空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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もう一つの故郷編

ep410 騒動の糸を引く人間が現れた。

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「あんたは……天鐘!?」
【これはこれは空鳥様。ワタシの顔と名前は覚えていただいていたようで、光栄に存じます】

 アタシとフェリアさんが戦っていた突き抜け空間に設置されていた大型モニター。そこに姿を見せるのは、どこか胡散臭い見知った顔。
 ウォリアールと星皇カンパニーの繋ぎ役を務める男、天鐘。アタシとしてもいけ好かないその顔が、モニターにデカデカと映し出された。

「まさか、あんたがこの騒動の元凶ってこと? 洗居さんをデザイアガルダに攫わせて、フェリアさんを襲わせたのも?」
【気を悪くされないでください。これはあなたにとっても理のある話であり、ワタシもこのような無礼は承知で行動を起こさせていただきました。ホホホ】
「ニヤけながらほざかないでくんない? アタシも怒り心頭なんだけど? ……今どこにいるのさ? そっちに行って、ぶっ飛ばしてやるよ」

 こいつの企みは分からない。ぶっちゃけ興味もない。
 ただ一つだけ言えるのは、アタシはこいつのことが大っ嫌いだってこと。洗居さんにフェリアさんという友人を利用されて、いい気なんてするはずがない。
 今すぐにでもその画面越しのニヤけ面をぶん殴りたい。目的なんてその後に聞き出してやる。
 モニターを睨みつけながら、天鐘に敵意を向けるのだが――



【おやおや? 空鳥様は状況がよく分かっていないようですね。下手な真似をして、彼女がどうなってもよろしいのですか?】
【んん! んうぅ!?】

「あ……洗居さん!?」



 ――モニターへ新たに映し出された洗居さんの姿を見て、こちらが抵抗できないことを理解してしまう。
 洗居さんは猿轡をかまされ、ロープで体を拘束されている。おまけに天鐘はナイフを手に持って洗居さんへ突きつけ、こちらの動きを心理的に拘束してくる。
 デザイアガルダと天鐘が繋がってるのは読めたけど、ここまで過激な行動に出てくるのは予想外だ。仮にも王子であるフェリアさんの婚約者に対し、こんな仕打ちは許されるものではない。

「……まさか、フェリアさんがアタシに襲い掛かって来たのも?」
「ああ……その通りだ。俺は栗阿を人質に取られたと聞かされ、もし言う通りに従わなければ『栗阿を殺す』って……!」
「それだけ分かれば十分だよ。フェリアさんは悪くないさ」

 しかもここまでの動きが迅速過ぎる。かなり計画立てて、フェリアさんを巻き込む算段だったってことか。
 天鐘の目的は分からないままだけど、少なくともいいものの予感はしない。洗居さんのためにフェリアさんが本心に抗いアタシを襲ったことは仕方がないとも割り切れる。
 本当に胸糞悪くなるような計画だ。天鐘はウォリアールを滅茶苦茶にするつもりだろうか?

【やはりウォリアールという力がモノを言う国において、フェリア様よりも空鳥様がトップに立つべきだということはワタシも理解できました。それだけでも十分な収穫でしょう】
「あんたの知りたいことが分かったのなら、さっさと洗居さんを解放しな。その人はアタシにとっても大事な人だ。傷つけたりしたら許さないよ」
【そのような口をきけた立場ですか? 空鳥様にとっても大事な人ならば、この女性はまだこちらにとって大事な材料になりますよ?】
「くぅ……!? だったら、どうすれば洗居さんを解放してくれるのさ……!?」

 今この場において、天鐘はアタシ達の明確な敵だ。どんな思惑があるにせよ、洗居さんを人質にとることだけは許せない。
 とはいえ、ここで迂闊な真似に出られないのも事実。モニターを睨みながらも、言われるがまま従うしかない。

 ――何より避けるべきは、洗居さんの身が危険に晒されることだ。

【それでは……空鳥様にはこちらへお越しいただきましょうか。フェリア様は一切の抵抗をせず、ここを後にしてください。もう用済みです】
「ま、待て! 空鳥をこれ以上巻き込むつもりか!? 王族の身柄が欲しいってんなら、俺がなってやる! だ、だから、これ以上余計な人間を巻き込まないでくれ!」
「フェリアさん。ここは洗居さんのためにも、おとなしく要望を呑むしかないさ。アタシのことは大丈夫だから、今は言われた通りに離れてて。……お願い」
「そ、空鳥……!? くっそぉ……!」

 フェリアさんは不服そうにするも、アタシもなんとか堪えてもらうようにお願いする。正直、こうするしかないんだよね。
 アタシの身を案じてくれる気持ちだけで十分だ。フェリアさんだってかなり体を張ってるのだから、矛先がアタシに向いたのならばこっちだって体を張る。
 完全に納得した様子ではないけれど、フェリアさんは言葉通りにアタシから距離を置いてくれる。
 何が起こるか先も読めない展開だし、強がってはいても不安は募る。だけど、天鐘のご所望はアタシだ。
 二人のためにも、今できることをやるしかない。

「……それで? あんたはどこにいるのさ? 要望に応えてあげてるんだから、そっちも素直に示してくんない?」
【ホホホ。あのお方と同じく、こんな状況でも豪気な女性ですね。……ご安心を。ここから先につきましては、あなたもただ身をゆだねていれば良いのです】
「ん? どゆこと?」

 フェリアさんが立ち去ってアタシ一人になった状況で、天鐘とも話を進めていく。
 こっちはすぐにでも洗居さんの無事を確認したい。それができるのならば、アタシはこの状況も甘んじて受け入れる。
 まっすぐにモニターへ目を向け、天鐘の指示を待つ。
 回りくどい物言いはいいから、おとなしく場所の指示を――



 ガンッ!!


「ううっ!? な、何……!?」



 ――待っていたんだけど、突如後頭部に衝撃が走ってくる。
 油断した。モニターの天鐘に意識が向いていて、背後が完全に疎かだった。
 その衝撃も並の威力ではなく、アタシの強化細胞による守りさえも貫いてくるほど。思わず意識も遠のき、視界が暗転を始める。

 ――どうにか後ろ振り向いた先に見えるのは、天鐘の護衛を務める元五艦将の二人の姿だった。

【しばらく眠っていてください。あなたにはワタシが直接、いいお話をお持ちいたしますので。ホホホ】
「ふ、ふざけん……な……」

 完全な不意打ちだったし、相手もGT細胞やナノマシンで強化された人間だ。
 どれだけ意識を保とうとしても、全身から力抜けていく。



 ――天鐘の嫌な笑い声を耳にしながら、アタシは意識を手離してしまった。
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