I-State (侵略国家)

エス

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VS北夕鮮・尖閣諸島編

第55話:英霊⑤

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――――あいつを殲滅すれば、俺らの勝ちだ!

ケンジの視線の先には、敵兵たちのリーダーであるヨハンの姿。

我らがリーダー・マキと戦っている。

背後から、奇襲を――

-シャッ-

「うぁっ………!」

ケンジは、反射的に仰け反り、”それ”を紙一重で躱した。

棒手裏剣と苦無手裏剣の、中間の様な形状の武器――飛刀。

視界内から放たれたおかげで、ギリギリで回避できた。

――視線の先には……こちらに接近してくる、がっしりした無骨な女。

右手に日ノ国刀を握り、マキの加勢に入ろうとするケンジの斜め前から、刀剣を振り下ろしてくる!

 

-ギィンッ-

――ギリギリだった。

ギリギリで、日ノ国刀で相手が振り下ろす剣を防ぐことができた。

鍔迫り合いをするケンジの眼前には、既に誰かの血が付いた……鋭い刃が、ギラッ、と輝いている。

無骨な女は、そのまま怪力を活かし、全体重を刀剣に乗せた。

日ノ国刀を握るケンジの身体は、後ろへと流されていく。

 

――ケンジも、疲労していた。

マキと共に行動し、交戦状態の味方に加勢するため、可能な範囲で現場へと走った。何度も。

加えて、マキの補佐をするために思考を回転させ続けていたからだ。

 

――力で押し切られそうになる!

-ズッ-

女の右肩に――見慣れた、棒手裏剣が刺さっていた。

苦痛に歪む表情で、右肩を見る女……の一瞬の隙をついて、ケンジは日ノ国刀を握る両手に、ぐっ、と 力を込めた。

女の握る剣は、あっけなく鍔迫り合いを諦め、その喉が無防備に、日ノ国刀の切っ先に晒されている。

-ドズッ-

前に突き出されたケンジの両手に伝わる、切っ先が喉を抉る感触。

「……みんな……後は……頼ん…………」

無骨な女は、喉から赤い液体を放出しながら 地面に、どさっ、と倒れた。

 

……カズマ隊員が放ってくれたであろう棒手裏剣で……なんとか勝てた。

息を弾ませながら、周囲に視線を移す。

――マキが!敵のリーダーであるヨハンと戦っている!

ヨハンを仕留める絶好のチャンス――

 

-ジャッ!-

背後から放たれた刺突は、切断した。

――ケンジの首の、右側1/4程を。

「……んあ?」

数秒後、事態を呑み込めないケンジの脳に、首から発せられた 激痛を知らせる電気信号が到達した。

「ぐ………ああぁぁっっ………!」

即、振り返って、反撃………。

ケンジの身体が、ぐらっ、と傾いた。

ケンジの視線の先には、自分より過酷な立場にありながら、部隊長として職務を全うしている――マキの姿。

”踏ん張れ……俺は……まだまだいける!”

 

――先程とは別の方向から、他の攻撃者による、刺突が放たれた。

ケンジの首の左側1/4程を、切断した。

首の両側から、ぷしゃぁ、と鮮やかな血が噴き出すケンジの身体を、脱力感が支配していく。

「マキ……すまない……」

その全身が地面に叩きつけられた数秒後。

ケンジに表示されていたマーカーが、消滅した。

 

――――ケンジさんが……殺られた……。

味方であるケンジから、緑マーカーが消滅した……!

眼前で味方の死を見せつけられた、ワタルの眼前には――必死の形相を浮かべる、敵兵の顔があった。

自身の両手が握る日ノ国刀と、相手の両手が握る剣――が、激しく鍔迫り合いを続ける、その先に。

”くそっ、他人の死に意識を向ける余裕がない!まずは、自分の戦いに集中しろ!”

既に、鍔迫り合いを続けて5秒以上が経過していた。

当然、何かしらの攻撃を繰り出したかったが……

目の前には、相手が握る剣の――鋭い刃が光っている

あの刃で、自分の身体を、皮膚を、肉を斬られたら――激痛が自分を襲う。

アドレナリンが分泌されているとはいえ、刺突による痛みは、耐えがたいものになる筈だ。

 

――さて、どうする……あ。

ワタルは、左脚を、蹴り上げた。

その左脚は、敵兵の両脚の間を一直線に上昇し――ぐちゃっ、という嫌な感触を、ワタルに認識させた。

「……あ……ああぁぁぁっっ……」

敵兵の全身が、少し痙攣した直後、両手が睾丸を護る様に覆い――そのまま前のめりに倒れた。

その姿を、敗北者の姿を、ワタルは、食い入るように見つめている。

 

――俺は、勝った――

えも言えぬ征服感が、ワタルの思考を覆っていく。

眼を開いたまま、激しく息をしながら、ただただ……勝利という美酒に酔いしれる。

”……俺は……強”

-ドズッ-

え……

”突如、自分の腹から、刀剣が生えてきた?”

思考の混乱を覆う様に、一瞬遅れて激痛がワタルを襲う。

「ぐぅ……ああぁあっ!」

首と眼球を可能な限り左へと動かし、後ろを見ると――ボサボサ頭の男……が右手に握る、太極剣を認識した。

 

”くそっ、油断した。だが!俺は……ここから……”

-ズッ-

ボサボサ頭の男は、左手に握った軍用ナイフを、ワタルの喉に突き立てた。

ワタルの全身は、一気に力が抜け……だんっ! と地面に叩きつけられる音を鳴らした。

”……こんなとこで……死んでたまるか…………俺は、まだ……………………”

――出血多量。意識不明。
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