どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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一章 颯太アテネ

第二十話

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僕は、最後まで見てました。
好きな人のことをずっと見てるなんて当然でしょう?
だから、先輩がアテネを刺した瞬間だって見てたわけなんですよ。

全部全部見てしまったんですよ。
ねぇ先輩。
あなたは本当はアテネを嫌っていたんですか?
それとも、これがあなたの呪いの効力ですか?
どちらにしろもうアテネは虫の息です。
ほっといても死ぬでしょう。
ねぇ、先輩。
僕があなたの本当の王子様なんです。
たった一人の王子様なんです。
この塔から広い世界へ連れ出す、童話のような王子様なんですよ。
だから、アテネじゃなくて僕を見て。
そんな偽物じゃなくて僕を見てくださいよ。
なんで、なんで...
「アテネばっかり見て僕のこと全然見てくれないんですか先輩!!」

僕が、アテネを刺した。
アテネから、血は少ししか流れない。
溢れ落ちるのは、光のみ。
とても、綺麗で、輝いてて、命の輝きと言えるほどだった。
実際、命の輝きだったのかもしれない。
それは、綺麗な青で、とてもとても綺麗な青で。
鎖が、少しずつ意思を失くすように落ちていく。
鍵も、何もかも。
アテネを縛るものが、段々と崩れ落ちていく。
それは、まるで自由の象徴のようで、そして、アテネの崩壊を意味していた。
魔法で必死に治そうとしているのに。
さっきからずっと治癒魔法をかけているのに。
なのに、なんで効かないの?
なんで治癒の光はすぐに光を失うの?
このままじゃアテネが死んでしまう。
僕の愛しい人が、死んでしまう。
こんな別れなんて嫌だよ。
僕も消えてしまいたい。
アテネと一緒に、消えてしまいたい。
けれどきっと呪いが僕の自殺を妨害する。
僕を殺させてはくれない。
愛する人を失った悲しみを抱えさせたまま生きろと言うのだ。
なんて酷いんだろう。
頬を何かが伝う。
「凪...泣かないでくださいよ...せめて最後は笑ってください」
愛する人の泣き顔を見ながら死ぬとかごめんですよ?なんてアテネは笑う。
「喋っちゃダメだよ!早く、治さなきゃ..アテネ...アテネッ!!」
アテネはそっと僕の手を握る。
その握る力の弱々しさに、もうすぐアテネは死ぬんだと改めて現実を突きつけられる。
颯太の叫び声が聞こえる。
何を言ってるのかは聞き取れないけど。
「ねぇ、アテネ、僕も連れてってよ。アテネのいない世界なんて耐えられないんだ。苦しいんだよ。そんなの」
すると、アテネは言う。
「嫌ですよ。僕は凪に生きて欲しいんです。ずっと、ずっと」
だから、なんて言って、アテネは残酷なことをした。
もう僕に自分を殺させないように。
僕が、自分を犠牲にすることが出来ないようにと、アテネは。
「ねぇ、凪。最後に贈り物をあげます。特別ですよ?そうですねぇ、神からの贈り物ギフトとでも言えるでしょうか?あるいは遺品か何かですかねぇ」
アテネの体が輝く。
「僕が全力であなたを呪って祝福してあげましょう」
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