どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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三章 雫ポイズン

凪の変化

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「…、痛くても、良い?それと、一回死んじゃうよ。どうしようも無い気持ちにもなっちゃうよ。それでも、良いの?」
「構わないよ。僕がどうなろうと、二人が助かるならそれでいいんだ」
月は僕の首に手をかけた。
何かを決意したような顔をしながら。
 
月が凪の首に手をかけた瞬間に、凪の首がガクンと落ちる。
月が凪の首を折ったのだ。
突然何をするんだと叫ぼうとしたら、凪の首から、血が噴き出す。
行きどころのなくなった血が暴れるように。
血がまき散らされて、魔法陣が描かれる。
人為的に描かれているとでも思えるくらいに。
目を凝らせば、小さな小人が筆を持って描いている様が見える位に。
十字架にいくつもの円が重なり、怪しく光る。
赤く、紅く。
どこまでも妖しく光る。
その光は一つの球に成り、凪の首へと戻っていく。
首が再生した凪に、月はこういった。
「目の前のものをつかんで右に回しなさい」
凪の瞳が開く。
瞳の色は紫に変化し、魔法陣と同じ模様が描かれている。
虚ろな瞳は何を映しているのかわからない。
うっすらと微笑みを浮かべながら、腕を伸ばす。
何もないのに。
凪にしか見えない何かがあるとでも言いたげに。
右に回した瞬間に、蛇の穴という穴から何かの先端が飛び出して花を咲かせた。
それはあっという間だった。
恐ろしいほどに素早く。
殻が固いなら、柔らかい中から裂けばいいという発想で。
花は肉を破り、鱗を砕きながら咲く。
凪はただ笑っていた。
楽し気に、愉快そうに。
右に回す、回す、回す、回す。
回す回す回す回す回す回す回す、マワス。
赤黒い液を撒き散らしながら咲いていく。
その光景は美しさなんて微塵もないのに。
楽しそうだった。
「魔力の殻を破り、中を取り出せ。柔い果実を浮き彫りに」
淡々と凪は呟き、もう一度回す。
何度も何度も回す。
グチャグチャ音を立てながら、血が何度も飛び散る。
辺りはあっという間に赤く染まった。
凪の笑い声が響いた。
その光景はとても残酷だった。
狂ったように笑う凪。
ぐちゅぐちゅと音を立てながら砕かれる蛇。
蛇がピクピクと動く。
牙や舌はダラリと垂れ、毒を垂れ流す。
それしか出来なくなってしまったとでも言いたげに。
美しかった鱗は見るも無残な姿へと変わってしまった。
そこまで来て、凪は興味を失くしたように回すのをやめた。
そのまま瞳を閉じる。
倒れそうになる凪を、僕は支えた。
こんなの、おかしい。
凪がこんな力を持つはずないのに。
「…、月。凪に何をしたの」
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