BLゲームの脇役に転生したはずなのに

れい

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放課後

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放課後。
授業が終わり、教室の空気が少しずつ緩んでいく。
プリントをしまっていると、隣に影が落ちた。

「……アリエス」

顔を上げると、シリウスが立っていた。
控えめに手を胸の前で組みながら、小さな声で続ける。

「もしよかったら……帰り、一緒に歩かない?」

「え? 俺と?」
「うん。君と一緒だと安心できるから」

その言葉に、俺は一瞬きょとんとした。
安心? なんでや?
けれどすぐに笑って返す。

「ええよ。俺もちょうど帰るとこやし」

深い意味はなく、自然な調子で。
俺にとってはただの友達づき合いの一つ。
でもシリウスは、ほっとしたように息をつき、少し笑った。



校門を抜けると、桜の花びらが道を飾っていた。
並んで歩くシリウスの横顔は、昼のざわめきよりも柔らかく見える。

「……やっぱり、みんなの視線が落ち着かなくて」
「そら、シリウスは目立つからな」
「君はそう言うけど……。アリエスは普通にしてくれる。それがすごく楽なんだ」

心臓がひゅっと跳ねた。
俺はただ自然に話してただけやのに。

「いやいや、俺なんか特別なことしてへんよ」
「それが、いいんだよ」

シリウスはそう言って、春風に髪を揺らした。
その笑顔がまぶしくて、一瞬言葉を失った。



寮の玄関前に着くと、そこにはラスが立っていた。
腕を組んで壁にもたれ、俺たちを見ている。

「……遅かったな、アリー」

低い声。
俺は軽く手を振った。

「シリウスと寮の道案内がてら一緒に帰ってきただけやで」

無邪気に言うと、ラスは片眉を上げ、すぐに笑みを作る。
けれど、その笑みに潜む冷たい色に、俺は気づかなかった。

「ふーん……カバン貸して。重いでしょ」
「え、ありがと!」

無邪気に笑ってカバンを渡した。
ラスの肩がわずかに強張ったことには、やっぱり気づかない。

その横でシリウスは、二人のやり取りを黙って見ていた。
ラスの一瞬の硬さも、俺の無自覚な笑顔も。
全部を胸に留めるように。

(アリエスは……やっぱり特別だ)


新しい環境で、こんなふうに自然に迎えてくれる人間はなかなかいない。
俺は昔から、どうしても“特別扱い”されることが多かった。
遠くから憧れの視線を向けられたり、必要以上に丁寧に扱われたり。
けれどそれは、友達としての距離感とは少し違う。

でもアリエスは違った。
「目立つなぁ」と笑いながら、羨望も偏見もなく。
ただ自然に隣に並び、当たり前の調子で話してくれる。

だからこそ、安心できる。
無理に気を遣うわけでもなく、距離を測るわけでもない。
ただ笑って隣に立ってくれる――そのことが、どれだけ心強いことか。



ラスがカバンを肩に掛け直す。
その動作の端々に、目に見えない圧が潜んでいた。けれど俺は気にもせず、軽く伸びをしてシリウスへ笑いかける。

「今日は案内できて楽しかったわ。また一緒に歩こうな」

「……うん」
シリウスは短く返事をして、少し俯きながらも確かに笑った。
その笑みの奥には、昼間の緊張とは違う、柔らかい温度があった。
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