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16章
王太子の婚約者
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ルシアが目覚めると、アレクシーが自分を見つめていた。目が合うと照れてしまう。アレクシーは、恥ずかし気に頬を染めたルシアを溜まらなく可愛いと思う。
もう何度も肌を合わせ、一緒に朝を迎えたのにこの初心さは変わらない。ルシアの最大の魅力と言ってよかった。
「目覚めたようだな、大丈夫か? 辛くはないか?」甘い声で問う。
「はい、大丈夫です。」
とても爽やかな目覚めだった。発情の疼きも解消され、心も幸せで満たされていた。ルシアは、アレクシーのように、中々自分の気持ちを言葉にできなかった。
アレクシーのことを、間違いなく大好きだし、愛しているけど、それを言うのはとても難しい。今も、心配してくれるアレクシーに、とても素っ気ない返事で、自分ながら、申し訳ないと思う。それを知ってか、知らずしてか、アレクシーが聞いてくる。
「ルシア、私はそなたを愛している。わが愛は真実そなただけに捧げる、唯一のもの。そなたも私を愛してくれているか?」
ルシアは、深く頷く。いつもは、ルシアが頷けばそれで満足していたアレクシーが、何故か今日はそれでは許さなかった。
「ルシア、言葉で言ってくれないか? はっきりとそなたの口から聞きたいのじゃ」
そう言って、ルシアを見つめるアレクシーの瞳は、キラキラと輝いている。いつもは、とても十も年下とは思えないほど、大人で頼りになる人の瞳が、子供のものように思える。
なんて言うのか? そんな、どうしよう……恥ずかしい。でも、言わないと悪い……いつも自分ばかり言われて……やっぱりアレクシーにも言ってあげないと……。ルシアはようやく決心して、小さい声で告げる。
「私も……あ、愛しています」
「誰のことを?」
「アレクシー様のことです」
その言葉でアレクシーは、感極まったようにルシアを抱きしめる。ルシアの気持ちは当然分かってはいた。それでも一度その可愛い口から、直接聞きたかったのだ。
「ルシア、嬉しいぞ! 我らの気持ちは同じだ。運命の番なのだから、当然と言えばそうだがな。そして、そなたはこれから、我の唯一の伴侶、妃になる。死ぬまで一緒だ。」
ルシアも、全身にアレクシーのぬくもりとともに、愛を感じる。そうすると、自然に言葉が出る。
「私も嬉しいです。どうか、死ぬまでお側においてください」
「当たり前じゃ。我は決してそなたを離したりはせぬぞ。常に側にいて、我を支えてくれ。そして子も産んでほしい」
「子供ですか?」
「そうだ、妃として当然の努めじゃ」
そうだった。考えていなかった。ルシアは子供とは無縁と思っていた。実は、フェリックスと番っている時から、発情の折の行為のあと、いつも事後避妊薬を飲んでいた。子供は出来ない方がいいとのフェリックスの考えからだが、ルシアも疑問に思った事はない。
その習慣は、アレクシーの番になってからも変わらなかった。アレクシーは、子供を欲したが、先ずは妃になるのが先と、いわば、順序を考えたのだ。
「次の発情は、妃になってからじゃ。だから次からは、避妊薬は飲まないようにな。そうしたら、子ができるはずじゃ」
ルシアは母になる、現実感に乏しかった。自分が母に……なれるのだろうか? それを口にすると、アレクシーにあっさりと否定される。
「心配することはない、そなたは、良い母にもなれると思うぞ。王子も、王女も沢山いた方がいい。子は国の宝じゃからの」
アレクシーが、確信を込めたように言うと、なんだかルシアも現実感がわいてくる。確かに、子供可愛いだろうな……。でも、沢山は無理だよとこの時のルシアは思う。せいぜいが二、三人だろうと。
ルシアは妃になった後、五人の子供に恵まれ、その意味からも立派に妃の務めを果たすことになるのだが、この時のルシアは当然知らない。
この日ルシアは、お妃教育の最終日を迎えていた。明日からは、婚儀に向けて最後の準備に入ることになる。
「ルシア、今日が最終日だな」
国王フェリックスが、王妃を伴いルシアの学びの間に来て、声をかける。
「これは兄上様、王妃様も。わざわざのご足労恐れ入ります。」
「そなたの頑張りぶりは聞いておるぞ、よう努力したな」
「ほんに、もう教えることはないと教師たちも申しておった」
「いえいえまだまだでございます。特に王妃様には今後も教え導いて頂きとうございます。」
「それはそうじゃな、王妃には身近に妃としてのものを学ぶとよかろう」
フェリックスが言うと、王妃もにこやかに頷いている。ルシアはありがたいと思った。過去のことを思えば、わだかまりがあっても当然のこと。しかしそれは出さず、ルシアを王太子妃として迎えてくれる。ルシアは国王王妃に心から感謝しているし、その思いは生涯持ち続けると誓った。
二人も、最初からルシアを受け入れた訳ではない。特に王妃は、アレクシーの番になってからのルシアに良い感情を持てなかった。父から息子に鞍替えした妖艶なオメガとすら思った。
それが変わったのは、やはり壁画の神託だった。あの衝撃は大きかった。受け入れざる負えなかった。受け入れてみると、ルシアの魅力に徐々に惹かれていった。
ルシア自身あの時から、格段に成長した。皆を魅了する美貌には益々磨きがかかり、艶やかに咲き誇る大輪の花のようだ。外面だけでなく、内面の魅力も益々高まっている。控えめな中に、積極性もみせるようになっている。ルシア自身相当な努力をしていると思われた。
国王そして王妃も、婚儀を待ち望んでいた。王太子妃として、アレクシーの事は無論、国王王妃である自分達のことも支えてほしいし、身近で教えたいことも多くある。
「いよいよ明日からは、婚儀へ向けての最終準備じゃな。体調を整え心穏やかに当日を迎えられるようにな、よいなルシア」
「はい、かしこまりました。お気遣いいただきありがとうございます。」
ルシアの力強い返事に、二人は大いに満足し部屋を後にした。
もう何度も肌を合わせ、一緒に朝を迎えたのにこの初心さは変わらない。ルシアの最大の魅力と言ってよかった。
「目覚めたようだな、大丈夫か? 辛くはないか?」甘い声で問う。
「はい、大丈夫です。」
とても爽やかな目覚めだった。発情の疼きも解消され、心も幸せで満たされていた。ルシアは、アレクシーのように、中々自分の気持ちを言葉にできなかった。
アレクシーのことを、間違いなく大好きだし、愛しているけど、それを言うのはとても難しい。今も、心配してくれるアレクシーに、とても素っ気ない返事で、自分ながら、申し訳ないと思う。それを知ってか、知らずしてか、アレクシーが聞いてくる。
「ルシア、私はそなたを愛している。わが愛は真実そなただけに捧げる、唯一のもの。そなたも私を愛してくれているか?」
ルシアは、深く頷く。いつもは、ルシアが頷けばそれで満足していたアレクシーが、何故か今日はそれでは許さなかった。
「ルシア、言葉で言ってくれないか? はっきりとそなたの口から聞きたいのじゃ」
そう言って、ルシアを見つめるアレクシーの瞳は、キラキラと輝いている。いつもは、とても十も年下とは思えないほど、大人で頼りになる人の瞳が、子供のものように思える。
なんて言うのか? そんな、どうしよう……恥ずかしい。でも、言わないと悪い……いつも自分ばかり言われて……やっぱりアレクシーにも言ってあげないと……。ルシアはようやく決心して、小さい声で告げる。
「私も……あ、愛しています」
「誰のことを?」
「アレクシー様のことです」
その言葉でアレクシーは、感極まったようにルシアを抱きしめる。ルシアの気持ちは当然分かってはいた。それでも一度その可愛い口から、直接聞きたかったのだ。
「ルシア、嬉しいぞ! 我らの気持ちは同じだ。運命の番なのだから、当然と言えばそうだがな。そして、そなたはこれから、我の唯一の伴侶、妃になる。死ぬまで一緒だ。」
ルシアも、全身にアレクシーのぬくもりとともに、愛を感じる。そうすると、自然に言葉が出る。
「私も嬉しいです。どうか、死ぬまでお側においてください」
「当たり前じゃ。我は決してそなたを離したりはせぬぞ。常に側にいて、我を支えてくれ。そして子も産んでほしい」
「子供ですか?」
「そうだ、妃として当然の努めじゃ」
そうだった。考えていなかった。ルシアは子供とは無縁と思っていた。実は、フェリックスと番っている時から、発情の折の行為のあと、いつも事後避妊薬を飲んでいた。子供は出来ない方がいいとのフェリックスの考えからだが、ルシアも疑問に思った事はない。
その習慣は、アレクシーの番になってからも変わらなかった。アレクシーは、子供を欲したが、先ずは妃になるのが先と、いわば、順序を考えたのだ。
「次の発情は、妃になってからじゃ。だから次からは、避妊薬は飲まないようにな。そうしたら、子ができるはずじゃ」
ルシアは母になる、現実感に乏しかった。自分が母に……なれるのだろうか? それを口にすると、アレクシーにあっさりと否定される。
「心配することはない、そなたは、良い母にもなれると思うぞ。王子も、王女も沢山いた方がいい。子は国の宝じゃからの」
アレクシーが、確信を込めたように言うと、なんだかルシアも現実感がわいてくる。確かに、子供可愛いだろうな……。でも、沢山は無理だよとこの時のルシアは思う。せいぜいが二、三人だろうと。
ルシアは妃になった後、五人の子供に恵まれ、その意味からも立派に妃の務めを果たすことになるのだが、この時のルシアは当然知らない。
この日ルシアは、お妃教育の最終日を迎えていた。明日からは、婚儀に向けて最後の準備に入ることになる。
「ルシア、今日が最終日だな」
国王フェリックスが、王妃を伴いルシアの学びの間に来て、声をかける。
「これは兄上様、王妃様も。わざわざのご足労恐れ入ります。」
「そなたの頑張りぶりは聞いておるぞ、よう努力したな」
「ほんに、もう教えることはないと教師たちも申しておった」
「いえいえまだまだでございます。特に王妃様には今後も教え導いて頂きとうございます。」
「それはそうじゃな、王妃には身近に妃としてのものを学ぶとよかろう」
フェリックスが言うと、王妃もにこやかに頷いている。ルシアはありがたいと思った。過去のことを思えば、わだかまりがあっても当然のこと。しかしそれは出さず、ルシアを王太子妃として迎えてくれる。ルシアは国王王妃に心から感謝しているし、その思いは生涯持ち続けると誓った。
二人も、最初からルシアを受け入れた訳ではない。特に王妃は、アレクシーの番になってからのルシアに良い感情を持てなかった。父から息子に鞍替えした妖艶なオメガとすら思った。
それが変わったのは、やはり壁画の神託だった。あの衝撃は大きかった。受け入れざる負えなかった。受け入れてみると、ルシアの魅力に徐々に惹かれていった。
ルシア自身あの時から、格段に成長した。皆を魅了する美貌には益々磨きがかかり、艶やかに咲き誇る大輪の花のようだ。外面だけでなく、内面の魅力も益々高まっている。控えめな中に、積極性もみせるようになっている。ルシア自身相当な努力をしていると思われた。
国王そして王妃も、婚儀を待ち望んでいた。王太子妃として、アレクシーの事は無論、国王王妃である自分達のことも支えてほしいし、身近で教えたいことも多くある。
「いよいよ明日からは、婚儀へ向けての最終準備じゃな。体調を整え心穏やかに当日を迎えられるようにな、よいなルシア」
「はい、かしこまりました。お気遣いいただきありがとうございます。」
ルシアの力強い返事に、二人は大いに満足し部屋を後にした。
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