どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

文字の大きさ
65 / 425
二章 美空ミカエル

歪な思い

しおりを挟む
そう考えて一番最適なのは王座に立つことなのだ。
俺が王座を支配して、凪先輩の周囲を安全で暮らしやすくする。
それくらいしか考えられない。
そしてもしも凪先輩がどこかに行きたいなんて。
俺から離れたいなんて言ったそのときには。
この世の快楽と名のつくもの全てを俺の手で与えてしまうのだ。
そして、最後は俺抜きでは生きられなくなってしまえば良い。
気がつけば、そんな思考まみれていた。
いつだって俺はこんなドロドロの想いを抱えながら凪先輩の近くにいる。
だけど、そんな思考は汚くて、とても似合いそうに無いから、心の底に沈めておいた。
きれいな凪先輩にはこんな俺は似合わないから。
「迷ってしまうから、手を握っておこうか。ここから人混みが激しくなるから。人混みで酔ったりしたら教えてね?」
そんな事を微笑みながら言う。
ねぇ、凪先輩。
貴方が笑いかけている男は、あなたに対して普通じゃない異常なほどの愛情を抱いているんですよ。
そう素直に言えれば良いのに。
全部全部言えたら良いのに。
「はい、わかりました」
そう言って手を握る。
この温もりが消えることが怖くて口に出せない。
あぁ、苦しいな。
その際、指を絡ませた。
ん、と声を出して、強く握り返される。
この握りかたが世間では恋人繋ぎなんて呼ばれているのをきっと凪先輩は知らない。
知っていたら何かしら言うとおもうし、それでも握りかえすなら。
なんてあり得もしない妄想が頭を過る。
夢を見たって絶望するだけなのに、やめられない。
けど、そんな事を振りきり、凪先輩と肩を並べて歩く。
旗からみれば恋人同士に見えるように。
仲睦まじいカップルのように。
せめてもの抵抗だった。
子供みたいだな、なんて思ってしまった。
実際、俺は子供だった。
その手を必死に離さないようにしないと、死んでしまいそうな。
そんな子供だった。
連れ添って歩いて向かう先は魔王城。
美しい煉瓦で出来た城。
黒い煉瓦で作られたそこは禍々しい雰囲気を背負っていた。
門番は凪先輩に親しげに話しかける。
門番は外見は人間と変わらなかった。
二人でしばらくなにかを話している。
混ざる訳にもいかず、どうしようかと二人を見つめていた。
じっと見つめていると、
「そこの坊っちゃんはどうした?全く知らない子供だが、迷い子かい?」
と言われた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

《一時完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ

MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 続編執筆中

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

【完結済】どんな姿でも、あなたを愛している。

キノア9g
BL
かつて世界を救った英雄は、なぜその輝きを失ったのか。そして、ただ一人、彼を探し続けた王子の、ひたむきな愛が、その閉ざされた心に光を灯す。 声は届かず、触れることもできない。意識だけが深い闇に囚われ、絶望に沈む英雄の前に現れたのは、かつて彼が命を救った幼い王子だった。成長した王子は、すべてを捨て、十五年もの歳月をかけて英雄を探し続けていたのだ。 「あなたを死なせないことしか、できなかった……非力な私を……許してください……」 ひたすらに寄り添い続ける王子の深い愛情が、英雄の心を少しずつ、しかし確かに温めていく。それは、常識では測れない、静かで確かな繋がりだった。 失われた時間、そして失われた光。これは、英雄が再びこの世界で、愛する人と共に未来を紡ぐ物語。 全8話

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

王太子殿下に触れた夜、月影のように想いは沈む

木風
BL
王太子殿下と共に過ごした、学園の日々。 その笑顔が眩しくて、遠くて、手を伸ばせば届くようで届かなかった。 燃えるような恋ではない。ただ、触れずに見つめ続けた冬の夜。 眠りに沈む殿下の唇が、誰かの名を呼ぶ。 それが妹の名だと知っても、離れられなかった。 「殿下が幸せなら、それでいい」 そう言い聞かせながらも、胸の奥で何かが静かに壊れていく。 赦されぬ恋を抱いたまま、彼は月影のように想いを沈めた。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎月影 / 木風 雪乃

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

《完結》僕が天使になるまで

MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。 それは翔太の未来を守るため――。 料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。 遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。 涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。

処理中です...