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13章
アレクシーの思い
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アレクシーは、胸に秘めた思いを、秘めたままにする人ではなかった。
早速、例のごとしフランソワに打ち明け、助力を求めることにした。
「今度は何?」
「……って、そんなに嫌そうに言うなよ」
「お前の話があるは、厄介ごとばかりだからね」
「まあ、それは否定しない。ただ今度の話は、探り事とは違う、根回しなんだ」
アレクシーが打ち明けると、静かに聞いていたフランソワの顔が驚きから、困惑に変わる。また何を言い出すかと思ったら……。フランソワにしたら、かなり突拍子もない事だった。
「一応聞くけど、本気か?」
「本気だから言ってる。お前の力も借りたい」
「確かにルシア様は、先の国王陛下のお子。我らには叔父上に当たられる方だがオメガだ。それ故正式には、認められていない。そもそも、オメガが妃になった前例はない。と言うか、オメガを正式に配偶者としている人すらは極めてまれだ。」
「そうだ。俺はその前例に風穴を開けたい。余りに、オメガを低く扱い過ぎている。オメガとて血の通った人間だ。それはアルファと同じだ。」
アレクシーの思い、それはルシアを王太子妃にする事だった。奥の宮に囲ったままなら、一生日陰の身。正式に妃として王太子宮に迎えてやりたい、それがアレクシーの思いだった。
前例がないからこそ、最初の前例になる。全ての前例に、最初があるのだから……それがアレクシーの考えだった。
「お前が、運命の相手としてルシア様を心から思っていることは分かるが……難しいよな……具体的に何か案はあるのか?」
「俺もいきなりルシアを王太子妃にとは、さすがに思っていない。先ずルシアには、強力な後ろ盾が必要だ。つまり王太子妃には実家が必要だ」
「でもルシア様には、当然ご両親はおられない。母君の出自も、後ろ盾になれるような家柄ではないよな」
「ああそうだ。母君の方はな。でも父君の方は豊富だ」
「父君? ……はあっ! 父君って、先の陛下だろ」
「そう、我らがおじい様だ」
何をこいつは、当たり前のことを言っているのだと、フランソワは思う。しかし、アレクシーは、その当たり前の事から、突破口を開こうと考えていた。
「おじい様、先の国王がルシアの父親なのは事実だ。つまり、王族やそれに連なる一族とルシアは血縁関係にある。その中から誰か、ルシアを養子にしてもらい後ろ盾になってもらう」
自信満々で言うアレクシーに、なるほど考えたな……とは思うものの、一番肝心なことをフランソワは問う。
「誰かなってくれる心当たりはあるのか?」
「それを考えているのだが……姉上かな……」
アレクシーの姉ルイーズは、アルマ公爵家に嫁いでいる。アルマ公爵家はフランソワのステク公爵家に並ぶ由緒正しい家柄だ。まさに両家共に王女が降嫁するに相応しい家柄だった。
「ルイーズ様の方がルシア様より年下じゃないか?」
「ああ、だから隠居した先の公爵の養子にしてもらい、現公爵の弟として……ならどうだ?」
アルマ公爵家は、一年前に先の公爵が隠居生活に入り、ルイーズの夫が当主になっていた。ルイーズは二十五歳、確かに三十一歳のルシアより年下だがアルマ公爵は三十三歳なので、ルシアが養子になれば兄になる。
そしてアレクシーにとって、好都合に思えたのは、ルイーズには未だ子供がいなかった。ルシアの面倒を見てくれるのではないかと思えた。
「姉上は元が面倒見のよい方だ。お願いする価値はあると思う。それに、年頃の娘がいる家はだめだろ? それも好都合に思うんだ」
二十一歳になるアレクシーのお妃問題はここ数年の一番の話題だった。年頃の娘がいる家は我が娘こそはと思っているだろう。そのような家にルシアの事は、全く期待できない。
故に、アルマ公爵家はその点でも好都合に思える。公爵には妹がいるが、既に嫁いでいる。ルイーズにいまから娘が出来ても、当然アレクシーの相手にはなりえない。
「確かにそうだな。打診してみたらいいかもな。ところでルイーズ様はルシア様の事は知っているのか?」
「公爵はご存じだから、知っているかもしれないが、どうだろうな? とにかく一度姉上に会うのが先かな」
「そうだな、俺の援護をどうするかはその結果次第だな」
「ああ、その時は頼むよ」
早速、例のごとしフランソワに打ち明け、助力を求めることにした。
「今度は何?」
「……って、そんなに嫌そうに言うなよ」
「お前の話があるは、厄介ごとばかりだからね」
「まあ、それは否定しない。ただ今度の話は、探り事とは違う、根回しなんだ」
アレクシーが打ち明けると、静かに聞いていたフランソワの顔が驚きから、困惑に変わる。また何を言い出すかと思ったら……。フランソワにしたら、かなり突拍子もない事だった。
「一応聞くけど、本気か?」
「本気だから言ってる。お前の力も借りたい」
「確かにルシア様は、先の国王陛下のお子。我らには叔父上に当たられる方だがオメガだ。それ故正式には、認められていない。そもそも、オメガが妃になった前例はない。と言うか、オメガを正式に配偶者としている人すらは極めてまれだ。」
「そうだ。俺はその前例に風穴を開けたい。余りに、オメガを低く扱い過ぎている。オメガとて血の通った人間だ。それはアルファと同じだ。」
アレクシーの思い、それはルシアを王太子妃にする事だった。奥の宮に囲ったままなら、一生日陰の身。正式に妃として王太子宮に迎えてやりたい、それがアレクシーの思いだった。
前例がないからこそ、最初の前例になる。全ての前例に、最初があるのだから……それがアレクシーの考えだった。
「お前が、運命の相手としてルシア様を心から思っていることは分かるが……難しいよな……具体的に何か案はあるのか?」
「俺もいきなりルシアを王太子妃にとは、さすがに思っていない。先ずルシアには、強力な後ろ盾が必要だ。つまり王太子妃には実家が必要だ」
「でもルシア様には、当然ご両親はおられない。母君の出自も、後ろ盾になれるような家柄ではないよな」
「ああそうだ。母君の方はな。でも父君の方は豊富だ」
「父君? ……はあっ! 父君って、先の陛下だろ」
「そう、我らがおじい様だ」
何をこいつは、当たり前のことを言っているのだと、フランソワは思う。しかし、アレクシーは、その当たり前の事から、突破口を開こうと考えていた。
「おじい様、先の国王がルシアの父親なのは事実だ。つまり、王族やそれに連なる一族とルシアは血縁関係にある。その中から誰か、ルシアを養子にしてもらい後ろ盾になってもらう」
自信満々で言うアレクシーに、なるほど考えたな……とは思うものの、一番肝心なことをフランソワは問う。
「誰かなってくれる心当たりはあるのか?」
「それを考えているのだが……姉上かな……」
アレクシーの姉ルイーズは、アルマ公爵家に嫁いでいる。アルマ公爵家はフランソワのステク公爵家に並ぶ由緒正しい家柄だ。まさに両家共に王女が降嫁するに相応しい家柄だった。
「ルイーズ様の方がルシア様より年下じゃないか?」
「ああ、だから隠居した先の公爵の養子にしてもらい、現公爵の弟として……ならどうだ?」
アルマ公爵家は、一年前に先の公爵が隠居生活に入り、ルイーズの夫が当主になっていた。ルイーズは二十五歳、確かに三十一歳のルシアより年下だがアルマ公爵は三十三歳なので、ルシアが養子になれば兄になる。
そしてアレクシーにとって、好都合に思えたのは、ルイーズには未だ子供がいなかった。ルシアの面倒を見てくれるのではないかと思えた。
「姉上は元が面倒見のよい方だ。お願いする価値はあると思う。それに、年頃の娘がいる家はだめだろ? それも好都合に思うんだ」
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「確かにそうだな。打診してみたらいいかもな。ところでルイーズ様はルシア様の事は知っているのか?」
「公爵はご存じだから、知っているかもしれないが、どうだろうな? とにかく一度姉上に会うのが先かな」
「そうだな、俺の援護をどうするかはその結果次第だな」
「ああ、その時は頼むよ」
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