どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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三章 雫ポイズン

対話

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「折角雫が警告したっていうのにずっとその場に留まっているなんてなぁ!雫もかわいそうに。最後の努力が水の泡だ」
「…、あんたは誰。雫はどこへ行ったの。とっとと教えろよ」
目の前の人は雫じゃないことなんてわかりきっていた。
雫と同じ顔をしているくせに、瞳の色と髪が違う。
綺麗だった髪も瞳も無くなって。
元は雫の体だったのに。
目の前の何かが全部変えてしまったのだ。
「食べたよ。私の腹の中にいる。でも、その方が幸せなんだよ」
「…、返せよ。そんなの全部どうでも良いからさ」
もし体が動けば、今すぐこいつをぶん殴ってやるのに。
どうして肝心な時に動かないんだよ。
動けよ、動けばいいのに。
どうして。
いつもなら動くはずなのに。
目の前の何かの能力なのだろうか。
それにしても本当に厄介だ。
解除しようとあがくが、上手く動かせない。
苛立ちが募っていく。
肝心な時に何も出来ない自分に対しての。
「…、返してほしい、か。無理だな。私が死ななければならない。それに、このまま生きていたって雫は苦しむだけだ。それなら、私が有効活用したって良いだろう?」
「お前に何がわかるんだよ。何にもわからないくせに、わかったような事を言うなよ」
するすると近づいてくるそいつに毒づく。
雫の人生がどうなるかなんて誰もわからないのにどうして断定するのか。
未来なんて誰にもわからないのに断定なんてするなよ。
そんなことしたって、何もならないじゃないか。
むしろ、気力も何もかも失って、悲しくなるだけじゃないか。
「雫と私は似ているのだ。だからわかる。あの子はろくな運命に巻き込まれない。不幸にしかならないのだ。…、少し、昔話をしようか。私の話だ。長い、長い昔話…。どうせ、私も完全体になるのには時間がかかる。それにお前もまだ動けないだろうしな。そこで黙って聞いていろ」
蛇の話が始まった。
 
その時、人は神を崇めていた。
生まれた時からかもしれない。
生まれて一番最初に教わることは神への礼拝方法なんてものなのだから。
私はその頃はまだ人間で、教会の教えに従って生きていた。
従順に、ルールを守って。
親がいなかった私は、教会に育てられたから。
親がどうしていなくなったのかを聞けば、処刑されたからだそう。
周囲の子と髪や瞳の色の違う私を皆、毛嫌いし、仲間外れにした。
私はただ孤立していた。
皆と違うからと仲間にいれてもらうこともできない。
この髪の色と瞳の色は親の罪の証なのだと神父は言った。
 
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