どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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一章 颯太アテネ

第十九話

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満天の星空の下、アテネと指輪を嵌める。
左手の薬指に。
「誓いの言葉ってどんな感じだっけ。」
「僕も知りません。てっきり凪が知ってるとばかり思ってましたし。」
「そっか…じゃあ、僕はアテネのことをずっと愛してるよ。何があっても、多分変わらないと思う。」
「僕も、凪のことを愛してます。ずっと、あなたのことを思ってますよ。」
「……改めて言われるとなんか照れるかなぁ…」
「僕も、です。」
「あとは、誓いのキス、だっけ。」
そっと、キスをする。
重ねた唇は、すぐに離れた。
途端、あたりが黒いモヤに包まれる。
「何、これ...」
黒いもやはアテネに向かっている。
一部が鋭く尖り、まるでナイフのようになったモヤは、明確な殺意を持って。
そう理解した瞬間、体はアテネの体を塔の外に突き飛ばしていた。
自分も塔の外へと落ちていく。
着地する前に咄嗟に魔法を発動させることで、『落下死』を防いだ。
「アテネ、大丈夫?怪我とかしてないよね?」
「えっと...大丈夫です、怪我もしてないです。」
僕はアテネの手を掴む。
「あの黒いモヤはアテネの事を殺そうとしてた。」
「そうなんですね、と言うことはあのモヤが呪いの本体ということで間違い無いでしょうか?」
「...多分そうだと思う。」
アテネに同意し、僕はアテネの手を引く。
「逃げよう、アテネ!!あのモヤが追いつけないところまで!」
僕は必死だった。
だって、アテネを失いたくなかったから。
「逃げましょうか。」
アテネと僕は走り出した。

気づけば、雨が降っていた。
ゆっくりと地面を濡らしていく。
「どこまで逃げるんですか?」
「あのモヤがこれなさそうなところまでかな?」
「....そんなところないですよ。」
アテネは俯いた。
「凪は、一緒に逃げなくてもいいんですよ。僕だけ死ねばそれで...」
「何言ってんの?」
「だからっ、僕が死ぬとこ凪に見られたくないんですよ!!」
アテネは叫ぶ。
「そんなの、みてしまったら一生のトラウマになる..僕は、凪の中にはせめて明るい記憶だけが残っていて欲しいんです。そんな悲しい記憶が最後とか、嫌なんですよ。」
「だから僕が君を....」
あぁ、そうだ。
「ちょっとまってて、今、解決させるから。」
魔法で球体を作る。
外界との拒絶。
アテネを守るための壁。
塔へと一人転移する。
塔に手を当て、魔法の使用を阻害する仕掛けを徹底的に壊す。
そして、中にある黒いモヤを消す。
大丈夫、僕ならやれるから。
僕の魔力なら、これくらい......
「凪!!やめてください!魔力を使いすぎたら..」
「大丈夫だよ、僕は魔女、呪われ子。こんなの余裕に決まってんでしょ?」
いつの間にか、アテネは僕の作った壁を壊してこちらに来ていた。
僕は、ひたすら塔に向かって魔力を流し続けた。
この塔を、僕らの砦にするために。
空は晴れる。
朝日が登り始めていたようだ。
黄金色の空を見つめる。
雲は晴れた。
もやも消えた。
「アテネ、多分これで終わったんじゃないかな?」
「そう、ですよね...あのモヤが呪いの全貌なら、もう..」
塔の中に入る。
もう、塔の中でも魔法は使える。
だから、何が来ても、ここで追い払うことができる。
「アテネ、ずっと一緒に暮らそう。いつか立派な城でもこさえてさ。そこで幸せに暮らすんだ。そしたらさ、幸せになれると思わない?」
前にいるアテネに話しかける。
でも、何故だろう、アテネは振り返らない。
「ねぇ、アテネ...無視しないでよ。あ、そうだ、これから新婚旅行にでも...」
「それは無理ですね、。」
「え?」
アテネは僕のことを先輩呼びしないはずだ。
「見てください。もうそいつは死にますよ?先輩が殺しているんじゃありませんか。」
僕の手は、血に濡れていた。
何故か、ナイフを持っていた。
そして、アテネの背中は、赤く染まっていた。
僕の手には黒いモヤがまとわりついていて。
「あはは...凪、結局呪いは解けてなかったみたいですね...」
アテネはこちらを向いて、そう、笑った。
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