空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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狂月明ける空編

ep444 さあ、決戦の舞台へ向かおう。

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 時刻はウォリアールで午前一時の真夜中。天鐘一派がコメットノアで潜伏していると思われるのは東部沖合。
 そこを目指すため、今アタシ達はウォリアール東部沿岸へと集まっている。
 燃料用のボトル片手に見る夜の海は綺麗だけど、風情に浸ってる場合でもないのよね。すでにモデル・パンドラに袖を通し、いつでも出撃できるように準備はできてる。

「この海の先に天鐘がいるんだよね。……本当にいよいよってなってくるよ」
「第一陣はオメーにかかってるんだから、しっかりと成功させてもらわねーとな」
「分かってますって。まずは予定通り、コメットノアを沈黙させてきますか」

 フロスト博士とも最終確認のように言葉を交わし、作戦内容を振り返っていく。
 手順としては最初にアタシがフレイムとベレゴマの援護を受け、沖合にあるコメットノアへと出撃。まずは敵の機動力を奪いにかかる。

「要望通りのものは用意してやった。オメーなら扱えるだろーから、これで動力部を停止させてこい」
「おっ、ありがたいねぇ。これじゃないと、コメットノアに搭載された白陽炉にも対抗できないからさ」

 もちろん、空飛ぶ巨大戦艦なんて簡単に止められるものではない。でも、対策は用意しておいた。
 鍵となるのは、フロスト博士が持ってきてくれた小型爆弾のようなもの。まあ、実際に爆弾でも間違いないか。
 手のひらサイズだけど、これはかつてアタシとタケゾーが発動させかけたフラグシップギアの自爆装置だ。こんなに小型なのに白陽炉の機能を反転させ、ビッグバン規模の爆発を起こせるというから恐ろしい。
 アタシならこの自爆装置を青陽を作るのと同じ要領で制御できる。これをコメットノアの白陽炉に叩き込み、双方のエネルギー反応で相殺させるって寸法だ。
 辿り着くための援護として、フレイムとベレゴマもついてくれるからね。開戦の狼煙役として、気合を入れて挑みましょうか。

「隼。コメットノアの沈黙に成功したら、私達も艦上へと乗り込む。後のことは気にせず、まずは最初の役目を果たすといい」
「どのみち、空鳥の作戦が成功しねえことには始まらねえ。責任重大だが……頼んだぞ」
「ああ、任せなって。アタシってこういう大一番では燃えるタイプでね。大船に乗った気で待っててよ。……大船を落としに行くんだけど」

 それが成功すれば、クジャクのおばちゃんやフェリアさんといったこちらの戦力も出撃だ。
 動力を失ったコメットノアなど、所詮はただの浮島。数人が艦上へ乗り込み、周辺は将軍艦隊ジェネラルフリートの艦艇で包囲。
 そうなってしまえば、もう天鐘一派に逃げ道などない。アタシも艦上へと降り、洗居さんを救出する。
 そこから後のことは臨機応変って感じだけど、その段階に来たらこっちの勝ちは確定したようなもの。天鐘の野望を完全に打ち砕き、ウォリアールの転覆阻止でミッション完了だ。

「俺も話は聞いたが、本当に準備がいいもんだな。とはいえ、油断はできないか」
「そうだねぇ。向こうにはまだラルカさんと牙島がいる。……そっちはアタシとタケゾーでなんとかするよ」
「ああ。俺も最大限援護にまわる。そのために用意してくれたジェットアーマーだからな」

 ただ、これで決するのは全体での勝利のみ。まだ天鐘が最後の悪あがきとして、ラルカさんと牙島を差し向けてくることは想像できる。
 そこの役目はアタシとタケゾーだ。これまで長きに渡る因縁もあるし、そういう意味では適任だ。

 ――あの二人が『どうして天鐘についたのか?』って理由も朧気に見えてきたし、アタシとしてもこの役目は買って出たい。

「ラルカと牙島についてだが、要注意すべきは牙島だけで十分だろーな。ラルカは部下もいなくなってるし、どーにもコメットノアには搭乗してねーって情報が入った」
「へ? なんで?」
「さーな。周辺の海に潜んでるんだろーが、あいつ単独じゃできることも限られる。敵総大将は牙島ぐれーに考えてて問題はねーよ」

 アタシとタケゾーの話を聞いてたのか、フロスト博士が飄々としながら口を挟んでくる。
 相変わらず掴みどころがないし、どこか人を食ったような人だ。今は信用するけど、やっぱ苦手意識って残っちゃうよね。



 ――タケゾーの推察通りの計画を立てていたとしたらなおさらだ。



「……フロスト博士。アタシもこの戦いが終わるまではあんたを信じる。だけど、時が来たら全部語ってほしいもんだね」
「……クカー? なーんのことだか、俺様にはさーっぱり分かんねーな?」
「まあ、今はあんたもとぼけるしかないのかもね。とりあえず、アタシも全力で挑むことだけは保証するよ」

 フロスト博士は天鐘が起こした反乱の裏で、また別の思惑を抱いている可能性が高い。ただ、今は言及する必要のないことだ。
 ここまで事態が進んでしまったら、余計な思考さえも不要。今は作戦通りに事を進め、天鐘一派を打ち倒すことに集中する。

「洗居さんはコメットノアにいるってことでオッケー? コメットノアの動力部を停止させた後の被害についても問題なし?」
「あー。そこは俺様も保証してやる。……今はオメーにもこの国を救うヒーローとして、役割は全うしてくれねーとな。そのために必要な情報ぐれーはくれてやる」
「そいつはありがたい話で。……そいじゃ、そろそろ行きましょうか!」

 準備は整い、気持ちも定まった。空になったボトルもゴミ箱に捨てて、お酒燃料のチャージも完了だ。
 アタシが気持ちを引き締めたタイミングを見計らったかのように、ベレゴマとフレイムも近寄ってくる。

「準備はできとうってことね? ほいだら、フレイム艦尾将の背中に乗るばい」
「フオオオォ!」
「うん、お願い。アタシ一人じゃ手が回らないからね」

 あらかじめの段取りに従い、アタシはフレイムの背中に飛び乗って、ベレゴマに守られながら海へと飛び立っていく。
 こんな形で将軍艦隊ジェネラルフリートと協力することになるなんて、最初の頃からは想像もできなかった。
 まあ、まだ将軍艦隊ジェネラルフリートの人間が敵に回ってはいるんだけどさ。

 大凍亜連合の用心棒として潜んでいた左舷将、牙島 竜登。
 星皇カンパニーの社長秘書として指揮を執っていた右舷将、ラルカ・ゼノアーク。

 あの二人がこのウォリアールという舞台で最後に立ちはだかるなんて、本当に今回は運命に回されてる気がする。それがたとえ意図的なものでもだ。



 ――でも、誰が相手だろうと怯んでいる暇さえない。
 アタシにとって縁の深いこの国を守るため、空色の魔女はウォリアールのヒーローとなる。
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