異世界で稼ごうとして失敗したので「異世界で稼ぐ方法」を教える情報商材を売って稼ごうと思う

エス

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第4話:情弱咆哮②

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虚無感にあふれた瞳でライチを見据える。

ルキも、”ブログ・サイトで稼げます系” のインフルエンサー達の発信にも目を通しており、その手口をそれなりに理解していた。

 

「えっと……つまり『 ”情報商材を売って稼ぐ方法” を教える情報商材』に50万円使ったってこと?」

「はい。最初は数万円の『どんなジャンルの情報商材でも売れます!稼げます!』の情報商材を買ったんです。
だけど、後からもっと高い情報商材もセールスされて ”大金を稼ぐための先行投資だ” と言われて、気が付いたら50万円近く……」

50万円。途方もない大金。

「……それで、成果は……?」

「実践したんですが……一円も稼げてません」

ルキは、ぽかーんとした表情で、口を開いて虚空を見つめる。

ルキの表情を見て、困惑するライチ。

 

「あ……ああ……」

俺は……情報商材業界に対する ”胡散臭い” という先入観を、脱却できたと思っていた……。

しかし その実、”胡散臭い” と思える正常な感覚が、麻痺していたのか……?

寝不足のライチの混沌とした脳内で、インフルエンサー達への怒りが形成されていく。

 

「…… ”人生ストーリーで独占市場” だぁ?」

ライチの中で、変なスイッチが入った。

「俺の人生なんて、誰も興味ねえよ!芸能人じゃねえんだから!事実を時系列でまとめて感情を加えたストーリー仕立てにした方が脳が覚えやすい。したがってストーリー仕立てにすれば自分に都合の良い教育をしやすいってだけで、そもそもストーリー自体誰も聞いてくんねえよ!」

いつもの2倍速くらいのスピードで、ほぼ息継ぎなしでまくしたてるライチ。

「あいつらは既存の影響力があるが、俺は影響力を得るとこから始めないといけない。それが最重要、それを最も強調すべきなのに!アリバイ的にさらっと触れてそれ以上は強調しない。肝心要のそこは誰もロクに教えねーんだよな。まあ、そこが一番難しいし豪運も必要、再現性がめっちゃ低いから、初っ端からつまづいてるのを自覚されたら、継続的に金払ってくれねーもんなァ!
”仮に僕が無名で(既存の影響力を使わず)始めても、数か月で今と同じ成果を出せる” だぁ!?
実際やってみたことないくせにぃ!まぁ極短期的な需要のある内容を発信しまくって一瞬だけの売り上げ出して「ほらね」とか 言うんだろがぁぁぁぁ!
Ubel Eats月収100万なんてトッププレイヤーが1ヶ月間無休で計400時間働いて叩き出した瞬間的な最高記録だろーが!ライスワーカーの目的はストーリーじゃなくて金ッ!労働負荷に見合った報酬ゥ!ストーリーじゃ腹は膨れねぇ!生きる金の為に必死で命削ってんだよ!
AIに文章生成させろと言われても、その良し悪しを見抜いて修正依頼するには、自分自身が長年文章スキルを磨かなけりゃできない!AIに稼ぐためのアイデア沢山出してもらっても、その良し悪しや自分との適性を見抜いて行動するには、長年マーケティングスキルを磨かなけりゃできない。それを縦長のセールスレターにしっかり書いとけよおおおお」

ほぼ息継ぎなしでまくしたてた後、ぜえぜえと呼吸を整えようとするライチ。

 

――ルキは、表情を変えない。しかし――

”うっざ……。テキトーに肯定してあげて、『お互い頑張ろう。じゃあね』で縁、切るか”

そんなことを考えながら、社交辞令MAXの笑顔を浮かべながら、ライチに顔を向ける。

「あ……あぁ……」

ライチの声が、震えている。

「ごめーん!」

平謝り。

「悪気は……あったんだ!君の不快感を認識しながらも!気に留めず!負のエネルギーをぶつけてしまった!悪気が理性に勝ってしまっていた!申し訳ないぃ!」

頭を下げてテーブルに擦り付けながら、渾身の平謝り。

 

「………………………………」

社交辞令MAXの笑顔から、呆れた表情へと変わるルキ。

「…………うん、反省してね」

 

ライチは、頭をテーブルに擦り付けながら、自戒していた。

”自分がされて嫌なことは、他人にしない(自己防衛は例外)”

冴えない人生を漠然と生きてきたが、それだけは心に決めていた。

根本まで腐った人間関係を、これまでの人生で幾度も見てきた。

だからこそ、他人とできるだけ関わらず、1人でいることが多くなった。

しかし、ルキさんと会う予定が入った時から今まで、人生に充実感を感じていた。

なのに、ルキさんの前で、負のエネルギーを発散して当たってしまった。

 

”自己肯定感が低い人間は、他者を精神的に攻撃して優位に立ち、自己肯定感を回復しようとする”

そういう話を、We Tubeで見たことがある。

ライチは、自戒していた。

自己肯定感の低さは自覚していたが、それを他人にぶつけるような人間にはなりたくなかった。そういう人間を軽蔑していた。

そう自戒していた、ハズだった。

なのに、ルキさんの前で、負のエネルギーを発散して当たってしまった。

話を聞いてくれる人が現れたから、ふとタガが外れて、感情を発散してしまった……。

 

「……いや、もういいって。反省は伝わったから……」

……情けない。女の子にここまで気を遣わせて。俺は……

「……集客が、一番 難しいよね」

ルキさんが、俺が自然と頭を上げる様に気を遣っている。

これ以上、頭を下げ続けるのは、更にルキさんに気を遣わせてしまう。俺の自己満足にこれ以上 付き合わせてはならない。

ライチは、緊張した面持ちでゆっくりと顔を上げる。

――ルキは、神妙な面持ちでストローに口をつけ、オレンジジュースを飲んでいる。

 

ライチは、申し訳なさを感じつつ慎重に口を開く。

「…………はい。集客段階でつまづく大多数の人間は、その後工程である教育と販売を情報商材で教わっても、それを活かす機会がありません。
にも拘わらず情報商材屋は、稼げてない購入者にさらに情報商材をセールスして利益を得るんです。
ごく少数の実績を出した者を引き合いに出して『ウチの情報商材購入者はみんな稼いでます!』みたいに宣伝するが、大多数の稼げてない購入者には触れない」

ルキは、合点が行った――という表情を浮かべる。

「私が行った異世界でも――クオリティに大差ないAとBの商品があって、なぜかAだけが飛ぶように売れる……ってパターンを何度も見てきたわ。
それも、Aが先に販売して先に認知された。影響力を持った……という事なのね」

「有名インフルエンサーが、ブログやYoutubeやTwittelなど どんなメディアを運営しても軌道に乗るのは、既存の影響力を利用しているから。
彼らは、既存の影響力があるから、集客が至極スムーズにできるし、その後工程である教育と販売も至極スムーズにできる。
結果、情報商材もバンバン売れるんです。」

「…………」

ルキさんは、無言で思考を巡らせている様だ。ルキさんの思考を、ぶった切ってはならない。

「……あ、気を遣わせてごめんね。有名インフルエンサーとは、そもそもの土俵がまるで違うのね。
例えば……えーと、
100回勝ち抜かないと優勝できないトーナメントがあるとして……、
99回戦い抜いてズタボロのルーキーを、超シード枠の有名インフルエンサーが万全の状態で叩きのめす……。
そんなイメージが浮かんだわ」

ライチは、頷いて言葉を続ける。

「だから仮に、彼らと同等のスキルを身に着けることができた としても……
既存の影響力がないなら、彼らと同等に稼ぐことは不可能。
いや、下手したら1円も利益を出せないかもしれない。」

「私は お金を情報商材に使わずに、インフルエンサー達の無料情報を見て 数千円の書籍をたくさん買って、戦略実行の資金に使ってきたわ。
偶然ながら、それが正解だったのかも。
情報商材界の闇なんて、今 ライチが聞かせてくれるまで知らなかったから」

賢明な判断をしたルキさんは ”偶然ながら” といって自身を上げることをせず、俺を相対的に落とすことを回避している。

俺のバカっぷりを自然とフォローしてくれている。

ルキさんは、聡明な女の子だ――。

 

ライチは、重苦しい口を開く。

「さっき言った50万円のうち、30万円支払った情報商材……。
半年間の起業家コミュニティの期間が、あと4カ月残ってるんです。
そこで、リアルセミナーに行って、情報収集してきます」

100人近くの会員がその所属するコミュニティでは、一か月に一回ペースで東京・大阪といった都市で会員限定のリアルセミナーを開催している。

ライチはコミュ障なので、第一回リアルセミナーには足を運ばず配信映像のみを見ていた。

しかし、実際に足を運んでみて、他の会員達と直に話してみよう。

 

このコミュニティでは、普段の、ネット上の情報交換は会員限定のオンラインサロン内で行われている。

ライチは、ネット上では饒舌なので、他会員とそれなりに関係を築いていた。

吹けば飛ぶような極めて浅く軽い関係だが、情報交換はそこそこできている。

「投資で稼げます!」で稼ごうとする人もいれば、
「ブログで稼げます!」で稼ごうとする人もいて、
「We Tubeで稼げます!」で稼ごうとする人もいる。

……そして、俺と同じく「異世界で稼げます!」で稼ごうとする人もいる。俺が把握しているだけで20人ほど。

彼らと直に情報交換しよう。

成功談は話せないが、失敗談なら話せる。

他人の成功談はもちろん、他人の失敗談も、同じ轍を踏まないためにも有益な情報なのだ。

 

「ゼロから影響力を得るには、どうすべきなのか?……それを、探ってきます」

ライチの面構えが違う。

それは、ルキへの無礼に対する贖罪の意識……。

いや、それもあるが……。

一番の理由は、違う。

 

”惚れた女の力になりたい。頼れる男になりたい”

その一心だった。

 

たとえ その想いが、実らなかったとしても。

 
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