どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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二章 美空ミカエル

望み

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魔王城へ行くよ、なんて言って凪先輩は俺に背を向けて歩く。
その背中を追いかけながら、ドキドキする胸を押さえていた。
魔王城へ行く理由は、魔王城には多くの呪いに関する知識が集まっているからだ。
だって、魔族の方が呪いに関する知識が深いから。
魔族のなかでは呪いなんて珍しいものじゃない。
昔から呪いと共存してきたからだ。
魔族の赤子は呪い持ちが生まれる事が多い。
その影響で、国の繁栄と共に呪いに対する対処法が産み出されてきた。
そもそも、魔族は人類に比べて遥かに進んだ文明を持っている。
だから、魔族と人間の争いに対して疑問を抱くものもいたりする。
そういう魔族は人間のもとへ説得しに行くようだが、今のところ成功していない。
どうやら、何度も訪れているようで、住民と親しげに言葉を交わしている。
とても楽しそうだった。
そんな凪先輩を眺めながら、あの王国よりもここの方が暮らしやすいのだろうと思った。
あの国では、凪先輩は獣のように扱われるだけだから。
気分によって可愛がられるならまだましだ。
あの扱いはどう考えても異常だ。
同じ人間に対する仕打ちとは思えない。
もしも二人でここで暮らせたら。
身分も全て捨てて。
ゆっくり暮らせたら。
あの王国からさよなら出来たら。
きっとそれは幸せで。
でも、俺の力じゃきっと無理だろうなと思った。
だって、俺の力は戦闘向きじゃない。
戦闘用の魔術だって、戦術だって沢山覚えた。
使えるようにだってした。
それでも、他の人には遠く及ばない。
精々一般の人間より少し高い程度で。
伝説の勇者のような強さには足りなすぎた。
普通の力なんてものでは凪先輩を完全に守りきれない。
そんな事はわかっていた。
だからできないとわかってしまった。
そりゃあ時間は沢山ある。
この間にずっと鍛練を続けていればいつかはなれるだろう。
でも、その間ずっと凪先輩が傷つく事になる。
父さんがいつまでじっとしているかもわからない。
いつ凪先輩を汚すのかも。
俺は、凪先輩に笑って欲しいと思っている。
蝶のように、花のように、心の底から丁寧に扱ってしまいたい。
なにも苦労して欲しくない。
隣で笑ってくれれば、他に何も要らないと思えるのだ。
それだけで幸せなんだ。
だけど、そのためにはどの方法も時間がかかりすぎて。
足りなくて。
手を焼いている隙に凪先輩はひどい目に会わされて。
そういう事を想像出来てしまうから。
どんなに苦労したって良いから。
凪先輩を救えるのならなんだって良い。
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