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BL 双星は満ちて欠けて満ちて6
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「あっちょっ……!」
「この綺麗なオッドアイを見ればゆきるだってわかるだろ?」
手を離してくれたかと思えば肩を組んできたカノンは最早口調を普通に戻して、折り畳んだ僕の色グラスを指先で持って軽く振る。
「カノンって!」
取り返そうと手を伸ばしたけどひょいっと眼鏡に逃げられた。
「ゆきるは俺に負けないイケメンだろ? 皆惚れるなよ?」
「いやいやイケメンて何言っちゃってんの。昔は可愛かったかもしれないけど今は凡人だよ」
全くもう、そんなわけないしそこはどうでも……って、え、あれ? 何か女子達の目の色が変わってる?
「え、王子じゃん……」
「やっば素顔エグ~、隠してたとか反則だよね。あの二人顔面偏差値とんでもないわー」
「強面かと思ってたのにめちゃ予想外、かっこいい~」
「……ええと、あの子達実は仕込み?」
僕が思い切り不審がるとカノンは残念そうな目になった。
「そこ無自覚ってマジかよ……。苦労しそうだなこれは」
「何だよ僕が苦労しそうって、それ人相学の観点から?」
「お前なあ……」
余程アホな発言だったのかカノンは面食らったような変な顔で嘆息すると、何故か彼のウィッグを僕に被せてきた。ロン毛仕様だから顔に掛かって視界が遮られる。
「え? は?」
「……予想以上だしこんな事するんじゃなかった」
「全く何なのさ?」
毛が鼻の穴に入りそうで慌ててウィッグを取ったけど、そうやって視界が元に戻れば嫌でも皆の顔が目に入る。
「な、何だろうねこのステーキにされる前の憐れな子ウサギになった気分は?」
彼女達は仕込みでも何でもなく本当に、怖い感じのする敬遠すべく相手ってカテゴリーから一転して恋愛対象ってカテゴリーにチェンジされたってわけ?
え……まさか、マジでそうなの? でも何で? ただカノンの知り合いだってなっただけで?
「ね、ねえもしや女子達はさ、僕と付き合えばカノンとも近付けるとか計算してる感じなのかな?」
他に訊く相手が居なくて仕方がなくこそっとカノンに訊ねれば、彼はまたもやすこぶる残念そうな目をしてから、何が可笑しいのか笑うようにその目を細めた。
「まあそういう子はいても少数だろうから大丈夫、そう怖がるなって」
「……怖がってなんかないよ。女の子ってのは可愛い生き物じゃん」
「……あっそ」
そこで何故か少し声音を低くして、カノンが僕に色グラスを返してきた。僕が大人しく掛け直すと組んでいた肩を今度はぐっと抱き寄せる。もう本当に何なんだ……。
「じゃあ俺は? 可愛いか?」
すぐ横からにんまりとしてウィンクまでされて正直ちょっと付いていけない。
「いきなり何を言い出すんだか」
「何だよ釣れないなあ。皆はどう思う? 俺って可愛い?」
教室内からは女子達の「可愛い~」「イケメン~」とか嬉しそうな声が返された。
「ならさ、ゆきるはー?」
同じように「カッコいい~」「眼福~」とか女子の声。え、何だろうねこの展開は。
「ははっありがとーな皆! ゆきるはこの通りハイスペックイケメンだけど、こいつに手を出したら駄目だぞ?」
まだイケメンとか言ってるし。しかも頭をわしっと掴まれてカノンの側頭部にコツンとされる。いやいやどうしてこんな密着する必要が?
……って、え? 何? 女子達が妙に嬉しそうなんですけど。
皆の前で突き飛ばすわけにもいかなくて、僕は口の中で平常心平常心と唱えつつ内心でだらだらと気まずい汗を垂らす。隙を見てやんわりと離れよう。
だけど、しかし、でも、僕の望みは一八〇度反対方向に転がった。
「――だってゆきるは俺のだから」
笑い含んだ余裕の宣言と、直後の頬へのキス。
キス。そうキス。ほっぺにだけど、あのドラマですらどこにもしなかった、キスをしてきた。
「……………………は?」
間抜けな声と一緒に目をミクロの点にする僕は、情けなくも頭が真っ白になった。大樹は顎を落としている。
そんな僕に、近しい距離を利用してカノンが僕にしか届かないだろう極々小声でこう囁いてくる。
「俺さ、あの手紙を読んで、嘘じゃなかったお前の気持ちを知って、すごく自分は馬鹿だったって後悔したんだ」
「え?」
あの手紙って言われて考えられるのは一つしかない。でも今ここで何故に過去話?
それよりマイク付けてないの、音声拾われるかもだよね、なんて心配までしながらも彼の言わんとするものの予想すらつかずに戸惑っていると、カノンは一旦学生達の方に顔を向けて「ああ違った。タツキ、は俺のだ」なんて役柄の方の名に訂正して舌をぺろりと出してから、僕をハグする。
今度は、ハグ!
まあドラマでもハグはしたけどね。教室内からはまた、主に女子学生達からの嬉しそうな黄色い声が上がった。
そいで以て益々呆然となる僕の耳に向かって、彼はハグって近さを利用して尚も囁いてくる。
「疑う気持ちが大きくて否定して試すしかできなくて、卑怯な臆病者だったんだ。それにお前が俺の言う通りだったって平気そうにしてたから、だから諦めようと思った。気付いてないふりしてたけどお前が俺を避けてたのはわかってたから、疎遠になったのをこれ幸いとも思った。本当は予備校の寮に乗り込んでゆきるに会って俺の気持ちを言いたかったけど、まだ駄目だって我慢したんだ。仕事仕事仕事仕事って打ち込んでちょっとやそっとじゃ折れないイメージを築いて、どう転んでも起き上がれるくらいになってからって。だから俺としてはまだもうちょっと時間が欲しい」
凄く早口だったけど全部聞き取れた。さすがは滑舌いいね!
っていうか、まさか寮の場所を知ってた!?
それに時間が欲しいって何の?
それよか、ホントにマイク対策は大丈夫なわけ? 長々とした個人的な台詞入ったらまずいでしょ。ああ、後で編集するの? まあ僕のわたわたした所はカットしてほしいけど。
カノンはまた皆へと笑顔を向ける。
「そう言うわけだから、タツキとレン、俺達の邪魔はしないでくれよ。是非俺達の初々しい過去作を観てくれな。――そして、これから撮る新作ドラマもよろしくお願いします」
最後は僕から離れて中央に一人立ち、より声を張っての再び畏まっての締め括り。勢いよく頭を下げての見事なまでの宣伝だった。きっと純愛ドラマはヒットして、再び僕達のBLドラマは少し再燃するだろう。それだけの影響力を今のカノンは持っている。
影響力……ああ何だそうか。
僕はそのための出汁か。
確かに、ただ形式的に宣伝するより「えっまさかの危ない恋のカミングアウト!?」って興味を誘うような展開に持って行って盛り上げてから、ああ何だ昔のドラマの役の延長ねって種明かしをして納得させて、その上でガツンと本命の宣伝をすれば印象にも残り易いし期待度も上がるって寸法だろう。
ははっ何て巧みな演技と印象操作。さすがはカノンだよ。
生身のカノンに触れて接して、心の底に埋めて踏み固めていた僕の恋はゾンビみたいに地面から手を突き出した。
歓喜してしまった自分に反吐が出る。
それでも僕はタツキみたいにすぐに泣いたり怒ったり喜んだりなんてせずに感情を抑え込んで表情を崩さずにいた。無論ラーメン店でしたような危険な咄嗟の挙動もなしだ。
きっとこの場面はどこかにカメラが仕込んであって、後で放送しても良いかって僕はお伺いを立てられるんだろう。こうも上手く運んだ場面を目の当たりにさせられて、ぶっつけ本番で大成功した場面を見せられて、この業界にいた僕はそう訊かれたら頷かざるを得ない。僕にはこの撮影を台無しにすると同義の断る勇気はなかった。
踏み台のような扱いには屈辱にも似た感情が腹の底を散々駆け回るけど、演技の仮面の下で耐えて色グラスを外す。スマイルスマイル。
カノンが驚いたように瞬いた。
「ええと、カノンからの紹介にもあったように、僕はあのタツキ役だったゆきるなんだ。だからこそ、僕からも皆には頼むよ。僕達のドラマとそしてカノンの新作をどうかよろしくね」
笑顔の仮面を張り付けて、一人のエンターテイナーとして久しぶりに偽りを演じ続けた。
カノンのせいで。
カノンのために。
ああ、本当に、どうしようもない。
今日の彼のどこまでが本当でどこまでが嘘の言葉なんだろう。
隣でマイペースに振る舞う男へと改めて強く思う。
どんなに誤魔化して遠ざけてみても、僕は彼が最高に好きで最高に嫌いだ、と。
ここでようやく室内に備え付けのスピーカーから始業の鐘が響いた。
教授様の講義はやや遅れて始まった。事前に教授様にも説明はなされていて撮影の許可は取ってあったようだった。
一台に三人は並べる大教室の長机で、僕は右にカノン、左に大樹って席並びで教授様の講義を受けたけど、全っ然講義内容は頭に入って来なかった。
だってさ、何故にカノンはよりにもよって隣に座るの?
さっきまでいたとこでいいじゃんね。
しかもわけがわからなかったのは、講義を体験したいとか言っていた割には頬杖を突いて僕の方をジッと見つめていた。申し訳程度に時たま教壇に目をやるだけだ。全然雰囲気味わってないよねー。もうボーイズラブ的な絡みは要らないと思うけど?
まあ頬に刺さる視線はともかく、講義が終了したら彼には訊きたい事が目白押しだ。
だけど生憎空き時間になってカノンにファンが殺到するのを回避するためか、彼は講義の途中でマネージャーらしき人といなくなってしまった。
きっと後は当初の撮影予定までどこかで待機している気だろう。悩むレベルで真剣に質問事項の順番を考えていた僕としては拍子抜けもいい所だよ。
ただ、カノンは去り際にボソリと「またすぐにな」なんて意味深な言葉を置いてった。
その日はもう大学構内でカノンの顔を見る機会はなかった。
僕はわざわざ撮影を見学する気はなかったし、撮影時間と重なる別の講義に顔を出していた。教授様の講義が終わって女子達からは大いに質問攻めにもされたけど、そもそも先のは番宣だし僕はもう一般人だから多くは知らないともっともそうな言い訳を盾にしたよ。
そうしたら今度は僕の連絡先を教えて攻撃に変わって辟易としていたら、途中で大樹が逞しくも僕を連れ出してくれたっけ。
……はは、女の子って可愛いけど時々怖いね。
普段は女の子とお喋りしてえ~って嘆いてるのに、僕のために折角僕の友人ポジションで乗じれる場面で煩悩を捨て去ってくれた大樹には感謝しかない。しばらくボディガードをしてもらおうか、なんて結構本気で考えちゃったよ。きっと様になる。
その日は塾のバイトを終えてやや遅くに帰宅した。
カノンとの再会は僕の凪いでいた心を確実に波立てた。
またすぐにって彼の言葉も引っ掛かる。
そしてもう一つ、僕は妙な予感と共に今夜こそ居候の鈴木君と会える気がした。
家の車庫に車を停め、僅かな緊張を感じながら玄関の鍵を開ける。
「ただいまー」
両親はまだ寝ていないだろうけど、一応は控えめな声を掛けてさっさと自室に直行しようと階段に足を掛けた時だ。
「お帰りなさいゆきる、夕食は? もう上に行っちゃうの?」
車の音を聞きつけて帰宅をわかっていたんだろう、一階廊下からリビングに続くドアが開いて母親が姿を現すと僕を呼びとめた。
「あ、うん、ただいま。ご飯はいつもと同じでもう食べたよ。何か用事だった? とりあえず荷物置いたらシャワー浴びたいし下りるけど」
「用事って言うかねえ、――カノン君もさっき帰って来て、今こっちで一緒にテレビ観てるのよ。ってああそうそう、実は何とうちに同居してるのはカノン君なの」
「へえ……カノンが……」
「そうなの、カノン君なの。ゆきるまだ知らなかったんでしょう?」
「ああ、まあ」
「半月、ううんもう二十日も経つのにあなた達実はまだこの家の中で一度も会ってなかったんですってね。お母さん全然知らなかったから、とっくにお互いに再会を喜んだと思ってお膳立てとかしなかったじゃないのよもう。そういう話題にもならなかったしねえ。ついさっきカノン君から教えられてびっくりしたんだから。ゆきるも住んでるのは誰なのって訊いてくれたら良かったのにー」
「あはは、ごめん」
「今日大学で会ったんだってねえ」
「ああ、うん」
ちょっとだけ拗ねたような母親はもうはっきりと口にしていた。
カノン、と。
鈴木君と情報の一部を隠していたのは僕へのサプライズのつもりだったのかもしれない。十中八九そうだろう。
正直言うと、もう十分に驚いたよ。だからサプライズはある意味じゃ大成功だ。
「ユキコおばさん、ゆきる帰って来たんですか?」
ああ……。
僕は危うく息を止めそうになった。まだ玄関だしと気を抜いていた所に声がして、それくらいに動揺した。
ユキコは母親の名前だ。
その母親の後ろからやけに寛いだような様子で廊下に出てきたのは、無害な顔をしてその実すごい腹黒じゃんって感じの面倒な相手。
カノン。
芸名、御堂カノン。
本名、鈴木カノン。
やっぱり君か。
「お帰りゆきる。学校でぶり」
母親の前だからか昼間のやや強引だった積極性は控えめなものにして、紳士的なにこやかな笑みで片手を上げてカノンは僕に相対した。
……良い根性をしてるよね。彼は僕が何も知らないでいたのをその整った微笑の下でほくそ笑んでいたのかもしれない。
ところで、一体何の目的でこの家に来たんだ?
階段の一段目に掛けていた足を戻して二人に向き直る。何かの仕返しのためって線は昼間の展開からだいぶ薄いと思っている。まあ利用はされたけどそこは大目にみるよ。腹が立たないわけじゃない。彼の抱える事情も理解できるからだ。芸能業界は人情だけでどうにかなる場所じゃない。極端な言い方をすればヒットを生めなければ次は無い。人によっちゃ反論はあるかもしれないけど少なくとも僕自身はそう思っている。
予想通りにカノンの昼の立ち回りはドッキリとかモニタリング的な企画で、僕を再びメディアに引き摺り出したあれこれは後日特番か何かで放映される予定だそうだ。
教授様の講義終了後にスタッフの人からそう説明があった。顔が映るのがNGな人だけはぼかし処理をしてもらうという。
別に顔映してもいいですよー、とスタッフの人へと愛想良く対応をした僕だったけど内心は渋々承諾したってのが真実だ。人前に出るのに抵抗はないけど、事前の相談もないのは気分の良いものじゃなかったしね。
カノンには後でそこの所をきっちり文句言ってやる。
「ただいま、カノン。まさか居候が君だったなんてね。今知って学校で会った時以上にビックリだよ」
「ゆきるのそれで驚いてる顔なのか?」
「薄らだけどもしかして君かもっては思ってたから」
「へえ、それは光栄だな」
「……白々しいな。君がまたあとでって言ってきたからだよ」
「ハハハそうだっけ?」
昼間は皆の前だし愛想良く振る舞ったけど、今は一日の疲れもあり億劫になっていたのもあって僕は少し気持ちに正直に仏頂面だったかもしれない。カノンは微かに眉を動かすと僕のすぐ傍に立って手を動かした。
「まあとにかくバイトお疲れ。辛気臭い顔してないでスマイルスマイル」
「…………」
何をするかと思えば僕の口の両側に指を当ててぐっと押し上げた。辛気臭いって一体誰のせいでしょうかね!
横じゃ母親が「久しぶりでもやっぱり仲が良いのねえ」なんてしみじみ呟いてたけど、どこか面白がるようなカノンの声に僕のこめかみには青筋が浮いていた。前髪に隠れて見えないだろうけどね。
学校での時もそうだけど、ちょっと馴れ馴れしくない? でもこっちもフレンドリーな笑みは崩さない。憤りはおくびにも出さない。
大体さ、カノンは気まずくないの?
もう勝手にしろって思うよ。君の意図は知らないけど僕は僕の私生活を邪魔させない。
調子狂うしなるべく彼には関わらないようにしよう。
「うちじゃ色々と不便な部分もあるだろうけど、自分の家みたいに自由に寛いでほしい。これからもよろしくカノン。じゃあ僕は荷物置きに一旦上がるから」
そう言って軽やかに階段を上っていく僕の足音のリズムを乱すように途中から別の足音が入った。
その音は僕のよりテンポも速く、もう階段の終わり付近にいた僕を追ってくるかのようだった。
カノンだ。
リビングに戻ればいいのに。ああ自分の部屋に何かを取りに来たのか?
とは言え僕は彼に構わず二階に上がり切って自室の方に曲がる。廊下の左の方に。
カノンの足音も程なく二階に到達し、僕は背中でその音を聞く。
自分でも判然としない微かな嘆息のようなものが口から出た直後、本来なら反対方向へと遠ざかるはずの足音が秒で近付いた。
「ゆきる……!」
何だと訝しく思う暇もなく、酷く抑えた声と同時に右肩にだけ掛けたリュックごと背後からいきなり抱き締められた。
「――!?」
叫びたかったけどここで大声なんて出したら両親に気付かれると思ったら、そうできなかった。ぐっと堪えて拳と腹に力を入れる。
仰天と困惑、そして嬉しいような切なさでバクバクバクバクと心臓がうるさい。間にリュックがあって良かったって心底思った。
「ちょっと何? 苦しいんだけど離れてくれない?」
僕は無駄に動かず無抵抗のままに小声で猛抗議。けど極度の狼狽とは裏腹なその低い声は随分と冷静な声に聞こえたかもしれない。聞く人によったら冷たく怒ったようにも。
「ゆきる、昼間は悪かった。怒らないでくれ」
現にカノンはどこか落ち込んだような声を出してぎゅっと腕の力を強めた。
僕の口からハァと溜め息が漏れる。
わああっ、思わず悩ましげな吐息が出ちゃったよ!
「……そう思うなら離れてほしいんだけど」
失態を必死に誤魔化そうって焦ったら多少乱暴な口調になった。カノンには溜め息は不機嫌な嘆息に、荒い語気は苛立ちに聞こえたのかもしれない。
彼は意外なくらいに僕から素直に離れた。
「この綺麗なオッドアイを見ればゆきるだってわかるだろ?」
手を離してくれたかと思えば肩を組んできたカノンは最早口調を普通に戻して、折り畳んだ僕の色グラスを指先で持って軽く振る。
「カノンって!」
取り返そうと手を伸ばしたけどひょいっと眼鏡に逃げられた。
「ゆきるは俺に負けないイケメンだろ? 皆惚れるなよ?」
「いやいやイケメンて何言っちゃってんの。昔は可愛かったかもしれないけど今は凡人だよ」
全くもう、そんなわけないしそこはどうでも……って、え、あれ? 何か女子達の目の色が変わってる?
「え、王子じゃん……」
「やっば素顔エグ~、隠してたとか反則だよね。あの二人顔面偏差値とんでもないわー」
「強面かと思ってたのにめちゃ予想外、かっこいい~」
「……ええと、あの子達実は仕込み?」
僕が思い切り不審がるとカノンは残念そうな目になった。
「そこ無自覚ってマジかよ……。苦労しそうだなこれは」
「何だよ僕が苦労しそうって、それ人相学の観点から?」
「お前なあ……」
余程アホな発言だったのかカノンは面食らったような変な顔で嘆息すると、何故か彼のウィッグを僕に被せてきた。ロン毛仕様だから顔に掛かって視界が遮られる。
「え? は?」
「……予想以上だしこんな事するんじゃなかった」
「全く何なのさ?」
毛が鼻の穴に入りそうで慌ててウィッグを取ったけど、そうやって視界が元に戻れば嫌でも皆の顔が目に入る。
「な、何だろうねこのステーキにされる前の憐れな子ウサギになった気分は?」
彼女達は仕込みでも何でもなく本当に、怖い感じのする敬遠すべく相手ってカテゴリーから一転して恋愛対象ってカテゴリーにチェンジされたってわけ?
え……まさか、マジでそうなの? でも何で? ただカノンの知り合いだってなっただけで?
「ね、ねえもしや女子達はさ、僕と付き合えばカノンとも近付けるとか計算してる感じなのかな?」
他に訊く相手が居なくて仕方がなくこそっとカノンに訊ねれば、彼はまたもやすこぶる残念そうな目をしてから、何が可笑しいのか笑うようにその目を細めた。
「まあそういう子はいても少数だろうから大丈夫、そう怖がるなって」
「……怖がってなんかないよ。女の子ってのは可愛い生き物じゃん」
「……あっそ」
そこで何故か少し声音を低くして、カノンが僕に色グラスを返してきた。僕が大人しく掛け直すと組んでいた肩を今度はぐっと抱き寄せる。もう本当に何なんだ……。
「じゃあ俺は? 可愛いか?」
すぐ横からにんまりとしてウィンクまでされて正直ちょっと付いていけない。
「いきなり何を言い出すんだか」
「何だよ釣れないなあ。皆はどう思う? 俺って可愛い?」
教室内からは女子達の「可愛い~」「イケメン~」とか嬉しそうな声が返された。
「ならさ、ゆきるはー?」
同じように「カッコいい~」「眼福~」とか女子の声。え、何だろうねこの展開は。
「ははっありがとーな皆! ゆきるはこの通りハイスペックイケメンだけど、こいつに手を出したら駄目だぞ?」
まだイケメンとか言ってるし。しかも頭をわしっと掴まれてカノンの側頭部にコツンとされる。いやいやどうしてこんな密着する必要が?
……って、え? 何? 女子達が妙に嬉しそうなんですけど。
皆の前で突き飛ばすわけにもいかなくて、僕は口の中で平常心平常心と唱えつつ内心でだらだらと気まずい汗を垂らす。隙を見てやんわりと離れよう。
だけど、しかし、でも、僕の望みは一八〇度反対方向に転がった。
「――だってゆきるは俺のだから」
笑い含んだ余裕の宣言と、直後の頬へのキス。
キス。そうキス。ほっぺにだけど、あのドラマですらどこにもしなかった、キスをしてきた。
「……………………は?」
間抜けな声と一緒に目をミクロの点にする僕は、情けなくも頭が真っ白になった。大樹は顎を落としている。
そんな僕に、近しい距離を利用してカノンが僕にしか届かないだろう極々小声でこう囁いてくる。
「俺さ、あの手紙を読んで、嘘じゃなかったお前の気持ちを知って、すごく自分は馬鹿だったって後悔したんだ」
「え?」
あの手紙って言われて考えられるのは一つしかない。でも今ここで何故に過去話?
それよりマイク付けてないの、音声拾われるかもだよね、なんて心配までしながらも彼の言わんとするものの予想すらつかずに戸惑っていると、カノンは一旦学生達の方に顔を向けて「ああ違った。タツキ、は俺のだ」なんて役柄の方の名に訂正して舌をぺろりと出してから、僕をハグする。
今度は、ハグ!
まあドラマでもハグはしたけどね。教室内からはまた、主に女子学生達からの嬉しそうな黄色い声が上がった。
そいで以て益々呆然となる僕の耳に向かって、彼はハグって近さを利用して尚も囁いてくる。
「疑う気持ちが大きくて否定して試すしかできなくて、卑怯な臆病者だったんだ。それにお前が俺の言う通りだったって平気そうにしてたから、だから諦めようと思った。気付いてないふりしてたけどお前が俺を避けてたのはわかってたから、疎遠になったのをこれ幸いとも思った。本当は予備校の寮に乗り込んでゆきるに会って俺の気持ちを言いたかったけど、まだ駄目だって我慢したんだ。仕事仕事仕事仕事って打ち込んでちょっとやそっとじゃ折れないイメージを築いて、どう転んでも起き上がれるくらいになってからって。だから俺としてはまだもうちょっと時間が欲しい」
凄く早口だったけど全部聞き取れた。さすがは滑舌いいね!
っていうか、まさか寮の場所を知ってた!?
それに時間が欲しいって何の?
それよか、ホントにマイク対策は大丈夫なわけ? 長々とした個人的な台詞入ったらまずいでしょ。ああ、後で編集するの? まあ僕のわたわたした所はカットしてほしいけど。
カノンはまた皆へと笑顔を向ける。
「そう言うわけだから、タツキとレン、俺達の邪魔はしないでくれよ。是非俺達の初々しい過去作を観てくれな。――そして、これから撮る新作ドラマもよろしくお願いします」
最後は僕から離れて中央に一人立ち、より声を張っての再び畏まっての締め括り。勢いよく頭を下げての見事なまでの宣伝だった。きっと純愛ドラマはヒットして、再び僕達のBLドラマは少し再燃するだろう。それだけの影響力を今のカノンは持っている。
影響力……ああ何だそうか。
僕はそのための出汁か。
確かに、ただ形式的に宣伝するより「えっまさかの危ない恋のカミングアウト!?」って興味を誘うような展開に持って行って盛り上げてから、ああ何だ昔のドラマの役の延長ねって種明かしをして納得させて、その上でガツンと本命の宣伝をすれば印象にも残り易いし期待度も上がるって寸法だろう。
ははっ何て巧みな演技と印象操作。さすがはカノンだよ。
生身のカノンに触れて接して、心の底に埋めて踏み固めていた僕の恋はゾンビみたいに地面から手を突き出した。
歓喜してしまった自分に反吐が出る。
それでも僕はタツキみたいにすぐに泣いたり怒ったり喜んだりなんてせずに感情を抑え込んで表情を崩さずにいた。無論ラーメン店でしたような危険な咄嗟の挙動もなしだ。
きっとこの場面はどこかにカメラが仕込んであって、後で放送しても良いかって僕はお伺いを立てられるんだろう。こうも上手く運んだ場面を目の当たりにさせられて、ぶっつけ本番で大成功した場面を見せられて、この業界にいた僕はそう訊かれたら頷かざるを得ない。僕にはこの撮影を台無しにすると同義の断る勇気はなかった。
踏み台のような扱いには屈辱にも似た感情が腹の底を散々駆け回るけど、演技の仮面の下で耐えて色グラスを外す。スマイルスマイル。
カノンが驚いたように瞬いた。
「ええと、カノンからの紹介にもあったように、僕はあのタツキ役だったゆきるなんだ。だからこそ、僕からも皆には頼むよ。僕達のドラマとそしてカノンの新作をどうかよろしくね」
笑顔の仮面を張り付けて、一人のエンターテイナーとして久しぶりに偽りを演じ続けた。
カノンのせいで。
カノンのために。
ああ、本当に、どうしようもない。
今日の彼のどこまでが本当でどこまでが嘘の言葉なんだろう。
隣でマイペースに振る舞う男へと改めて強く思う。
どんなに誤魔化して遠ざけてみても、僕は彼が最高に好きで最高に嫌いだ、と。
ここでようやく室内に備え付けのスピーカーから始業の鐘が響いた。
教授様の講義はやや遅れて始まった。事前に教授様にも説明はなされていて撮影の許可は取ってあったようだった。
一台に三人は並べる大教室の長机で、僕は右にカノン、左に大樹って席並びで教授様の講義を受けたけど、全っ然講義内容は頭に入って来なかった。
だってさ、何故にカノンはよりにもよって隣に座るの?
さっきまでいたとこでいいじゃんね。
しかもわけがわからなかったのは、講義を体験したいとか言っていた割には頬杖を突いて僕の方をジッと見つめていた。申し訳程度に時たま教壇に目をやるだけだ。全然雰囲気味わってないよねー。もうボーイズラブ的な絡みは要らないと思うけど?
まあ頬に刺さる視線はともかく、講義が終了したら彼には訊きたい事が目白押しだ。
だけど生憎空き時間になってカノンにファンが殺到するのを回避するためか、彼は講義の途中でマネージャーらしき人といなくなってしまった。
きっと後は当初の撮影予定までどこかで待機している気だろう。悩むレベルで真剣に質問事項の順番を考えていた僕としては拍子抜けもいい所だよ。
ただ、カノンは去り際にボソリと「またすぐにな」なんて意味深な言葉を置いてった。
その日はもう大学構内でカノンの顔を見る機会はなかった。
僕はわざわざ撮影を見学する気はなかったし、撮影時間と重なる別の講義に顔を出していた。教授様の講義が終わって女子達からは大いに質問攻めにもされたけど、そもそも先のは番宣だし僕はもう一般人だから多くは知らないともっともそうな言い訳を盾にしたよ。
そうしたら今度は僕の連絡先を教えて攻撃に変わって辟易としていたら、途中で大樹が逞しくも僕を連れ出してくれたっけ。
……はは、女の子って可愛いけど時々怖いね。
普段は女の子とお喋りしてえ~って嘆いてるのに、僕のために折角僕の友人ポジションで乗じれる場面で煩悩を捨て去ってくれた大樹には感謝しかない。しばらくボディガードをしてもらおうか、なんて結構本気で考えちゃったよ。きっと様になる。
その日は塾のバイトを終えてやや遅くに帰宅した。
カノンとの再会は僕の凪いでいた心を確実に波立てた。
またすぐにって彼の言葉も引っ掛かる。
そしてもう一つ、僕は妙な予感と共に今夜こそ居候の鈴木君と会える気がした。
家の車庫に車を停め、僅かな緊張を感じながら玄関の鍵を開ける。
「ただいまー」
両親はまだ寝ていないだろうけど、一応は控えめな声を掛けてさっさと自室に直行しようと階段に足を掛けた時だ。
「お帰りなさいゆきる、夕食は? もう上に行っちゃうの?」
車の音を聞きつけて帰宅をわかっていたんだろう、一階廊下からリビングに続くドアが開いて母親が姿を現すと僕を呼びとめた。
「あ、うん、ただいま。ご飯はいつもと同じでもう食べたよ。何か用事だった? とりあえず荷物置いたらシャワー浴びたいし下りるけど」
「用事って言うかねえ、――カノン君もさっき帰って来て、今こっちで一緒にテレビ観てるのよ。ってああそうそう、実は何とうちに同居してるのはカノン君なの」
「へえ……カノンが……」
「そうなの、カノン君なの。ゆきるまだ知らなかったんでしょう?」
「ああ、まあ」
「半月、ううんもう二十日も経つのにあなた達実はまだこの家の中で一度も会ってなかったんですってね。お母さん全然知らなかったから、とっくにお互いに再会を喜んだと思ってお膳立てとかしなかったじゃないのよもう。そういう話題にもならなかったしねえ。ついさっきカノン君から教えられてびっくりしたんだから。ゆきるも住んでるのは誰なのって訊いてくれたら良かったのにー」
「あはは、ごめん」
「今日大学で会ったんだってねえ」
「ああ、うん」
ちょっとだけ拗ねたような母親はもうはっきりと口にしていた。
カノン、と。
鈴木君と情報の一部を隠していたのは僕へのサプライズのつもりだったのかもしれない。十中八九そうだろう。
正直言うと、もう十分に驚いたよ。だからサプライズはある意味じゃ大成功だ。
「ユキコおばさん、ゆきる帰って来たんですか?」
ああ……。
僕は危うく息を止めそうになった。まだ玄関だしと気を抜いていた所に声がして、それくらいに動揺した。
ユキコは母親の名前だ。
その母親の後ろからやけに寛いだような様子で廊下に出てきたのは、無害な顔をしてその実すごい腹黒じゃんって感じの面倒な相手。
カノン。
芸名、御堂カノン。
本名、鈴木カノン。
やっぱり君か。
「お帰りゆきる。学校でぶり」
母親の前だからか昼間のやや強引だった積極性は控えめなものにして、紳士的なにこやかな笑みで片手を上げてカノンは僕に相対した。
……良い根性をしてるよね。彼は僕が何も知らないでいたのをその整った微笑の下でほくそ笑んでいたのかもしれない。
ところで、一体何の目的でこの家に来たんだ?
階段の一段目に掛けていた足を戻して二人に向き直る。何かの仕返しのためって線は昼間の展開からだいぶ薄いと思っている。まあ利用はされたけどそこは大目にみるよ。腹が立たないわけじゃない。彼の抱える事情も理解できるからだ。芸能業界は人情だけでどうにかなる場所じゃない。極端な言い方をすればヒットを生めなければ次は無い。人によっちゃ反論はあるかもしれないけど少なくとも僕自身はそう思っている。
予想通りにカノンの昼の立ち回りはドッキリとかモニタリング的な企画で、僕を再びメディアに引き摺り出したあれこれは後日特番か何かで放映される予定だそうだ。
教授様の講義終了後にスタッフの人からそう説明があった。顔が映るのがNGな人だけはぼかし処理をしてもらうという。
別に顔映してもいいですよー、とスタッフの人へと愛想良く対応をした僕だったけど内心は渋々承諾したってのが真実だ。人前に出るのに抵抗はないけど、事前の相談もないのは気分の良いものじゃなかったしね。
カノンには後でそこの所をきっちり文句言ってやる。
「ただいま、カノン。まさか居候が君だったなんてね。今知って学校で会った時以上にビックリだよ」
「ゆきるのそれで驚いてる顔なのか?」
「薄らだけどもしかして君かもっては思ってたから」
「へえ、それは光栄だな」
「……白々しいな。君がまたあとでって言ってきたからだよ」
「ハハハそうだっけ?」
昼間は皆の前だし愛想良く振る舞ったけど、今は一日の疲れもあり億劫になっていたのもあって僕は少し気持ちに正直に仏頂面だったかもしれない。カノンは微かに眉を動かすと僕のすぐ傍に立って手を動かした。
「まあとにかくバイトお疲れ。辛気臭い顔してないでスマイルスマイル」
「…………」
何をするかと思えば僕の口の両側に指を当ててぐっと押し上げた。辛気臭いって一体誰のせいでしょうかね!
横じゃ母親が「久しぶりでもやっぱり仲が良いのねえ」なんてしみじみ呟いてたけど、どこか面白がるようなカノンの声に僕のこめかみには青筋が浮いていた。前髪に隠れて見えないだろうけどね。
学校での時もそうだけど、ちょっと馴れ馴れしくない? でもこっちもフレンドリーな笑みは崩さない。憤りはおくびにも出さない。
大体さ、カノンは気まずくないの?
もう勝手にしろって思うよ。君の意図は知らないけど僕は僕の私生活を邪魔させない。
調子狂うしなるべく彼には関わらないようにしよう。
「うちじゃ色々と不便な部分もあるだろうけど、自分の家みたいに自由に寛いでほしい。これからもよろしくカノン。じゃあ僕は荷物置きに一旦上がるから」
そう言って軽やかに階段を上っていく僕の足音のリズムを乱すように途中から別の足音が入った。
その音は僕のよりテンポも速く、もう階段の終わり付近にいた僕を追ってくるかのようだった。
カノンだ。
リビングに戻ればいいのに。ああ自分の部屋に何かを取りに来たのか?
とは言え僕は彼に構わず二階に上がり切って自室の方に曲がる。廊下の左の方に。
カノンの足音も程なく二階に到達し、僕は背中でその音を聞く。
自分でも判然としない微かな嘆息のようなものが口から出た直後、本来なら反対方向へと遠ざかるはずの足音が秒で近付いた。
「ゆきる……!」
何だと訝しく思う暇もなく、酷く抑えた声と同時に右肩にだけ掛けたリュックごと背後からいきなり抱き締められた。
「――!?」
叫びたかったけどここで大声なんて出したら両親に気付かれると思ったら、そうできなかった。ぐっと堪えて拳と腹に力を入れる。
仰天と困惑、そして嬉しいような切なさでバクバクバクバクと心臓がうるさい。間にリュックがあって良かったって心底思った。
「ちょっと何? 苦しいんだけど離れてくれない?」
僕は無駄に動かず無抵抗のままに小声で猛抗議。けど極度の狼狽とは裏腹なその低い声は随分と冷静な声に聞こえたかもしれない。聞く人によったら冷たく怒ったようにも。
「ゆきる、昼間は悪かった。怒らないでくれ」
現にカノンはどこか落ち込んだような声を出してぎゅっと腕の力を強めた。
僕の口からハァと溜め息が漏れる。
わああっ、思わず悩ましげな吐息が出ちゃったよ!
「……そう思うなら離れてほしいんだけど」
失態を必死に誤魔化そうって焦ったら多少乱暴な口調になった。カノンには溜め息は不機嫌な嘆息に、荒い語気は苛立ちに聞こえたのかもしれない。
彼は意外なくらいに僕から素直に離れた。
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