも危なくて怖いんだけど!?」
「この程度の動き、自分には造作もありません。そちらがサイドカーだからって、有利だと思わないことです」

 こっちもデバイスロッドを振り回して対抗するも、ラルカさんにはまるで当たらない。
 アタシはタケゾーに運転を任せてサイドカー上で応戦できるけど、ラルカさんは単身バイクに乗りながら戦っている。
 ハンドルから手を放すなんて当たり前。こちらがロッドを振るっても、飛び跳ねながら回避してくる。
 一体、どんな特別な訓練を積めばここまで動けるようになるのよ? ラルカさんって、本当に人間だよね?

 アタシがモデル・パンドラでパワーアップしても、ラルカさんには関係ない。
 この人の神髄は『策略と技巧』だ。『柔よく剛を制す』をそのまま体現したように戦ってくる。

「まずはその邪魔な杖を取っ払わせていただきます」


 バシィィイン!


「あぁ!? デバイスロッドが!?」

 器用にバランスをとりながら、ラルカさんはアタシの持っていたデバイスロッドを銃剣付ライフルで振り落としてくる。
 これはマズい。ラルカさんほどの技量があれば、このまま銃剣で刺し殺してきてもおかしくない。

 ――でも、こっちにだってチャンスはある。



「トラクタービーム! デバイスロッド、戻ってこぉぉおい!!」
「むっ!? まだその杖を使いますか?」



 一度は振り落とされたデバイスロッドだけど、トラクタービームでなんとか引き寄せる。
 それもただ引き寄せただけじゃない。そのままラルカさん目がけ、反動をつけて突っ込ませる。
 このスピードなら、バイクの上で飛んで避けるの難しい。


 ガチィィイ!


「残念ながら。防御術についても心得ております」
「やっぱ、一筋縄ではいかないよね! だけど……デバイスロッド放電!」

 ライフルでガードこそされたけど、この技は隙を生じぬ二段構え。ラルカさんと接触してればそれでいい。
 この状態でデバイスロッドを放電させれば、ラルカさんを感電させて――


 バチバ――シュゥウウ


「え!? なんで!? 放電がうまくいかない!?」

 ――感電ノックアウトのはずだったのに、何故かデバイスロッドの放電が機能していない。
 いや、放電自体はできたはずだ。だけど、まるで地面に吸い寄せられるように電気が流れていってしまう。
 そのせいでラルカさんにダメージはなし。これっていったい、何がどうして――



「あなたの能力は熟知してると言ったでしょう? 自分が対策を疎かにすると思いましたか?」
「ああぁ!? まさかそのバイクのスパイクタイヤ、アースの役目まで担ってるの!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(ことぶき・あゆみ)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

処理中です...