どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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四章 雪闇ブラッド

第三話

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目を擦って、眼鏡のレンズを拭いて、もう一度見てみる。
うん、見間違いじゃないな。
どうしよう、泣きそうなんだけど。
どういうこと?
そんな言葉が頭の中で浮かんだ。
自分で浮かべておいて悲しくなった。
なんかなぁ…。
思い出の中の凪に思いを馳せる。
僕らの後を一生懸命ついてきてくれて可愛かったなぁ。
闇奈、闇奈って。
一生懸命僕の名前を呼んでくれて。
一緒に花畑にも行ったりしたよな。
その時花冠を作って、プレゼントしたりしたけど、たぶん鈍い君はわかんなくて。
「…、ね、凪。俺の事、覚えて…ない?」
雪が下を向きながら分かりきった質問をする。さっきの反応からも答えなんて分かるだろ。
「覚えてないや…。ごめん、僕五年くらいの記憶抜けてて、その時に会った事、あるの?」
それを聞いた雪は走り出した。この事実から逃げる為に。そんな現実を認識しないために。
「なぁ、学校案内してくれへん?ここ、初めて来たばかりで分からへんし…。な、凪。二人きりで案内して欲しい」
姫の目を見て言う。凪は昔から僕達の姫だ。それはいつまでも変わらない。
「…、良いよ」
二人きりで、学校案内が始まった。
どこか気まずさを孕んだまま。

プリズンは広い。
とてつもなく広い。
それも当然か。
先の見えない廊下を見据えながらそんなことを思う。
なんせ世界中から集めた人材を収納しているのだ。
だから広いのは当然と言えば当然だった。
逆に広くなければおかしい。
「ね、二人はなんでこんなところに来たの?普通来ようと思わないよ。だってみんな恐れてるしさ。なんか特別な事情でもあるの?」
凪が僕に聞く。
声に一切感情がこもっていないような、どこか探るような。
そんな声色。
長い廊下を歩きながら。
廊下にはしばらく二人分の足音が響く。
「こんなところって…、どうしてそんな事いうん?そこまで悪いとこでもないやろ。今のところは」
「…、ここを卒業したら、強制的に勇者にカテゴライズされて、滅茶苦茶な仕事ばかり来るようになる。死ぬよ。並大抵の人間じゃ死んじゃうんだよ」
凪の物言いはまるで、咎めるようだった。
プリズンに来た事を。
昔の知り合いらしいから、こんな事を言うのだろう。
それとも、もし二人っきりになったら誰にでもそんなことをいうのだろうか。
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