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一章 颯太アテネ
第十二話
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僕は強い。
先輩よりも。
『颯太のまま』なら、違ったと思うけど、今の僕は『アテネ』だ。
目の前の生首に先輩が怒ってる。
多分、知り合いかなんかだったのだろう。
でも、
(僕には関係ない)
今一緒に居るのは僕で、他人はそこにはいらない。
他人のために怒ってる先輩なんてみたくない。
どうせならその視線も全て僕が支配してしまいたい。
そう思えるのも先輩がはじめてで、どうしたら良いのかもわからない。
他人に興味や感情が奪われているのを見るととても苛ついて。
だから、今は目の前の敵を倒す。
僕の感情におおいに関係してるからだ。
「なのでさよならしましょう。『束縛の意思』」
鎖が踊るように巻き付く。
目の前の敵を縛り付けていく。
息がきっと出来ないだろう。
まぁ、別にいいけど。
剣を作り出す。
剣を片手に首を切る。
最後の言葉とかどうでもいい。
「ねぇ、先輩。僕、とっても強いでしょ?」
だからもう傷つかないで。
仮に傷つくことがあったとしても、それは僕の為だけにして。
昔々、アテネという神がおりました。
誰とも恋することなく、純潔を守り続けました。
アテネは美しく、多くの人が彼女に言い寄ります。
ですが、彼女は誰も教興味がありませんでした。
勇敢な人間の手助けをしたりして過ごす日々。
何百年、何千年と続いた頃のこと。
神様の中の誰かが言いました。
「私達今まで耐えてきたけど、人間たちは欲求に正直すぎだと思うのよ。」
「たまには好き勝手したい。」
そして、神々の娯楽が始まりました。
(くだらない)
アテネはそれをつまらなそうに見つめていました。
一方、新たに神様の卵が生まれていました。
アテネを含む古くからいる神は、ゼウスなどから生まれましたが、今は卵から生まれてきます。
アテネは卵を育てることにしたのです。
そして、
アテネは恋を知りました。
どうしようもない感情を知りました。
自らの戒律に違反することは、その存在の消失を意味します。
(こんなことなら人間に生まれたかった)
戒律何かに縛られず、ただ、束縛することが許される人間に……………
アテネは戒律を破ることにしました。
今のままでいるには辛すぎて、何も手がつかなくて。
両思いでなければ消失しません。
アテネは賭けにでることにしました。
アテネが勝った。
それは当然の事実のような、そんな気がして僕は首をかしげる。
「アテネっ、大丈夫?」
「~~~先輩っ!怖かったですよ!」
さっき果敢に立ち向かってたの誰でしたっけ?
アテネが僕に思いっきり抱きつく。
鎖がカシャンと音を立てた。
その拍子に僕は後ろに倒れる。
もう、日は沈み、夜となっていた。
「わぁ………先輩!とっても綺麗な星空ですよ!」
アテネの言う通り、綺麗な星空だ。
「本当だね。」
アテネに返事をしながら、僕は、さっきの生首が誰のものなのかを考えていた。
多分あれは偽物だと思う。
そんな気がする。
(だとしたら誰が何のために……)
「せーっんぱい?」
「どうしたの?アテネ。」
アテネが僕に覆い被さる。
「先輩は僕のこと好きですか?」
「知らない。」
嘘。
好きだよ。
でもそれは………
「颯太のことは好きなんですよね。………自分なのに、嫉妬します。」
「アテネは僕のこと、好きなの?颯太のこと抜きにして。」
聞いてみたかった。
ただ、それだけ。
「大好きですよ?颯太のことなんて抜きにしても。そもそも僕は僕。アテネです。颯太と一緒にしないで。僕だけで判断してください。」
アテネは怒ったように言う。
「僕はあなたが大好きです。その感情全部僕にむいてくれないと辛くて、泣きそうで。……先輩にも呪い、かかってますよね。多分それが僕を殺すかもしれないって物で。」
「………そうだよ。」
だから嫌いっていったの。
思い込もうとしたの。
「僕、先輩になら殺されたって良いですよ。寧ろ先輩だからです。もう、そんなことで苦しまないで。大丈夫。」
アテネが微笑む。
「一緒にいます。」
安心させようとしているのか、僕の頭を優しく撫でる。
親が子供をあやすように。
頬に何かが伝う。
「え……先輩どうかしましたか!!」
視界がぼやける。
「わかんないよぉ!僕だって泣きたいわけじゃないし!勝手に出てくるのぉ!」
安心したから?
それとも……
僕は自分で自分がよくわかんない。
今まで他人を避けてきた訳じゃない。
皆冷たくて、優しくしてくれたのなんて、アテネと颯太くらいだ。
………頭のなかを掠める思い出。
「もう、いいや。飽きちゃった、死んでよ。」
冷たくこちらを見下ろす瞳。
「お前のせいなんだよぉぉぉぉお!」
血走った瞳をこちらに向け、人間とは思えないような叫び声をあげる人。
僕のまわりにはいつだって悪意が蔓延していて、でも。
「…アテネと颯太だけは違うよ……」
僕のことを大事にしてくれる。
兵器だとか、そういう扱いをしない。
「ねぇ、アテネ。」
視界がぼやける。
いつの間にか、アテネは僕の頭を撫でていた。
「好き、大好きだよ。ずっと一緒にいて。」
心からの本心だ。
断られたって構わない。
ただ、離れないでほしいかな。
そんなことを思いながら。
「えっと……これって両思いってことですか………?」
「……多分……」
「言い切ってほしいですよ、そこは。」
アテネは笑う。
「ねぇ、せんぱい。」
「なぁに?」
「キス、したいです。」
「さすがに早すぎない?付き合ってすぐじゃん。」
照れ隠しに意地悪を言う。
「そうですね……」
少し悲しげにアテネは眉を下げる。
…………これじゃ、僕が悪いみたいだ………
「仕方ない。特別にキスさせてあげよう。」
いつの間にか空は満天の星空に彩られていた。
そっと唇同士を合わせる。
なんだか変にドキドキするこの気持ちも含めてきっと恋なんだろう。
本にはよくレモンの味だとか言っているけれど。
この時にしたキスの味は、ほんのりと血の味がした。
先輩よりも。
『颯太のまま』なら、違ったと思うけど、今の僕は『アテネ』だ。
目の前の生首に先輩が怒ってる。
多分、知り合いかなんかだったのだろう。
でも、
(僕には関係ない)
今一緒に居るのは僕で、他人はそこにはいらない。
他人のために怒ってる先輩なんてみたくない。
どうせならその視線も全て僕が支配してしまいたい。
そう思えるのも先輩がはじめてで、どうしたら良いのかもわからない。
他人に興味や感情が奪われているのを見るととても苛ついて。
だから、今は目の前の敵を倒す。
僕の感情におおいに関係してるからだ。
「なのでさよならしましょう。『束縛の意思』」
鎖が踊るように巻き付く。
目の前の敵を縛り付けていく。
息がきっと出来ないだろう。
まぁ、別にいいけど。
剣を作り出す。
剣を片手に首を切る。
最後の言葉とかどうでもいい。
「ねぇ、先輩。僕、とっても強いでしょ?」
だからもう傷つかないで。
仮に傷つくことがあったとしても、それは僕の為だけにして。
昔々、アテネという神がおりました。
誰とも恋することなく、純潔を守り続けました。
アテネは美しく、多くの人が彼女に言い寄ります。
ですが、彼女は誰も教興味がありませんでした。
勇敢な人間の手助けをしたりして過ごす日々。
何百年、何千年と続いた頃のこと。
神様の中の誰かが言いました。
「私達今まで耐えてきたけど、人間たちは欲求に正直すぎだと思うのよ。」
「たまには好き勝手したい。」
そして、神々の娯楽が始まりました。
(くだらない)
アテネはそれをつまらなそうに見つめていました。
一方、新たに神様の卵が生まれていました。
アテネを含む古くからいる神は、ゼウスなどから生まれましたが、今は卵から生まれてきます。
アテネは卵を育てることにしたのです。
そして、
アテネは恋を知りました。
どうしようもない感情を知りました。
自らの戒律に違反することは、その存在の消失を意味します。
(こんなことなら人間に生まれたかった)
戒律何かに縛られず、ただ、束縛することが許される人間に……………
アテネは戒律を破ることにしました。
今のままでいるには辛すぎて、何も手がつかなくて。
両思いでなければ消失しません。
アテネは賭けにでることにしました。
アテネが勝った。
それは当然の事実のような、そんな気がして僕は首をかしげる。
「アテネっ、大丈夫?」
「~~~先輩っ!怖かったですよ!」
さっき果敢に立ち向かってたの誰でしたっけ?
アテネが僕に思いっきり抱きつく。
鎖がカシャンと音を立てた。
その拍子に僕は後ろに倒れる。
もう、日は沈み、夜となっていた。
「わぁ………先輩!とっても綺麗な星空ですよ!」
アテネの言う通り、綺麗な星空だ。
「本当だね。」
アテネに返事をしながら、僕は、さっきの生首が誰のものなのかを考えていた。
多分あれは偽物だと思う。
そんな気がする。
(だとしたら誰が何のために……)
「せーっんぱい?」
「どうしたの?アテネ。」
アテネが僕に覆い被さる。
「先輩は僕のこと好きですか?」
「知らない。」
嘘。
好きだよ。
でもそれは………
「颯太のことは好きなんですよね。………自分なのに、嫉妬します。」
「アテネは僕のこと、好きなの?颯太のこと抜きにして。」
聞いてみたかった。
ただ、それだけ。
「大好きですよ?颯太のことなんて抜きにしても。そもそも僕は僕。アテネです。颯太と一緒にしないで。僕だけで判断してください。」
アテネは怒ったように言う。
「僕はあなたが大好きです。その感情全部僕にむいてくれないと辛くて、泣きそうで。……先輩にも呪い、かかってますよね。多分それが僕を殺すかもしれないって物で。」
「………そうだよ。」
だから嫌いっていったの。
思い込もうとしたの。
「僕、先輩になら殺されたって良いですよ。寧ろ先輩だからです。もう、そんなことで苦しまないで。大丈夫。」
アテネが微笑む。
「一緒にいます。」
安心させようとしているのか、僕の頭を優しく撫でる。
親が子供をあやすように。
頬に何かが伝う。
「え……先輩どうかしましたか!!」
視界がぼやける。
「わかんないよぉ!僕だって泣きたいわけじゃないし!勝手に出てくるのぉ!」
安心したから?
それとも……
僕は自分で自分がよくわかんない。
今まで他人を避けてきた訳じゃない。
皆冷たくて、優しくしてくれたのなんて、アテネと颯太くらいだ。
………頭のなかを掠める思い出。
「もう、いいや。飽きちゃった、死んでよ。」
冷たくこちらを見下ろす瞳。
「お前のせいなんだよぉぉぉぉお!」
血走った瞳をこちらに向け、人間とは思えないような叫び声をあげる人。
僕のまわりにはいつだって悪意が蔓延していて、でも。
「…アテネと颯太だけは違うよ……」
僕のことを大事にしてくれる。
兵器だとか、そういう扱いをしない。
「ねぇ、アテネ。」
視界がぼやける。
いつの間にか、アテネは僕の頭を撫でていた。
「好き、大好きだよ。ずっと一緒にいて。」
心からの本心だ。
断られたって構わない。
ただ、離れないでほしいかな。
そんなことを思いながら。
「えっと……これって両思いってことですか………?」
「……多分……」
「言い切ってほしいですよ、そこは。」
アテネは笑う。
「ねぇ、せんぱい。」
「なぁに?」
「キス、したいです。」
「さすがに早すぎない?付き合ってすぐじゃん。」
照れ隠しに意地悪を言う。
「そうですね……」
少し悲しげにアテネは眉を下げる。
…………これじゃ、僕が悪いみたいだ………
「仕方ない。特別にキスさせてあげよう。」
いつの間にか空は満天の星空に彩られていた。
そっと唇同士を合わせる。
なんだか変にドキドキするこの気持ちも含めてきっと恋なんだろう。
本にはよくレモンの味だとか言っているけれど。
この時にしたキスの味は、ほんのりと血の味がした。
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