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10章 再会

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 久世は、援軍が間に合わなかったことに、歯噛みした。
 そして、その原因になった松川への怒りに燃える。羽島の謀反は、松川の手引きなのは明らかだ。許し難いと思う。
 何よりも許せないのは、松川が成利を、駿河に呼ぼうとしたこと。十三年過ぎたいまだに、成利となった仙千代を弄ぼうとするのか!
 鬼畜は鬼畜のままじゃ! 変わってはおらぬなあ、義政! よいっ! あやつの命も来年まで。我が必ずやあやつの首落としてやるぞ! 体中に怒りが満ちる。

 どうしたらいい……久世は考える。
 援軍が間に合えば、松川なぞ蹴散らかし、その後はいくらかの兵を残して、四国に戻るつもりであった。
 しかし、その前提が崩れた。
 五千の兵があれば、大高城を攻めるのは簡単である。しかし、籠城されたら時間がかかるだろう。成利の話からして、元々が籠城準備をしていたのだ。ある程度は持ちこたえるだろう。そうなると、厄介だなあと、久世は思う。
 さすがに、このまま長く四国を空けるわけにはいかない。
 仙殿には気の毒じゃが、大高城は、四国を平定してからだな。いずれにせよ、来年は東へ侵攻する。その時、大高城も取り戻し、松川や竹原は一網打尽にしてやる。
 久世は、決断した。
「仙殿、まこと申し訳ないことじゃが、わしは四国に戻らねばならぬ。今すぐに、大高城を取り戻してはやれぬのじゃ。承知くださるか」
「そのようなこと、久世様が謝ることじゃございませぬ。そもそもが、我の不徳の致すところが招いたこと」
「じゃが、四国を平定すれば、来年は東へ侵攻する。その時は必ず、大高城を取り戻すと約束する。勿論、松川、そして竹原もまとめて滅ぼしてやる」
 久世の力強い言葉に、成利は安堵を覚える。
 昔から久世、いや佑三の言葉には、力付けられたが、いまは尚更だった。
 久世は、成利の顔に、了承を感じ取った。
「では、今日はもう遅いゆえ、休もうか。陣中ゆえゆっくりとは眠れぬじゃろうがな」
「そのような事、当然にございます。元々野宿のつもりでおりました。今宵、休ませていただければ十分にございます。明日は早朝に失礼させていただきます」
「うん?……明日どこに行かれるのじゃ?」
「城を落ちた身ゆえ、特別行く当てはございませんが、どこか寺にでも身を寄せようかと思っております」
「だったら我が城に来られるがよい」
「しかし、それは……」
「今回の件は、上様にも報告せねばならぬ。今後のこともある。しからば仙殿は、わしの城におるがよかろう」
 今後の動静は、朝頼の意向で決まることは確かなことだ。自分が大高城主へ返り咲けるほど甘い世界ではないが、今仏門に入るのも早急だとは、成利も思った。
 しかし、このまま久世を頼ってよいのだろうか。
 久世は、成利の戸惑いを遠慮とみた。やはりここでも、押しの強さを発揮する。
 決断の速さと、押しの強さは彼の真骨頂。それを武器に、ここまで上がってきた。
「遠慮はいらぬ。まだ全て完成した訳ではないが、わしの城も見てもらいたい。来てはくださらんか」
 成利も、ここは久世に頼る以外ないだろうと思った。戸惑いはあったが、ありがたく受けることにした。
「それでは、お言葉に甘えて世話になります。よろしゅうお願い申し上げます」
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