I-State (侵略国家)

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VS北夕鮮・尖閣諸島編

第38話:正眼②

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――”ここは任せて、先に行け”

死亡フラグ って言うんだっけ?こーいうの。この国では。

そんな呑気な考えが、オウカの脳裏をよぎった。

――オウカは、敵兵3名が手頃な距離、キャッチボールをするよりも やや遠いくらいの距離に近づいた時に そちらを見て、ぎょっ、とした表情を浮かべた。

”今、この瞬間。あなたがたの接近に ようやく気づきました”

……といわんばかりの演技。

そして、カンナとは逆の方向へと、敵兵たちより やや遅い速度で、走り出した。

 

 

――――その少年は、息を殺している。

その視線の前方には――敵兵3名の姿。

敵兵3名は、こちらに気付いていない。

茂みの中に身を潜める、短くスポーティな黒髪の少年・カズマの視界には、当然ながら赤マーカーが表示され――その情報は味方に共有されている。

しかし、あの3名は自分が発見すべきターゲットではない。

カズマは細心の注意を払いながら、音を立てない様に――後ろへと後ずさりする。

 

――!!

背後から、何者かが近づいてくる!

即座に振り向きつつ、右腰のホルスターから苦無を取り出し、構えた!

「めええええ~」

野生のヤギ。

樹々の間を親子連れのヤギが、仲良く歩いている。

カズマは、そっと胸を撫でおろした。

――いや!アイツ等が今の鳴き声に反応して、こちらに向かって来たら!?

……恐る恐る、振り返る。

敵兵3名は、こちらを見て何かを話している…。

……そして、数秒後──西の方向へと歩き出した。

 

――1か月半前からの、尖閣諸島での領海侵犯をする北夕鮮の艦船上で、数回に渡りヨハンの姿が確認されている。

そして、今回も艦船にいるヨハンの姿が確認された。

 

交戦状態とはいえ、本格的な全面戦争ではないのだから、テソンはもちろんミョンヒがいる可能性もかなり低いだろう。

だから 今現在、魚釣島に来ているヨハンが、リーダーとして指揮を執っている可能性が高い。

まあ、それ以外の……国衛隊に顔が割れていない者が来ていて指揮を執っている可能性もあるが、可能性として一番高いのは、結局 ヨハンだ。

 

そして、自分に与えられた任務、それは ”ヨハンの発見・尾行”

自分がヨハンを発見すれば、良し。

もし、自分以外が、味方の誰かがヨハンを視認したら――その情報が即座に自分(と、マキ部隊長)に通知がポップアップで表示される設定にしている。

その場合、そこへ急行――ヨハンを尾行する。

そして、その位置情報を部隊長マキさんに共有し続ける。

位置情報をもとにマキさんが味方を指揮し、ヨハンを取り囲むような陣形――包囲網を完成させる。

そして、”多 対 少” で、一気に叩き伏せる!

 

……多分、相手の方が、北夕鮮軍の方が、この魚釣島に来ている隊員総数は、上だ。

だからこそ、ヨハンを発見したら、即座に包囲網を完成させて――敵が散っている間に、こちらの意図に気付き ヨハンの元へと戻る前に―― 一気に実行しなくてはならない。

 

――俺は、近接戦闘は 弱くはないが、強くもない。

だけど、魚釣島に来ている新米隊員の多くよりも、俺の方が上だろう……多分。

でも、今回の俺の最重要任務は、戦闘ではなく、あくまで ”ヨハンの発見・尾行” だ。

その過程で、敵に見つかってはならない。

仮に、敵に見つかってしまったら―― 一目散に逃げる。離脱する。

 

……もし、目の前で味方が殺される寸前だろうと、決して助けてはならない。

敵に見つかってはならないから。

それは俺の任務ではないから。

 

本音を言えば、俺は――侍族の愛国者・タケルさんの様に、戦いたい。

しかし、その想いよりも優先すべきは――自分に与えられた任務、ひいては日ノ国の大義だ。

 

……一分一秒が惜しい。行くか。

新米忍者カズマは、音もなく深い森の中へと消えていった。

 

 

――――カンナは、北東へと進んでいる。

北東150メートル先にいる味方2名と、合流しなければいけない。

深い森は、樹木や草木により視界が極端に阻まれる。

数メートル先に誰かが潜んでいても、気づくことは難しい。

オウカと分かれた後、すでに80メートルほど進んだが――体感では、その数倍の距離を走った様に感じられた。

 

――実力も低いうえに負傷したアタシでは、追っ手に追いつかれる確率が高い。

オウカはそれを気遣って、アタシを先に行かせてくれた。敵を引き付けてくれた。

ありがたくもあり――自分が不甲斐なくもあり。

しかし、今はアタシにできる事を、オウカに指示されたことを、全力で実行せねばならない。

 

……辛い。

一緒にいたら、生存確率を下げるだけの足手まといにしかならない、自分の実力不足が。

オウカに危険を押し付けて、逃げている自分の弱さが。

 

──というか、オウカはあの3名の敵を撒けるのか?

生きて再会できるのか?

考えても、わからない。

 

……今までアタシは、本気で鍛錬していたか?

極限まで、自分を追い込んでいたか?

答えは明白だ。

出来ていなかった……しようともしていなかった。

――ならば、明日から本気で鍛錬しよう。強くなろう――

 

――!!

カンナの眼前に、すうっ、と 人影が現れた。

瞬間、カンナは立ち止まり――日ノ国刀に手を伸ばす。

カンナの視界に、赤マーカーが表示――いうまでもなく、敵兵だ。

爽やかな雰囲気を纏う青年。

右手には、両刃の直刀――龍泉剣を握っている。

その青年こそ、北夕鮮軍所属――尖閣諸島での領海侵犯、および魚釣島での戦闘行為における、小部隊のリーダー・ヨハンだった。

 
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