BLゲームの脇役に転生したはずなのに

れい

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最初の友達

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シリウスは俺の隣に腰を下ろし、サンドイッチの包みを開いた。
その仕草ひとつさえ、どこか絵になる。

「……アリエス」

控えめに呼ばれ、顔を向ける。
シリウスは手にしたサンドイッチを少し持ち上げて、照れたように笑った。

「よかったら、このあと……学校、案内してくれないかな。まだ分からないことばかりで」

心臓が跳ねる。
来た。
“最初の友達”としての、俺の出番だ。

「もちろん。いいよ。」

自然に返事と笑みがこぼれた。
ラスがちらと俺を見て、それから笑顔を作る。
けれどその奥に潜む色は、やっぱり俺には読み取れなかった。



昼休みの後半。
俺とシリウスは学園を歩いた。
桜の花びらが舞う廊下を抜けて、中庭から図書室へ。

「わぁ……本、すごい数だね」
「ここは静かで落ち着く場所だからテスト前はみんな取り合いや」

小さな会話の積み重ね。
俺にとっては当たり前の光景でも、シリウスにとっては一つ一つが新鮮で、瞳が明るく揺れていた。



体育館前を通ると、ちょうど部活の掲示板が張り替えられていた。
生徒たちの視線が自然とシリウスに集まる。
彼は気づかず首を傾げ、俺に問いかける。

「……俺、なんか変かな?」
「いや。シリウスが目立つだけや」

素直に言った。
光を吸い寄せるみたいな存在感。
これが、主人公。

シリウスは少しだけ頬を赤らめ、うつむいた。
その横顔を見ながら、胸が静かに熱を帯びていく。



ふと気づく。
廊下の端に立つ影。
ラスが腕を組んでこちらを見ていた。
遠くからでも、その眼差しは真っ直ぐで。
俺とシリウスの距離を、計るように。

さらにその背後。
窓際に寄りかかるスコーピオの姿。
ポケットに手を突っ込みながらも、確かにこちらを窺っている。

胸がざわついた。
……ああ、なるほど。やっぱシリウスが目立つからか。

(まぁ、あの見た目で転校してきたら、誰でも気になるよな)

納得してひとり頷く。
ラスの視線も、スコーピオの沈黙も。
ぜんぶシリウスに向かってるんやろなぁ――そう思って、俺はそれ以上深く考えなかった。

(よし、俺はあくまで“脇役”。案内役に徹したらええんや)

最初の友達として、彼の隣に立つ。
それだけで十分。



昼休みの終わり。
教室へ戻る途中、シリウスが笑った。

「ありがと、アリエス。色々案内してくれて。君のおかげで少し安心した」

その言葉に、胸が震えた。
俺がこの世界で果たすべき“最初の友達”の役目。
確かに一歩、踏み出せた気がした。

けれど――背後に残った二つの視線。
それが俺の肩に落とす影の重さを、まだ理解していなかった。
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