5 / 8
第5話:Reverse Yggdrasil①
しおりを挟む
――現世・大阪の街。
その大通りには、コミュニティのリアルセミナー会場へと向かうライチの姿があった。
とあるビルの前に、男が立っていた。この顔は、毎日のようにコミュニティのオンラインサロンで見ている。
メンターの下で働く直弟子――”サポーター”と呼ばれる数十人のうちの1人だ。
ライチは、挨拶をする。
「あっ、みっきーさん こんにちは。太一と申します。」
「こんにちは!リアルセミナー会場は、このビルの5階です!エレベーターで上がってください!」
やたらハキハキした口調で返された。
(”みっきー” は、この人の 情報商材業界での名前だ。なぜかこの業界では、”ぴんきー” だの、”さいぽん” だの、珍妙なニックネームを名乗る人が多い。)
5階に上がり、リアルセミナー会場についた。
会場には、100を超えるパイプ椅子が、ズラッと並べられている。
ライチは、その一つに腰を下ろし、リアルセミナーの開始時刻を待つ。
……ひと昔前は、”●●で稼ぐ系” の情報自体が少なく、価値があった。
だが、今や無料の情報で、それらの情報自体は手に入る。
なので、情報自体にお金を払う価値はない……と言われる。
(だが、有名インフルエンサーは、情報自体の信頼性も高い……と思われてるので、情報単体、情報自体も売れる。)
だが、俺は30万円払って、有料のコミュニティに入ってしまった。
30万円あれば、様々な施策ができたはずだ。
……後の祭り。
だったら、できる限り元を取ろう。
今日ここに来た理由は、リアルセミナーの内容そのものではなく……他者との情報交換。
ここで、メンターや実際に稼いでいる会員に話を聞くのだ。
――開始時刻になった。
サングラスの胡散臭いおっさん……もとい えーと、ナイスミドルが現れた。
この人が、このコミュニティの運営者でありメンターだ。
メンターは、数年間で数億円を稼いだという、そうそうたる実績を声高に語る。
メンター自身は凄い実績らしいが、このコミュニティに30万円払って入った約100人の内 大多数が、一円すらも稼げないまま、業界から消えていくんだろうな……。
だが、セミナーの中で、時折
「貴方たちは、投資意識が高い極めて優秀な起業家です」
「ここにいる人たちとは、一生モノの付き合いにしたい」
などと言ってきた。
なるほど。悪い気はしない。
こうやって会員の気分を良くさせてリピーター化して、継続的にお金を得る狙いか。
つまり……
メンターは、『「●●で稼げます!」で稼ぐ方法』を、俺等に教えて稼いでる……?
頭こんがらがってきた……。
メンターの数十分のセミナーの後は、直弟子達によるセミナーも複数回行われた。
……数時間に及ぶリアルセミナーが終了した。
その後、近くのオシャレなバーを貸し切って ”二次会”が開催。
(参加者には、別途料金が発生)
軽食と共に会員同士の情報交換が始まった。
メンターの近くには、とうぜん多数の会員が集まり、マンツーマンでの会話は難しそうだ。
だが、俺と同じく「異世界で稼げます!」で稼ごうとする人とは、2カ月間チャット上でやりとりをしてきた。
いつもチャットしてるメンバーの1人であり、顔写真をアイコンにしている会員を発見。
陰キャなライチは、平静を装いながらも話しかけてみた。
しばらくすると、異世界以外のジャンルで稼ごうとする複数の会員も集まってきて、情報交換をすることができた。
「異世界×AIの未来予測」
「NFT・メタバースは、異世界同士を繋ぐインフラたりえるか?」
「いずれ自分でコミュニティ運営をする場合の戦略」
様々なテーマで、議論が交わされる。
高額なこのコミュニティには、向上心が高い人物が集まっており、建設的な議論が展開される。
なるほど、視野が広がった。
気になったことはすぐに質問出来て、お互いの知見を深め合える。
建設的な議論を楽しめる。クソ企業の同僚たちのように、足を引っ張り合う人間関係ではない。
……うっすらと、心地よい雰囲気が流れる。
”ここには、仲間がいる”
……だが、俺は長年のぼっち生活で、1人でいることの充実感を知った。故に、この場を冷静に俯瞰できる……つもりだ。
――孤独感が解消される……という満足感を提供することで、リピーター化しやすくなる構造なんだな。
会員同士がコミュニティ内で人間関係を構築すればするほど、それを維持するためリピーターになってくれる確率が上がる。
メンターは時折 交流のきっかけを提供するだけ。その後の手間は発生しない。
金は、懐に入る。
”孤独感の解消”
”自己肯定感の向上”
それが、コミュニティビジネスの極意なのかもしれない。
そして、ここにいる人間も、実のところ腹の探り合いをしている。
自分が狙っている市場の 具体的な重要情報は、決して口外しない。
他人に知られたら、ライバルが増えるからだ。
フレンドリーに接して、相手を褒めちぎって、グイグイ情報を引き出そうとする者もいる。
この雰囲気に、呑まれてはならない――。
一通り話した後、ライチはメンターへと視線を向ける。
その近くにいる人間は、さっきよりも少ない。話しかけるチャンス!
”メンターに、直接アドバイスをもらいたいので、失礼します”
と言っては、この場にいる人たちに失礼に当たりそうだ。
ライチは、少し考えた後に、口を開く。
「僕たちが話し合った意見を、メンターはどう評価するのか……知りたくないですか?」
その大通りには、コミュニティのリアルセミナー会場へと向かうライチの姿があった。
とあるビルの前に、男が立っていた。この顔は、毎日のようにコミュニティのオンラインサロンで見ている。
メンターの下で働く直弟子――”サポーター”と呼ばれる数十人のうちの1人だ。
ライチは、挨拶をする。
「あっ、みっきーさん こんにちは。太一と申します。」
「こんにちは!リアルセミナー会場は、このビルの5階です!エレベーターで上がってください!」
やたらハキハキした口調で返された。
(”みっきー” は、この人の 情報商材業界での名前だ。なぜかこの業界では、”ぴんきー” だの、”さいぽん” だの、珍妙なニックネームを名乗る人が多い。)
5階に上がり、リアルセミナー会場についた。
会場には、100を超えるパイプ椅子が、ズラッと並べられている。
ライチは、その一つに腰を下ろし、リアルセミナーの開始時刻を待つ。
……ひと昔前は、”●●で稼ぐ系” の情報自体が少なく、価値があった。
だが、今や無料の情報で、それらの情報自体は手に入る。
なので、情報自体にお金を払う価値はない……と言われる。
(だが、有名インフルエンサーは、情報自体の信頼性も高い……と思われてるので、情報単体、情報自体も売れる。)
だが、俺は30万円払って、有料のコミュニティに入ってしまった。
30万円あれば、様々な施策ができたはずだ。
……後の祭り。
だったら、できる限り元を取ろう。
今日ここに来た理由は、リアルセミナーの内容そのものではなく……他者との情報交換。
ここで、メンターや実際に稼いでいる会員に話を聞くのだ。
――開始時刻になった。
サングラスの胡散臭いおっさん……もとい えーと、ナイスミドルが現れた。
この人が、このコミュニティの運営者でありメンターだ。
メンターは、数年間で数億円を稼いだという、そうそうたる実績を声高に語る。
メンター自身は凄い実績らしいが、このコミュニティに30万円払って入った約100人の内 大多数が、一円すらも稼げないまま、業界から消えていくんだろうな……。
だが、セミナーの中で、時折
「貴方たちは、投資意識が高い極めて優秀な起業家です」
「ここにいる人たちとは、一生モノの付き合いにしたい」
などと言ってきた。
なるほど。悪い気はしない。
こうやって会員の気分を良くさせてリピーター化して、継続的にお金を得る狙いか。
つまり……
メンターは、『「●●で稼げます!」で稼ぐ方法』を、俺等に教えて稼いでる……?
頭こんがらがってきた……。
メンターの数十分のセミナーの後は、直弟子達によるセミナーも複数回行われた。
……数時間に及ぶリアルセミナーが終了した。
その後、近くのオシャレなバーを貸し切って ”二次会”が開催。
(参加者には、別途料金が発生)
軽食と共に会員同士の情報交換が始まった。
メンターの近くには、とうぜん多数の会員が集まり、マンツーマンでの会話は難しそうだ。
だが、俺と同じく「異世界で稼げます!」で稼ごうとする人とは、2カ月間チャット上でやりとりをしてきた。
いつもチャットしてるメンバーの1人であり、顔写真をアイコンにしている会員を発見。
陰キャなライチは、平静を装いながらも話しかけてみた。
しばらくすると、異世界以外のジャンルで稼ごうとする複数の会員も集まってきて、情報交換をすることができた。
「異世界×AIの未来予測」
「NFT・メタバースは、異世界同士を繋ぐインフラたりえるか?」
「いずれ自分でコミュニティ運営をする場合の戦略」
様々なテーマで、議論が交わされる。
高額なこのコミュニティには、向上心が高い人物が集まっており、建設的な議論が展開される。
なるほど、視野が広がった。
気になったことはすぐに質問出来て、お互いの知見を深め合える。
建設的な議論を楽しめる。クソ企業の同僚たちのように、足を引っ張り合う人間関係ではない。
……うっすらと、心地よい雰囲気が流れる。
”ここには、仲間がいる”
……だが、俺は長年のぼっち生活で、1人でいることの充実感を知った。故に、この場を冷静に俯瞰できる……つもりだ。
――孤独感が解消される……という満足感を提供することで、リピーター化しやすくなる構造なんだな。
会員同士がコミュニティ内で人間関係を構築すればするほど、それを維持するためリピーターになってくれる確率が上がる。
メンターは時折 交流のきっかけを提供するだけ。その後の手間は発生しない。
金は、懐に入る。
”孤独感の解消”
”自己肯定感の向上”
それが、コミュニティビジネスの極意なのかもしれない。
そして、ここにいる人間も、実のところ腹の探り合いをしている。
自分が狙っている市場の 具体的な重要情報は、決して口外しない。
他人に知られたら、ライバルが増えるからだ。
フレンドリーに接して、相手を褒めちぎって、グイグイ情報を引き出そうとする者もいる。
この雰囲気に、呑まれてはならない――。
一通り話した後、ライチはメンターへと視線を向ける。
その近くにいる人間は、さっきよりも少ない。話しかけるチャンス!
”メンターに、直接アドバイスをもらいたいので、失礼します”
と言っては、この場にいる人たちに失礼に当たりそうだ。
ライチは、少し考えた後に、口を開く。
「僕たちが話し合った意見を、メンターはどう評価するのか……知りたくないですか?」
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる