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最終章 花綻びて

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「やはり我が城は落ちくな」
「お寛ぎになられてようございました」
「そなたの酌で飲む酒は格別に美味い」
 仙千代の頬が、僅かに染まる。佑三にはそんな仙千代が、愛しく可愛くてたまらない。
「酒のせいか少々汗ばむな」
「これは気の付かぬことで」と、慌てて団扇を取りに行こうとする。
「ああ、よい。天守で夜風に当たりたい。そなたもまいれ」

「おおっ! 風が心地よいなあ!」
 適度にひんやりとした夜風が、二人を優しく包む。天守から見下ろす湖は、月明かりに映えた姿が美しい。
「綺麗でございますな。夜の湖は何か、幻想的な気持ちにさせられます」
「そうじゃな、昼間の湖も良いが、夜はまた格別じゃ。ここに城を持てたのはありがたい。仙もこの城は気に入ったか?」
「はい、素晴らしい城だと思うております。ただ、やはり……北の丸は、私には分不相応かと」
「あのな、それじゃが、わしの話を聞いてくれ。わしは、そなたを守りたい一心でここまできたのじゃ。駿河で、大事なそなたを守ってやれなんだ。それが男として悔しく、それを原動力にここまできた。そなたの城は、守ってやれなんだが、ここではそなたを守ってやれる。わしにとってそなたは、己の命よりも大切な存在。それ故、北の丸こそ、そなたが住むに相応しい。わしにとって正室にも等しい存在だからな」
 これほどの真摯な思いの吐露があろうか……しかし、仙千代にはそれを受け止める資格が己にはあるのかと思う。
「殿のお気持ちは大変嬉しゅうございますが、しかし、私は汚れた身」
「そなたのどこが汚れておる! そなたほど清らかな者はおらんぞ」
「いいえ、私は汚れた身、駿河で何があったか、殿が一番ご存じでしょう!」
 仙千代が声を荒げる。普段物静かな仙千代には珍しい。そして、その目には涙が浮かんでいる。佑三は仙千代の手を握る。仙千代の気持ちを落ち着かせるよう静かに言う。
「わしが、必ず清めてやっただろう。だから仙は、汚れておらん。綺麗なんじゃ。あのけだものの悪党は、わしが地獄に送ってやった。だからもう駿河でのことは忘れるのだ。過去に囚われることはない。気持ち新たにこの城で、わしと共に生きてはくれないか」
 仙千代の目から涙が溢れだす。
「わ、私などがお側にいて……よ、よろしいのかと……」
 嗚咽交じりで、言葉にならない。
「そなたがいいのじゃ。そなたにこそ側にいて欲しいのじゃ」
 佑三はむせび泣く仙千代をしっかりと抱きしめた。そして、優しく背中を撫でてやると、次第に仙千代も落ち着いてきた。
「わしの側にいてくれるか」
 仙千代は頷いた。仙千代こそ佑三の側にいたかった。しかし、立場が大きく変わったことでどうしても、自分は相応しくないと逡巡するのだった。佑三の言葉は、そんな仙千代の心を軽くした。
「そなたの全てが欲しい、わしの者になってくれるか」
 仙千代は頷いた。仙千代も佑三の者になりたい、そう思った。

 佑三は仙千代の手を引いて天守を降りて、本丸の自分の寝所に行く。二人はお互いに、この手は二度と離したくないと思いながら歩いていた。

 寝所に入ると佑三は、仙千代の小袖を脱がし下着姿にした。そして自分も下着姿になり、仙千代を褥に導いた。
 向き合うと、まだ涙の痕が残る頬を、両の手で包み込む。泣き濡らしたそこは、幾分腫れぼったいが、そこがまた可愛いと思う。
 佑三は、仙千代の唇を見る。仙千代の体は、それこそ隅々まで知っている。しかし、唇に触れたことはない。仙千代が、己の者ではなかったからだ。
 初めての口付け……仙千代の唇は、予想以上に、柔らかく、そして甘い。佑三は、痺れるような陶酔を味わう。
 それは、仙千代も同じだった。甘い陶酔に全身の力が抜け、佑三に全てを委ねた。
 佑三は、仙千代の下着を脱がすと、そこは抜けるような白い肌。
「綺麗じゃ……」そう言って、仙千代の全身を撫でるように愛撫していく。白い肌は、徐々に色付いていく。そして、控えめに色付いた小さな粒を摘むと、仙千代の体がびくっと反応した。
「大丈夫じゃ、優しくする」片方の粒を口に含み、もう片方を指で転がすように愛撫すると、そこは徐々に育っていく。
「あっ……ああっ……」
 耐えきれないように仙千代が、喘ぎ声を漏らす。我慢しているようで褥を強く握っている。
 佑三は、その仙千代の腕を握ってやりながら、仙千代の耳元で囁く。
「我慢するでない。ここはわししかおらんのだ。仙の、そなたの声は可愛い。聞かせてくれ」
 安心したかのように、仙千代が抱きついてきた。可愛い、たまらなく可愛い。佑三は、己の中心に熱が集まるのを感じる。
 佑三は、仙千代の下帯を取った。仙千代はされるがままだ。現れた仙千代のものは、既に立ち上がっていたが、持ち主と同じで、その姿は控えめで可愛らしい。
 仙千代は、見られているのが恥ずかしいのか、いやいやをすように顔を横に振る。佑三は、それをぱくっと口に含む。
「ああっ! だめでございます、そのような不浄なもの」
 仙千代は、激しく狼狽する。駿河では、散々道具を使って辱しめられたが、口に含まれたことはない。仙千代には全く未知な事だった。
「そなたに不浄なものなどない。ここもなんと愛らしいことか」
 舌で丹念に愛撫していくと、固さが増していく。
「もうだめっ……出る……ああっ」
 仙千代は、何とか逃れようとするが、佑三は許さない。我慢しきれず仙千代は、佑三の口の中で果てた。それを、佑三はごくりと呑み込んだ。
「えっ! あっ、あの……」
 仙千代は激しく動揺した。精を飲みこむことを、いつも強制され、それが苦痛だったからだ。
「ふふっ、そなたのものはなかなか美味かったぞ。そなたは可愛いからな、本当は頭からかじってやりたいが、さすがにそれは出来んだろう。代わりに飲んでやった」
 そう、にこやかに言いながら、仙千代の頭を撫でて額に口付ける。そうして仙千代の尻を撫でまわし、奥の蕾に触れると、びくっと反応した。
「怖いのか? ここは嫌か? そなたが嫌なら無理強いはしない」
 少し怖い、けれど嫌ではない。むしろ佑三のもので満たして欲しいと思う。そうすれば、完全にあの頃の汚れを清められる、過去に決別できると、そう思うのだ。
 しかし、それをどう伝えるのか……仙千代は首を横に振る。
「うん……嫌なのか……」
 やはり、仙千代は首を横に振る。佑三は、仙千代の耳元で囁くように言う。
「では、良いのか? ここもわしのものになってくれるのか?」
「殿の……殿のもので一杯にして」
「なっ! なんということを言うのじゃそなたは!」
「えっ! あ、あの……も、申し訳ございません……」
「いや、良いのじゃ、うん……詫びることはない。少し驚いただけで……むしろ良い……そう、それで良いのじゃ」
 佑三の驚愕に、怯えたように謝る仙千代を、宥めるように言う。佑三が驚いたのは事実。
 わしのもので一杯に、これは最高に煽られる言葉。しかし、仙千代にその意図がないのは明らか。自覚は無いのだ。そこがまた可愛いとは言える。
 しかし、自覚がないとはいえ、煽られたら挑むのが男と言うものだ。


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