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逸れた視線
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「……やっと、面白そうな奴が来たな」
低く響く声。
狩人のような視線が、まっすぐにシリウスを射抜いた。
周囲が息を呑む。
(来た……! 伝説のイベント! シリウスに――会長が……)
俺の胸は高鳴り、目を凝らす。
レオは堂々と歩み寄り、シリウスの前に立った。
その手が伸びる。
顎を持ち上げる仕草――ここから衝撃の「キスイベント」が始まるはず。
……のに。
「…………」
彼の指先は、するりとシリウスを通り越し――隣の俺の顎に触れていた。
「え……?」
「……っ!?」
シリウスの目が揺れる。
ラスは固まったままスプーンを落とし、
スコーピオは小さく舌打ちし、
ジェミニ先生でさえ咳払いで誤魔化しきれず目を細める。
俺は――頭が真っ白になった。
「お前……アリエスだな」
レオの声は低く、けれど何かを確かめるように柔らかかった。
「ちょ、ちょっと待っ――」
次の瞬間。
世界が近づいた。
ほんの一瞬。
触れたか、触れないかの距離。
それだけで食堂中の空気が一斉に爆ぜる。
心臓は暴れて、息もできない。
視線を逸らす余裕すらなかった。
――そして。
レオはわずかに唇を歪め、困惑した俺を見下ろして言った。
「……やっぱり。噂通り、面白い奴だ」
その一言に、背筋が震えた。
(噂……? なんのことや!?)
けれど、レオの目はまっすぐ俺を見ていた。
シリウスに向かうはずの狩人の視線は、なぜか俺を捕らえて離さなかった。
⸻
俺は知らない。
学園の裏で囁かれていた噂。
“孤高の不良スコーピオを黙らせた下級生がいる”――猫事件の目撃談。
“あのジェミニ先生が妙に目をかけている生徒がいる”――職員室で漏れた雑談。
“遊び人気質のトーラス・チェルナーが急に落ち着いた”――寮で交わされた小声の証言。
それら断片がいつしか繋がり、レオの耳にも届いていた。
「おもしれぇ」と思わせるだけの熱を孕んで。
⸻
「……なんで、俺?」
呟きは自分の胸に吸い込まれていく。
食堂中の視線が、俺に釘付けになったまま。
シリウスの隣で、俺はただ震える心臓を抱え込むしかなかった。
低く響く声。
狩人のような視線が、まっすぐにシリウスを射抜いた。
周囲が息を呑む。
(来た……! 伝説のイベント! シリウスに――会長が……)
俺の胸は高鳴り、目を凝らす。
レオは堂々と歩み寄り、シリウスの前に立った。
その手が伸びる。
顎を持ち上げる仕草――ここから衝撃の「キスイベント」が始まるはず。
……のに。
「…………」
彼の指先は、するりとシリウスを通り越し――隣の俺の顎に触れていた。
「え……?」
「……っ!?」
シリウスの目が揺れる。
ラスは固まったままスプーンを落とし、
スコーピオは小さく舌打ちし、
ジェミニ先生でさえ咳払いで誤魔化しきれず目を細める。
俺は――頭が真っ白になった。
「お前……アリエスだな」
レオの声は低く、けれど何かを確かめるように柔らかかった。
「ちょ、ちょっと待っ――」
次の瞬間。
世界が近づいた。
ほんの一瞬。
触れたか、触れないかの距離。
それだけで食堂中の空気が一斉に爆ぜる。
心臓は暴れて、息もできない。
視線を逸らす余裕すらなかった。
――そして。
レオはわずかに唇を歪め、困惑した俺を見下ろして言った。
「……やっぱり。噂通り、面白い奴だ」
その一言に、背筋が震えた。
(噂……? なんのことや!?)
けれど、レオの目はまっすぐ俺を見ていた。
シリウスに向かうはずの狩人の視線は、なぜか俺を捕らえて離さなかった。
⸻
俺は知らない。
学園の裏で囁かれていた噂。
“孤高の不良スコーピオを黙らせた下級生がいる”――猫事件の目撃談。
“あのジェミニ先生が妙に目をかけている生徒がいる”――職員室で漏れた雑談。
“遊び人気質のトーラス・チェルナーが急に落ち着いた”――寮で交わされた小声の証言。
それら断片がいつしか繋がり、レオの耳にも届いていた。
「おもしれぇ」と思わせるだけの熱を孕んで。
⸻
「……なんで、俺?」
呟きは自分の胸に吸い込まれていく。
食堂中の視線が、俺に釘付けになったまま。
シリウスの隣で、俺はただ震える心臓を抱え込むしかなかった。
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