空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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もう一つの故郷編

ep408 忌々しいあいつがまた現れた!

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「あ、あの巨大な翼ってまさか……!?」
「わ、私も見たことがあります。ですが、かなり変化しているような……!?」

 アタシ達が戻るはずだったタワーのさらに向こう側。クジャクさんが管理しているらしいタワーの方から迫りくるのは、巨大な鳥にも見える影。
 猛スピードで接近してくるのが確認できて、アタシと洗居さんには見覚えがある。その因縁は最早深いなんてレベルじゃない。

 かつて洗居さんやタケゾーを危険な目に遭わせ、両親やお義父さんを死なせた忌々しい元凶。
 これまで戦ったどのヴィランよりも、アタシにとって仇敵と呼べる存在――



「クゲアァァァアア!!」
「デ、デザイアガルダ!? しかも、また姿が変わってる!?」



 ――父方の叔父でもある鷹広のおっちゃんことデザイアガルダだ。
 ウォリアールに連行されたところまでは知ってたけど、まさかこうして再び相まみえるとは思わなかった。こっちに来てまで脱獄したってこと?
 いや、それも気になるけど、どうにも以前とは様子が違う。将軍艦隊ジェネラルフリートによって『デザイアガルダ・リターンズ』というサイボーグ化をされた時より、さらに変化が加わっている。
 機械的な部分も残ってるけど、全身が赤く変色し、目もこれまでより異常に血走っている。
 なんだか正気を失ってるって感じだ。それもどこか『人から完全に外れた』とでも言うような――

「クゲェアァアア!!」
「きゃ、きゃあ!? な、何を!?」
「あ、洗居さん!? 何しやがんだ! この鳥公が!」

 ――そんな疑問など向こうは意に介せず、奇怪な鳴き声だけ上げながら恐ろしいスピードでこちらへ突っ込んで来たかと思えば、その巨大な両足で洗居さんを鷲掴みにしてくる。
 目的も何も告げずに洗居さんを攫うだなんて、不届き者にもほどがある。その姿もここにいる理由も今は別として、アタシも見過ごすことなどできはしない。
 こっちもすぐさま空色の魔女へと変身してデバイスロッドに腰かけ、洗居さんを攫って逃げるデザイアガルダの後を追う。

「そ、空鳥さん……! 助けてください……!」
「待ってて、洗居さん! くっそ、今までとは比にならないスピードだ……!? さっさと止まりな! デザイアガルダ!」
「グゲッ! クゲアァァア!」
「な、何さあいつ? アタシの声が聞こえてないの……?」

 ただ、アタシが全速力で飛ばしても、デザイアガルダにはまるで追いつかない。
 確かにこれまでにしたって、空での勝負はデザイアガルダに分があった。それでもアタシだって燃料アルコール自体はさっきまで接種していたので十分にある。多少の無理だって可能だ。
 だというのにこの能力差。どうにもあの赤くなったデザイアガルダは、今までとは規格外のパワーアップが施されているようだ。

 ――同時に気になるのは、あいつの様子というか態度というべきか。
 デザイアガルダはさっきからずっと、鳥の鳴き声のような声しか発していない。

「な、なんだか、今までとは別ベクトルで不気味な奴だ……! だけど、絶対に逃がさないからねぇえ!」

 気になることはあれど、ここでデザイアガルダを逃がしてしまえば洗居さんの身がどうなるか分からない。
 フェリアさんやウォリアールにとって、洗居さんは未来を握る存在だ。アタシからしたって、言葉では言い表せない大事な人だ。
 そんな人を見殺しにはできない。たとえどれだけパワーアップしていようとも、アタシの手で救い出してみせる。

「クゲェェアァァア!!」


 ガシャァァアン!


「ッ!? クジャクさんのタワーに突っ込んだ!? 本当に何を考えてるのさ!?」

 洗居さんを連れて逃げていたデザイアガルダは、クジャクさんが管理するタワーの中階層の窓を突き破って中へと入っていく。
 こっちも後を追うため、勝手ながらも中へと突入する。クジャクさんにまで迷惑をかけてるあたり、あのクソ怪鳥はウォリアール王族を敵に回すつもりだろうか?

「あ、洗居さん!? ……チィ!? さらに上の方へ逃げられたってこと!? とりあえずは追うしかないか……!」

 アタシが遅れて中に入った頃には、デザイアガルダと洗居さんの姿を見失ってしまっていた。ただ、場所的には天井が高い突き抜けになった場所であり、逃げ道としては上しかない。
 クジャクさんの許可なんて得てないけど、そんなことを言ってる場合でもなし。謝罪なんて後でするとして、今は洗居さんを助けることが先決だ。

 ――ウォリアールに来てまで目の前で洗居さんを誘拐されて、アタシも肉親とか関係なしに許せるはずがない。



「……くっそ。まさか本当にこんなことになっちまうなんて……。せめて空鳥が来なければ、俺の犠牲だけで済んだのかもしれねえけどよ……」
「……え? あ、あれ? もしかして……フェリアさん?」



 アタシが一人で上を見ながら後を追おうと画策していると、近くから誰かが苦しそうな呟きをしながら姿を見せる。
 振り向けばそれがフェリアさんだということはすぐに分かった。ただ、どうにも様子がおかしい。

 服装はこっちに来てから見慣れていたウォリアール王族の衣装ではなく、全身真っ黒なレインコート。フェリアさんが日本で『ダークヒーロー、フェイクフォックス』として活動していた時のものだ。
 その左手にはあの時と同じく、鞘に納められた高周波ブレードも握られている。

「フェ、フェリアさん! 洗居さんがデザイアガルダに連れ去られたんだ! 早く追いかけないと……!」
「……悪い、空鳥。俺はここでお前を切り倒さねえとならねえんだ。どうしても……今はどうしても、こうするしかねえんだ……!」
「な、何を言ってるのさ!? ちょ、ちょっと!? どうしちゃったんだい!? フェリアさん!?」

 何よりも様子がおかしいのは、フェリアさんがアタシへ向けてくる敵意。どこか惑いながらも、本当にアタシを切り倒そうとしている覚悟だけは伝わってくる。
 どうしてこんなことになっちゃってるのよ? フェリアさんだって、洗居さんが優先のはずだよね?

 そうは言っても、フェリアさんはゆっくりと高周波ブレードの刀身を抜きながら、アタシの方へと歩み寄ってくる。
 抜き終えた鞘は捨て、レインコートのフードを被りながら顔にはフェイクフォックスの時と同じ狐面を被せてる。
 今回は『正体を隠す』という目的ではない。なんとなく感じるのは『自分を偽る』とでもいった様子。顔を隠し、内なる気持ちをアタシに悟られないようにしている気がする。
 もう何が何だか分からないけど、これだけは分かる。



 ――ここでフェリアさんの相手をしないと、アタシは本当に殺される。



「俺がどうしちまったかって? 強いて言うなら……『イカれるしかなかった』ってことだよぉぉお! 空鳥ぃぃいい!!」
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