どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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一章 颯太アテネ

第十八話

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「どこまでも逃げませんか?二人で、どこまでも。」
そう言ったのはどっちだったか。
でもまぁ、どっちだったか何て今はどうでも良い。

僕はアテネを愛してた。
最後の最後まで、ずっと。
それはアテネも同じだった。
真実なんてそれで充分だ。
それ以外は、なにも要らない。
だから、だから、アテネは今も…

「僕、そろそろ消えるみたいです。」
穏やかな、特に何も無さそうな昼下がり。
そんなことをアテネは突然呟いた。
「…そんなの、冗談でしょ?たちの悪い冗談。」
「残念ながら本当です。僕の読みが正しければ、あと二日の命ですかね。」
結構持った方だと思いますよ、呪いにしては。
なんて一言を呟いて。
「寿命を伸ばす方法は無いの?」
「あることにはありますけど……凪が辛くなるだけですよ?」
「それでもいいよ。僕はかまわない。」
アテネは言う。
「先輩の呪いを発動させてください。あれは人を殺すものなんですけど、穴があるんです。それは、です。だから、どこまでも逃げれば、その分生きることは可能です。」
僕の呪い。
「じゃあ、僕とアテネは結婚することになるね。」
「そうなりますね。」
結婚。
人生の大きな契り。
契約。
一生をかけて愛するという一種の呪い。
「ねぇ、アテネ。じゃあさ、結婚指輪買いに行かない?確か二日残っているんだよね?」
「良いですけど…辛くなるだけですよ?物を残したって。」
そう言いながらも、出掛ける支度を始めたアテネはどうやら乗り気のようだ。
ねぇ、アテネ。
僕はアテネのことを愛してるよ。
だからさ、死んでほしくないんだよ。
それとね、僕の呪いの発動条件だからって、アテネと結婚出来るの結構嬉しいんだよ?

ショーケースに並んだ指輪を眺める。
どの指輪もとても綺麗で。
「凪、この指輪とかどうです?」
そう言ってアテネが指差したのは、ルビーの指輪。
「凪の目の色と同じですから。」
「だったらアテネの目の色の方が綺麗だよ!」
蒼い蒼いサファイアのような瞳。
「でも、僕は凪の目の色の宝石が良いなぁ…なんて。」
そう言われたら、そうするしかない。
指輪を買う。
丁度ピッタリの物があったから。
「いつか、オーダーメイドで買おっか。」
「………そうですね。」
帰り道。
すっかりあたりは暗くなっていた。
結婚式の衣装とか悩んだけれど、結局いつもの衣装にすることにした。
「綺麗な夕日ですね。」
「そうだね。」
「ねぇ、凪。無理しなくてもいいんですよ?結婚とか、もうちょっと考えたって.....」
「やだよ。僕はアテネがいいんだ。アテネじゃなきゃ嫌なんだよ。アテネが好き、愛してる。ずっと一緒にいたいって思えるくらいに。」
「凪....」
いつの間にか夕日が落ちきっていた。
「...そろそろ、帰ろっか。」
「ええ、そうですね。」
手と手を堅く結んで、帰り道を歩いた。
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