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ずれ始めた物語
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(……違う。ここは本来、シリウスが選ばれる場面のはずや)
星ネガは前世であれほどやり込んだゲーム。
序盤の「食堂イベント」は、伝説級の分岐ポイントとしてファンに語られていた。
会長がシリウスに触れ――そして「生徒会への勧誘」が入る。
ここで「承諾すればレオルート確定」「断れば他の攻略者との可能性を残す」。
いわばルートを決定づける最初の分かれ道だった。忘れる訳がない。
けれど今、会長は俺の方へ手を伸ばしていた。
やがてレオは顎から手を離し、食堂全体に響く声で言った。
「――ここ数日、気になる噂を耳にした」
静まり返る場。
「新入生、シリウス・スプリング。
入学直後から真っ直ぐな瞳で人を惹きつけていると」
シリウスが小さく息を呑む。
だがその視線は、決して逸らさなかった。
「そして……もう一人。
己のルームメイトや鬼教師をたじろがせ、不良を黙らせた。
誰よりも自然に人を引き寄せる在校生――アリエス・シェスターク」
食堂にざわめきが走る。
ラスがかつて一掃した「可愛い顔の噂」が消えた後、
代わりに広がっていたのは「不思議と目立つ存在」という別の噂。
それが会長の口から明言された瞬間、否応なく重みを持ってしまった。
そして会長は告げる。
「――シリウス・スプリング。アリエス・シェスターク。
二人を、生徒会に勧誘する」
爆発したようなざわめき。
本来ならここで指名されるのはシリウスだけ。
伝説の「会長ルート分岐」が、俺を巻き込む形に書き換えられてしまった。
「午後の歓迎会で返事を聞かせろ。入るか、入らないか。選択は自由だ」
沈黙。
最初に口を開いたのは、シリウスだった。
「……断ります」
迷いのない声。
食堂全体が凍りつく。
「興味ありません。それに――」
シリウスは俺を一瞬だけ見た。
「……俺の大切な人に、あんなことをした人の誘いなんて、受けません」
(……はぁぁ!? ちょっと待てシリウス!
俺はただ“最初の友達”なだけやろ!?
そんな言い回ししたら、周りから見たら完全に告白やん!)
心臓が跳ねる。
けれどそれは恋の自覚なんかじゃない。
むしろ「攻略対象に勘違いされてルートが崩れる!」という焦燥感だった。
案の定、周囲の反応はすぐに現れた。
ラスはスプーンを握りしめたまま視線を落とし、
スコーピオは低く舌打ちをもらし、
ジェミニ先生は眼鏡の奥で何かを堪えるように目を細める。
(ほら見ろ……! これじゃ他の攻略対象が“アリエスに気がある”と誤解して、シリウスルートがぶっ壊れるやん!)
レオは面白そうに目を細める。
「……なるほど。興味深い」
次に向けられた視線は俺だった。
「アリエス。君は?」
胸の奥で、ゲームの知識がざわめく。
――この場で「承諾」すればレオルート直行。
――「辞退」すれば、複数ルートを維持できる。
つまり、ハーレムへの道はまだ閉ざされていない。
俺は一度深呼吸し、表情を整えた。
「……光栄なお誘いですが、僕にはその器も力もありません。
だから――辞退させていただきます」
再び食堂にざわめきが広がる。
レオは短く笑みを浮かべ、背を向けた。
「……二人とも、覚えておこう。期待を裏切らないことだ」
その背中が去っていく。
残された食堂に、ざわめきだけが尾を引いた。
俺は胸の鼓動を必死に抑えながら、心の中で確信する。
――物語はすでに本来の筋から外れ始めている。
だが、まだ終わりではない。
ハーレムルートへの道は、かろうじて繋がっている。
隣でまだ怒りを宿した目をしているシリウスを横目に、
俺はただ「どうにか修正しなければ」と拳を握った。
星ネガは前世であれほどやり込んだゲーム。
序盤の「食堂イベント」は、伝説級の分岐ポイントとしてファンに語られていた。
会長がシリウスに触れ――そして「生徒会への勧誘」が入る。
ここで「承諾すればレオルート確定」「断れば他の攻略者との可能性を残す」。
いわばルートを決定づける最初の分かれ道だった。忘れる訳がない。
けれど今、会長は俺の方へ手を伸ばしていた。
やがてレオは顎から手を離し、食堂全体に響く声で言った。
「――ここ数日、気になる噂を耳にした」
静まり返る場。
「新入生、シリウス・スプリング。
入学直後から真っ直ぐな瞳で人を惹きつけていると」
シリウスが小さく息を呑む。
だがその視線は、決して逸らさなかった。
「そして……もう一人。
己のルームメイトや鬼教師をたじろがせ、不良を黙らせた。
誰よりも自然に人を引き寄せる在校生――アリエス・シェスターク」
食堂にざわめきが走る。
ラスがかつて一掃した「可愛い顔の噂」が消えた後、
代わりに広がっていたのは「不思議と目立つ存在」という別の噂。
それが会長の口から明言された瞬間、否応なく重みを持ってしまった。
そして会長は告げる。
「――シリウス・スプリング。アリエス・シェスターク。
二人を、生徒会に勧誘する」
爆発したようなざわめき。
本来ならここで指名されるのはシリウスだけ。
伝説の「会長ルート分岐」が、俺を巻き込む形に書き換えられてしまった。
「午後の歓迎会で返事を聞かせろ。入るか、入らないか。選択は自由だ」
沈黙。
最初に口を開いたのは、シリウスだった。
「……断ります」
迷いのない声。
食堂全体が凍りつく。
「興味ありません。それに――」
シリウスは俺を一瞬だけ見た。
「……俺の大切な人に、あんなことをした人の誘いなんて、受けません」
(……はぁぁ!? ちょっと待てシリウス!
俺はただ“最初の友達”なだけやろ!?
そんな言い回ししたら、周りから見たら完全に告白やん!)
心臓が跳ねる。
けれどそれは恋の自覚なんかじゃない。
むしろ「攻略対象に勘違いされてルートが崩れる!」という焦燥感だった。
案の定、周囲の反応はすぐに現れた。
ラスはスプーンを握りしめたまま視線を落とし、
スコーピオは低く舌打ちをもらし、
ジェミニ先生は眼鏡の奥で何かを堪えるように目を細める。
(ほら見ろ……! これじゃ他の攻略対象が“アリエスに気がある”と誤解して、シリウスルートがぶっ壊れるやん!)
レオは面白そうに目を細める。
「……なるほど。興味深い」
次に向けられた視線は俺だった。
「アリエス。君は?」
胸の奥で、ゲームの知識がざわめく。
――この場で「承諾」すればレオルート直行。
――「辞退」すれば、複数ルートを維持できる。
つまり、ハーレムへの道はまだ閉ざされていない。
俺は一度深呼吸し、表情を整えた。
「……光栄なお誘いですが、僕にはその器も力もありません。
だから――辞退させていただきます」
再び食堂にざわめきが広がる。
レオは短く笑みを浮かべ、背を向けた。
「……二人とも、覚えておこう。期待を裏切らないことだ」
その背中が去っていく。
残された食堂に、ざわめきだけが尾を引いた。
俺は胸の鼓動を必死に抑えながら、心の中で確信する。
――物語はすでに本来の筋から外れ始めている。
だが、まだ終わりではない。
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