シンデレラ・ゲーム【R-18】

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 シャワーで寝汗を洗い流し、さっぱりした体で大学へ向かう。ペトリコールの匂いはまだ残っているものの昨夜の豪雨が嘘みたいに空は晴れ渡っていた。

「はよっす!」

 肩を叩かれ振り返ると、涼の姿があった。最近はよく駅構内で顔を合わせることが多い。

「うす」
「お、今日は顔色いいじゃん」
「昨日結構寝たから」
「俺もここぞとばかりにめっちゃ寝たわ」

 涼がけらけらと笑う。
ここ数日は色んなことがあったせいか、こうして友人と話すだけで心の負荷がすっと軽くなる。

「あのさ」
「ん?」
「あのゲーム作った先輩ってどんな人?」

 ふと気になったことを涼に聞いてみる。AIとはいえリアル過ぎる演出……あまりにも不可解な点が多いゲームだ。どんな人間が作っているのか純粋に気になっていた。

「んー」

 涼は顎に手を置いて考える素振りをした。

「ちょっと変わってるかな」
「ちょっとってどんくらい?」
「やけに食いついてくるな」

 涼はそんな航大に若干引きながらも、いつもの調子で笑った。

「ゲームの制作者は変わり者が多いんだよ。じゃないと革新的なゲームは作れない」

 涼の自論に、航大はそうですかと返した。

「まあ兄貴もお前も変人だもんな」
「はは、褒め言葉あざーす」
「あ、でも」
「ん?」
「ちょっとサイコパスっぽいかも」
「詳しく」

 涼にずいっと身を寄せると、やめろよあちいと一蹴いっしゅうされる。

「いや、とくにエピソードとかはないんだけどさ。制作してるゲームから不気味な臭いがぷんぷんするって言うか……」

 そう言うと涼は少し顔を曇らせた。涼から見ても先輩の作るゲームは奇天烈きてれつなものなのか。なおさらどんな人物なのか気になるところだ。

「分かった。ありがと」
「なになにどうしたんよ」
「いや、別に」

 涼にゲームのことを話すのはもうちょっと先でいいか……

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