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VS北夕鮮・尖閣諸島編
第52話:英霊②
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――――オウカは、ケンジ隊員がヨハン達の前に姿を現す約3分前に、この場に到着した。
敵本隊を中心として、西の方角にあたる。
お互い姿は見えないが……すでにマキ部隊長、カズマ隊員、ワタル隊員が到着していた。
お互いの位置情報は共有しあっており、オウカはケンジ隊員が来る方角ではない場所に、身を潜めた。
……奇妙なことに、ヨハン率いる本隊の敵兵8名は、移動するでもなく この場にとどまっていた。
だが、すぐに意図は読めた。
この場所が、それなりに見通しが良い場所だからだ。
比較的、適している。
――襲撃者の迎撃に!
敵兵8名は、明らかに周囲の様子をうかがっている。
気付いている、”複数の潜伏者に、囲まれている” と。
視覚と聴覚を、研ぎ澄ませ――潜伏者が襲撃者と変貌する その瞬間を、迎え撃つ気だ。
茂みの中に身を潜めるオウカは……
……革製の手甲と、金属製の棒手裏剣が、擦れ合う音を極力立てない様に……
……手甲から2本の棒手裏剣を……ゆっくりと…………抜いた。
……両手に棒手裏剣を握り、中腰で待機する。
身体は、スタミナは……大丈夫だ。まだまだ動ける。
よし、後はこの場で待機……。
《――別行動さえしなければ、カンナは死ぬことはなかった》
突如、オウカの脳裏にフラッシュバックしたのは――カンナの死に顔。
心臓と右肩を 刀剣類で貫かれ、力なく横たわるカンナの身体から――色鮮やかな 赤い血が流れ出し――
それを吸い込んだ地面が、ドス黒く変色していた――あの光景。
《カンナは、お前を信じていたんだぞ。それなのに――》
”――――敵は8名!!つまり、こちらの5名では分が悪い!だからさっきのメッセージの内容の通りに!機動力を奪う!背後から飛び道具を投げても、首の後ろの硬い骨に阻まれてしまう!だから、まずは機動力を奪う為、脚を狙う!相手が動いてる最中は脚の付け根から遠いふくらはぎは動きが激しく狙いにくいから脚の付け根に近い太腿を狙う!!”
《申し訳ないと思わないのか?カンナに。マキ部隊長に――エレナに》
”ケンジ隊員が到着!陽動をしてくれる!一瞬だけ、敵兵8名の気を惹いてくれる!その瞬間、マキ部隊長とカズマ隊員が急襲開始!その後、時間差で私とワタル隊員も急襲開始……”
《お前は、この日ノ国を侵略するスパイ。よく平気な顔で――》
”………………”
――オウカは、右手に握る棒手裏剣を 逆手に持ち替え――構えた。
”拳を振り下ろすような刺突” に適した持ち方。
ゆっくりと、そして深く息を吐きながら右拳を……下ろしていく。
……音を立てない様に、ゆっくりと左手の甲に先端を触れさせた。
ぬちゃっ……と、小さく嫌な音がした。
赤い血が、滲む。
もっと強く刺したかったが、戦闘に支障が出る。
――棒手裏剣を握るオウカの右手に、力が入っていく。
ぎりぎりぎり、と左手の甲を這う、棒手裏剣の先端。
棒手裏剣の先端は手首の方へとゆっくり移動し、その軌跡から赤い液体が、ぴゅっ、と飛び出してくる。
赤い血が、滴る。
《お前を信じている仲間――裏切り――――贖罪の――つもり――――――》
必死で、痛みに意識を逸らした。
……左手を振ることは、相手の視覚、聴覚に察知される恐れがあるので……できなかった。
”任務に没頭しろ――”
オウカの顔は――虚無感に溢れていた。
――――!
敵兵8名が、一斉にケンジ隊員に視線を移した。
刹那、4本の棒手裏剣が――敵の脚へと放たれた。
――マキ部隊長が、大声を張り上げながら敵兵たちに接近。
マキ部隊長が敵兵1名に斬撃を浴びせ――叫び声が上がる!
敵兵は、こちらを警戒していない。
”スパイだと決して気づかれぬ為、低く偽った実力のままで――武功を挙げろ”
――オウカは、フラッシュバックしようとする映像から意識を逸らしながら――棒手裏剣を握る両手を、ぶんっ、と振った。
――――オウカおよびワタルが、茂みの中から放った4本の棒手裏剣。
狙っている部位は――まず首、次いで太腿。
首の柔らかい部分である正面側が狙いやすい角度なら、首を狙い――絶命させる!
首の柔らかい部分が狙いにくいなら、太腿を狙い――機動力を削ぐ!
-ズッ×3-
敵兵1名の左太腿に1本、敵兵1名の首に1本――棒手裏剣が生えていた。
オウカは2本命中、ワタルは、2本とも脚にかすったが刺さりはしなかった。
オウカが投げた棒手裏剣を首に生やした敵兵は――ぎょろり、とした目で視線を下に移す。
”超至近距離、数センチ先に 黒い鉛筆……俺の首から?”
右手で構えた刀剣はそのままに、左手で自分の首の異物へと手を伸ばす敵兵――の視界を、オウカの左拳が覆う。
-ぐちゃっ-
視界には――青空?逆さまになった樹々?そして……地面?
顔面への突きの衝撃で、乱暴なバク転を強制させられたことを自覚できない男が、どぅっ、と 音を立てて地面に うつ伏せに倒れた。
その首に生えた棒手裏剣が、地面とサンドイッチされ、ずずずっ、とより深く刺さっていく。
……身体が、びくん、と痙攣している。身体が動かない。立ち上がれない。
最期を悟った男の脳裏に浮かぶのは……幼馴染である婚約者との想い出。
――男の首から流れ出す血が、棒手裏剣を伝い、大地へと還っていく。
その命と、共に。
――――敵兵たちの前に、姿を現したオウカ。
居合を放つため――左腰に携えた日ノ国刀の柄へと手を伸ばす。
……同時に、鞘を握る役目の左手は――右前腕の手甲から、素早く棒手裏剣を抜き取った。
そして、居合の構えで、敵兵たちに近づいていく。
右手に柄を握っている。
左手に鞘……そして相手に見えない様に――棒手裏剣を握っている。
敵本隊を中心として、西の方角にあたる。
お互い姿は見えないが……すでにマキ部隊長、カズマ隊員、ワタル隊員が到着していた。
お互いの位置情報は共有しあっており、オウカはケンジ隊員が来る方角ではない場所に、身を潜めた。
……奇妙なことに、ヨハン率いる本隊の敵兵8名は、移動するでもなく この場にとどまっていた。
だが、すぐに意図は読めた。
この場所が、それなりに見通しが良い場所だからだ。
比較的、適している。
――襲撃者の迎撃に!
敵兵8名は、明らかに周囲の様子をうかがっている。
気付いている、”複数の潜伏者に、囲まれている” と。
視覚と聴覚を、研ぎ澄ませ――潜伏者が襲撃者と変貌する その瞬間を、迎え撃つ気だ。
茂みの中に身を潜めるオウカは……
……革製の手甲と、金属製の棒手裏剣が、擦れ合う音を極力立てない様に……
……手甲から2本の棒手裏剣を……ゆっくりと…………抜いた。
……両手に棒手裏剣を握り、中腰で待機する。
身体は、スタミナは……大丈夫だ。まだまだ動ける。
よし、後はこの場で待機……。
《――別行動さえしなければ、カンナは死ぬことはなかった》
突如、オウカの脳裏にフラッシュバックしたのは――カンナの死に顔。
心臓と右肩を 刀剣類で貫かれ、力なく横たわるカンナの身体から――色鮮やかな 赤い血が流れ出し――
それを吸い込んだ地面が、ドス黒く変色していた――あの光景。
《カンナは、お前を信じていたんだぞ。それなのに――》
”――――敵は8名!!つまり、こちらの5名では分が悪い!だからさっきのメッセージの内容の通りに!機動力を奪う!背後から飛び道具を投げても、首の後ろの硬い骨に阻まれてしまう!だから、まずは機動力を奪う為、脚を狙う!相手が動いてる最中は脚の付け根から遠いふくらはぎは動きが激しく狙いにくいから脚の付け根に近い太腿を狙う!!”
《申し訳ないと思わないのか?カンナに。マキ部隊長に――エレナに》
”ケンジ隊員が到着!陽動をしてくれる!一瞬だけ、敵兵8名の気を惹いてくれる!その瞬間、マキ部隊長とカズマ隊員が急襲開始!その後、時間差で私とワタル隊員も急襲開始……”
《お前は、この日ノ国を侵略するスパイ。よく平気な顔で――》
”………………”
――オウカは、右手に握る棒手裏剣を 逆手に持ち替え――構えた。
”拳を振り下ろすような刺突” に適した持ち方。
ゆっくりと、そして深く息を吐きながら右拳を……下ろしていく。
……音を立てない様に、ゆっくりと左手の甲に先端を触れさせた。
ぬちゃっ……と、小さく嫌な音がした。
赤い血が、滲む。
もっと強く刺したかったが、戦闘に支障が出る。
――棒手裏剣を握るオウカの右手に、力が入っていく。
ぎりぎりぎり、と左手の甲を這う、棒手裏剣の先端。
棒手裏剣の先端は手首の方へとゆっくり移動し、その軌跡から赤い液体が、ぴゅっ、と飛び出してくる。
赤い血が、滴る。
《お前を信じている仲間――裏切り――――贖罪の――つもり――――――》
必死で、痛みに意識を逸らした。
……左手を振ることは、相手の視覚、聴覚に察知される恐れがあるので……できなかった。
”任務に没頭しろ――”
オウカの顔は――虚無感に溢れていた。
――――!
敵兵8名が、一斉にケンジ隊員に視線を移した。
刹那、4本の棒手裏剣が――敵の脚へと放たれた。
――マキ部隊長が、大声を張り上げながら敵兵たちに接近。
マキ部隊長が敵兵1名に斬撃を浴びせ――叫び声が上がる!
敵兵は、こちらを警戒していない。
”スパイだと決して気づかれぬ為、低く偽った実力のままで――武功を挙げろ”
――オウカは、フラッシュバックしようとする映像から意識を逸らしながら――棒手裏剣を握る両手を、ぶんっ、と振った。
――――オウカおよびワタルが、茂みの中から放った4本の棒手裏剣。
狙っている部位は――まず首、次いで太腿。
首の柔らかい部分である正面側が狙いやすい角度なら、首を狙い――絶命させる!
首の柔らかい部分が狙いにくいなら、太腿を狙い――機動力を削ぐ!
-ズッ×3-
敵兵1名の左太腿に1本、敵兵1名の首に1本――棒手裏剣が生えていた。
オウカは2本命中、ワタルは、2本とも脚にかすったが刺さりはしなかった。
オウカが投げた棒手裏剣を首に生やした敵兵は――ぎょろり、とした目で視線を下に移す。
”超至近距離、数センチ先に 黒い鉛筆……俺の首から?”
右手で構えた刀剣はそのままに、左手で自分の首の異物へと手を伸ばす敵兵――の視界を、オウカの左拳が覆う。
-ぐちゃっ-
視界には――青空?逆さまになった樹々?そして……地面?
顔面への突きの衝撃で、乱暴なバク転を強制させられたことを自覚できない男が、どぅっ、と 音を立てて地面に うつ伏せに倒れた。
その首に生えた棒手裏剣が、地面とサンドイッチされ、ずずずっ、とより深く刺さっていく。
……身体が、びくん、と痙攣している。身体が動かない。立ち上がれない。
最期を悟った男の脳裏に浮かぶのは……幼馴染である婚約者との想い出。
――男の首から流れ出す血が、棒手裏剣を伝い、大地へと還っていく。
その命と、共に。
――――敵兵たちの前に、姿を現したオウカ。
居合を放つため――左腰に携えた日ノ国刀の柄へと手を伸ばす。
……同時に、鞘を握る役目の左手は――右前腕の手甲から、素早く棒手裏剣を抜き取った。
そして、居合の構えで、敵兵たちに近づいていく。
右手に柄を握っている。
左手に鞘……そして相手に見えない様に――棒手裏剣を握っている。
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