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10章 再会

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「殿、大丈夫でございますか? 日が暮れてからも大分たちます。そろそろどこかで休みましょうか」
「そうじゃな。どこか良き場所は……うん、三郎あれは……」
 成利と三郎の主従は、今日も一日歩き詰めだった。そのかいあってようやく津田家の領地に入っていた。
「どなたか陣を張っていますな。ここは津田様の領地……もしや我らの援軍……」
「援軍……どなたじゃろ……もしそうならば、事情をお話せねばな」
 気の重いことだと、成利は思う。しかし、城主として援軍を要請した以上、礼を言い、不要になった経緯を、説明するのは当然の責務だ。
「そうでございますな。とりあえず、どなたの部隊か私が行って伺ってきますので、殿はここでお待ちください」
 成利は、三郎が一人で行くと言うのを、不安そうな顔をする。
「大丈夫でございます。この辺りで津田様の部隊以外が陣を張ることは考えられませんし、我らは津田様の敵ではありません。無体な事にはならないでしょう」
 それはそうだろう。呆れられる可能性はあるが。
「そうじゃな、分かった」
「殿、ここから動いてはなりませんぞ。必ずここでお待ちください」
「分かっておる! わしは子供じゃないぞ!」
 言い返す成利は、まだ元気は残っていると、幾分安心しながら、三郎は、謎の部隊へと向かった。

 幾分かんしゃく気味に言いはしたが、成利は一人残されて不安な気持ちになる。
 確かに、ここで敵方が陣を張ることはあり得ない。おそらくは津田様の配下の部隊だろう。上手くいけば、身柄を庇護してもらえる。
 しかし、今一人でいることが不安だった。暗闇の中で、ぽつんといることは、どうしようもない淋しさを、成利に感じさせた。
 改めて、城を失くした身だと実感する。

 しばらく待っていると、三郎が息せき切って戻って来た。
「殿! ようございました! 久世様の部隊でございました!」
「久世様の!」
 成利は驚く。津田家の武将の誰かとは思ったが、まさか久世様とは! 久世と言えば、津田の軍団長の一人。たかだか大高城の援軍に来るような武将ではない。
「久世様の配下の武将か?」
「それが、私も驚いたのですが、久世様ご自身のようなのです。それで私の身分を申しまして、殿も近くで待っていると申しましたら、すぐにお連れせよと」
 何故久世のような大物が、大高城の援軍に来ているのか分からなかったが、尚更援軍の必要がなくなったことを、城主として説明せねばならない。『いや、今は城主ではないな』と自嘲気味に思う。
  
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