BLゲームの脇役に転生したはずなのに

れい

文字の大きさ
20 / 46

放課後

しおりを挟む
放課後。
授業が終わり、教室の空気が少しずつ緩んでいく。
プリントをしまっていると、隣に影が落ちた。

「……アリエス」

顔を上げると、シリウスが立っていた。
控えめに手を胸の前で組みながら、小さな声で続ける。

「もしよかったら……帰り、一緒に歩かない?」

「え? 俺と?」
「うん。君と一緒だと安心できるから」

その言葉に、俺は一瞬きょとんとした。
安心? なんでや?
けれどすぐに笑って返す。

「ええよ。俺もちょうど帰るとこやし」

深い意味はなく、自然な調子で。
俺にとってはただの友達づき合いの一つ。
でもシリウスは、ほっとしたように息をつき、少し笑った。



校門を抜けると、桜の花びらが道を飾っていた。
並んで歩くシリウスの横顔は、昼のざわめきよりも柔らかく見える。

「……やっぱり、みんなの視線が落ち着かなくて」
「そら、シリウスは目立つからな」
「君はそう言うけど……。アリエスは普通にしてくれる。それがすごく楽なんだ」

心臓がひゅっと跳ねた。
俺はただ自然に話してただけやのに。

「いやいや、俺なんか特別なことしてへんよ」
「それが、いいんだよ」

シリウスはそう言って、春風に髪を揺らした。
その笑顔がまぶしくて、一瞬言葉を失った。



寮の玄関前に着くと、そこにはラスが立っていた。
腕を組んで壁にもたれ、俺たちを見ている。

「……遅かったな、アリー」

低い声。
俺は軽く手を振った。

「シリウスと寮の道案内がてら一緒に帰ってきただけやで」

無邪気に言うと、ラスは片眉を上げ、すぐに笑みを作る。
けれど、その笑みに潜む冷たい色に、俺は気づかなかった。

「ふーん……カバン貸して。重いでしょ」
「え、ありがと!」

無邪気に笑ってカバンを渡した。
ラスの肩がわずかに強張ったことには、やっぱり気づかない。

その横でシリウスは、二人のやり取りを黙って見ていた。
ラスの一瞬の硬さも、俺の無自覚な笑顔も。
全部を胸に留めるように。

(アリエスは……やっぱり特別だ)


新しい環境で、こんなふうに自然に迎えてくれる人間はなかなかいない。
俺は昔から、どうしても“特別扱い”されることが多かった。
遠くから憧れの視線を向けられたり、必要以上に丁寧に扱われたり。
けれどそれは、友達としての距離感とは少し違う。

でもアリエスは違った。
「目立つなぁ」と笑いながら、羨望も偏見もなく。
ただ自然に隣に並び、当たり前の調子で話してくれる。

だからこそ、安心できる。
無理に気を遣うわけでもなく、距離を測るわけでもない。
ただ笑って隣に立ってくれる――そのことが、どれだけ心強いことか。



ラスがカバンを肩に掛け直す。
その動作の端々に、目に見えない圧が潜んでいた。けれど俺は気にもせず、軽く伸びをしてシリウスへ笑いかける。

「今日は案内できて楽しかったわ。また一緒に歩こうな」

「……うん」
シリウスは短く返事をして、少し俯きながらも確かに笑った。
その笑みの奥には、昼間の緊張とは違う、柔らかい温度があった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

僕はただの妖精だから執着しないで

ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜 役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。 お願いそっとしてて下さい。 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎ 多分短編予定

魔王様の執着から逃れたいっ!

クズねこ
BL
「孤独をわかってくれるのは君だけなんだ、死ぬまで一緒にいようね」 魔王様に執着されて俺の普通の生活は終わりを迎えた。いつからこの魔王城にいるかわからない。ずっと外に出させてもらってないんだよね 俺がいれば魔王様は安心して楽しく生活が送れる。俺さえ我慢すれば大丈夫なんだ‥‥‥でも、自由になりたい 魔王様に縛られず、また自由な生活がしたい。 他の人と話すだけでその人は罰を与えられ、生活も制限される。そんな生活は苦しい。心が壊れそう だから、心が壊れてしまう前に逃げ出さなくてはいけないの でも、最近思うんだよね。魔王様のことあんまり考えてなかったって。 あの頃は、魔王様から逃げ出すことしか考えてなかった。 ずっと、執着されて辛かったのは本当だけど、もう少し魔王様のこと考えられたんじゃないかな? はじめは、魔王様の愛を受け入れられず苦しんでいたユキ。自由を求めてある人の家にお世話になります。 魔王様と離れて自由を手に入れたユキは魔王様のことを思い返し、もう少し魔王様の気持ちをわかってあげればよかったかな? と言う気持ちが湧いてきます。 次に魔王様に会った時、ユキは魔王様の愛を受け入れるのでしょうか?  それとも受け入れずに他の人のところへ行ってしまうのでしょうか? 三角関係が繰り広げる執着BLストーリーをぜひ、お楽しみください。 誰と一緒になって欲しい など思ってくださりましたら、感想で待ってますっ 『面白い』『好きっ』と、思われましたら、♡やお気に入り登録をしていただけると嬉しいですっ 第一章 魔王様の執着から逃れたいっ 連載中❗️ 第二章 自由を求めてお世話になりますっ 第三章 魔王様に見つかりますっ 第四章 ハッピーエンドを目指しますっ 週一更新! 日曜日に更新しますっ!

最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??

雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。 いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!? 可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

原作を知らないblゲーに転生したので生きるため必死で媚びを売る

ベポ田
BL
blゲームの、侯爵家に仕える従者に転生してしまった主人公が、最凶のご主人様に虐げられながらも必死に媚を売る話。

使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。

ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と 主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り 狂いに狂ったダンスを踊ろう。 ▲▲▲ なんでも許せる方向けの物語り 人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。

処理中です...