どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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二章 美空ミカエル

愚者の踊り

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本当に愚か。
一番愚かなのは僕だけど。
負傷者を出していないからかな。
関係のない人間を殺す気なんて毛頭ないから、物しか壊してない。
どうせ建物なんて魔法で直せるし。
魔法で直せない人間様殺さないだけマシでしょ?
本当に愚かで。
くだらない。
そう思いながら、進む。
城内を歩く。
城内は珍しく暗かった。
どうせ美空はまだ剣に囚われているだろうし。
美空に似た何かを探せば良い。
それでミカエルを見つけて。
先輩を取り戻す。
頑張ったね、なんて褒めてくれるかな。
褒めてくれたら嬉しいな。
先輩に褒められるとすごく承認欲求が満たされるんだ。
そういえば母親は無事かな。
死んだかな。
どっちでも良いな。
僕には関係ないや。
正直言えば、どっちでも構わないから。
あ、でもそれもちょっと嘘かも。
死んでくれてたら良いなって思ってるから。
そもそも、あの使用人が犯人だって知ってたでしょ、お母さん。
美空を守る為に使用人全てを監視しているの分かってるから。
僕が無実な事なんて知ってたくせに。
それどころかいつでもあいつ断罪できたでしょ。
そこから判断できること。
それはさ。
僕に対しての情なんて無いに等しいでしょってこと。
気づいてたよ。
そこまでして美空をどうして守りたいのかは知らないけど。
色恋沙汰なのは勘付いていた。
美空を見つめる母親の瞳が僕が先輩を見つめる僕の瞳に似ていたから。
勘付いてしまってからは、とっとと失せてくれないかと思った。
何十歳と年齢差があるのによくそんなに夢中になれる。
少しくらい冷めても良いはずなのに歳を追う事にどんどん熱を上げていく。
その様が気持ち悪いと他人事のように思っていた。
僕の感情の方が遥かに気持ち悪いってのに。
「歳を取るほどあの人に似てくるわ...、ふふ、大人になるのが楽しみ」
廊下を通っていた時のこと。
そう言っているのを聞いてしまった。
大人か。
美空を別人と重ねて。
成長を心待ちにしてたってわけね。
確かに大人になれば王位も継げる。
継いで仕舞えば誰と結婚するも自由。
つまり美空は代用品?
そのあの人ってやつの代わり?
なんて馬鹿げた話だろう。
父さんに美空は一切似ていない。
だから別の誰か。
父さんもそんな事どこか理解しているだろうけれど、何も言わない。
二人は愛し合っているわけではなくて、ただ利害が一致したから結ばれただけ。
それだけの関係だ。
王族ならではの関係。
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