運命の息吹

梅川 ノン

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11章

ルシアの蘇り

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 アレクシーとルシアが番になった事実は、奇跡の目撃者以外では、王妃と、フェリックスとルシアの姉でありフランソワの母でもあるステク公爵夫人に告げられた。これで、国王とルシアの番関係を知っている者は、大方ルシアが新たに王太子アレクシーの番になったことを知った。
 二人の、とりわけ王妃の驚きは大きかった。衝撃を受けたと言ってよかった。運命とは、それほどのものなのか?!
 王妃はルシアに対して思うことはあっても、その経緯を聞き、国王も認めたと聞けば、自分も認めざる負えない。
 父王の番を、息子がなど、倫理的にどうかとも思う。それがアレクシーの傷にならないかとも思ったが、どうせルシアの立場は公にはならないと、自分を納得させた。
 
 もう一人のステク公爵夫人は、息子のフランソワからその出来事を聞いた時、まるでおとぎ話のようだと思った。その場に自分がいなかったことを心から惜しんだ。なにやら、一生の不覚のように思えた。
 フェリックスの姉としては、フェリックスを気の毒に思うが、もう一人の弟であるルシアに対しては、おとぎ話のヒロインのようで、羨ましいと思った。早く直接おとぎ話の主人公たちに会いたいと思った。現実的なフランソワに似合わない、乙女のような人だった。

 ルシアは、奥の宮に帰ってきた。突然の離宮行きから三年の月日がたっていた。離宮での生活も楽しかったが、帰ってくるとここは、懐かしい我が家だった。
 亡き両親と思い出が詰まっている。思い出と言えば、フェリックスとの思い出も多い。
 ルシアは、フェリックスに対して、今まで愛し守ってもらったことの礼を、心から述べた。そして、アレクシーの番になったことを心から詫びた。
 真剣に頭を下げて詫びるルシアを、フェリックスは、優しく抱きしめアレクシーと幸せになるようにと告げる。
 ルシアはフェリックスの胸に抱かれ泣いた。しかしその時既に、フェリックスとルシアにあるのは肉親としての情だった。
 ルシアとフェリックスの関係は、番から兄弟に変わっていたのだ。ルシアはアレクシーの番だった。

 フェリックスは、アレクシーに奥の宮の権利を譲ると告げた。今まで通りルシアを住まわせ、そなたが通うとよいとのことだった。父としての温情だった。
 ルシアに対しては、一株の寂しさはあるものの吹っ切れば幸せを願った。元々血の繋がった弟だ。息子と弟、二人の幸せを見守ってやろうとの思いに切り替えていた。

 アレクシーは、父王の温情をありがたく受けた。ルシアの処遇に関して思っていることはあったが、当面は奥の宮で暮らすのが最善だろうと思った。
 ルシアの奥の宮での生活は以前と何も変わらなかった。セリカや執事、侍医もそのままルシアに仕えた。
 ルシアは、なんの不満も持っていなかった。ただ時折、ごくたまにでいいので、離宮には行きたい。そんな小さな望みを持っていただけだった。
 まさか、アレクシーがルシアからしたら大それた考えを胸に秘めているなどと、夢にも思っていなかった。
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