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VS北夕鮮・尖閣諸島編
第32話:怒力①
しおりを挟む赤い血が、滲む。
左手の甲に刺した棒手裏剣。
ダメだ。
自分への怒りに任せれば、もっと強く刺すべきだ。
だが、戦闘に支障が出る。
支障が出ない範囲で――罰を与えなければ。
この愚か者に!
――棒手裏剣を握るカンナの右手に、更に力が入っていく。
ぎりぎりぎり、と左手の甲を這う 棒手裏剣の先端。
棒手裏剣の先端は手首の方へとゆっくり移動し、その軌跡から赤い液体が、ぴゅっ、と飛び出してくる。
赤い血が、滴る。
「……ふぅ」
今のカンナにとって、その痛みが妙に心地よかった。
(ハマると、ヤバいなコレ……と、呑気な事を考えたりもした)
カンナの頼りない表情は、自分への怒りの表情に変わり──そして今、冷静な表情へと変わった。
「――ビビらせたいの? 腰の刀で自分の首をハネたら、いくらでもビビってあげ――」
女の言葉を遮る様に、カンナは言葉を発する。
「――ごめん、オウカ。もう大丈夫」
その口調は、その表情は、冷静だった。
――頭は冴えている。
あの女なら倒せるか――いや、わからない。
しかし、多分 さっきの私の首への攻撃時の身のこなしから察するに、倒せる可能性は充分ある。
だが、もう一人の男は――どれだけの強さか、わからない。
もし、私より明らかに男の方が強いなら――逃げる。
無駄死にを避ける為に。
――私が1人だったなら!
だが、オウカが繋いでくれるなら、話は別だ。
この女――と、もう一人の男、両方が攻撃してきたとしても、あの暗器が私の首に刺さった瞬間、オウカが繋いでくれる。
”日ノ国を護る” という、意志を。
自分への怒りを可視化した、棒手裏剣の先端の軌跡――から溢れる液体に塗れた左手を、振る。
赤い血が、舞う。
その口元は、うっすらと笑っている様にも、見て取れる。
「――ねえ、お姉さん」
カンナは、居合の構えを取った。
「隻腕、似合いそうだね」
――――マキは、南の方角を見た。
眼下には、断崖絶壁。
その先には、相変わらず美しい海が広がっている。
足元には、敵兵の男性4名が転がっている。
気絶、又は 倒れた直後 マキが片脚を体重を踏みつけ、激痛で立ち上がれない状態だ。
戦闘不能ではあるが、赤マーカーは表示されたままだ。
空中を2回タップ。
――現在の戦況を、ARレンズを通した視界に表示する。
魚釣島全体のマップに、味方を示す ”緑シグナル” が32個、点灯している。
そして、自分自身を示すアイコンの至近距離には、敵を示す ”赤シグナル” が4個 点灯している。
――魚釣島全体では、赤シグナルは13個。
……いや、15個に増えた。……いや、12個に減った。
つまり、12名の敵が、現在進行形で(味方によって)視認されている、対峙している……という事だ。
――そして、敵を視認した履歴(視界から外れた敵も含む)は21名。
……いや、24名に増えた。
このペースだと、もっと増えるだろう。
敵兵の総数は、こちらと同じくらい……というのは甘い試算だろう。
味方の総数を、敵の総数が上回っている。と試算すべきだ。
「――ケンジ、立てるか?」
マキとペアを組んだ男は、マキの左横で倒れていたが――立ち上がった。
「ああ、すまん。不甲斐ない所を見せちまった」
敵兵1名と接戦の末 倒したが、相当 体力を消耗してしまった様だ。
マキは、上官から分けてもらった ”兵糧丸” を一粒、ケンジに渡す。
「食え。疲労回復の効果がある」
兵糧丸を口に放り込むケンジを、少し休ませたい所だが……マキは冷静な表情で、言葉を発する。
「――ここから北120メートル地点で、味方3名・敵3名が交戦中だ。加勢して、”多 対 少” で叩くぞ」
マキの右手には、日ノ国刀が握られている。
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