どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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四章 雪闇ブラッド

第二十九話

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颯太の瞳のように綺麗な青色の宝石。
サフィアがそこにあるだけ。
そっと、サファイアを触ってみる。
何だかとても美しくて。
案外緩かったそれはすぐに外れた。
ころり、と音を立てて。
それを拾おうと手を伸ばすと。
かさり、と音がして。
そこには手紙が入っていた。
古ぼけて、少し黄ばんだ。
取り出してみたそれは、とても小さくて。
魔法で縮められている事が分かった。
震える声で解呪の呪文を唱える。
なんで震えているのか分からなかった。
本能的にきたものなのかもしれないし。
もしくは。
この手紙に対して懐かしさを感じているからかもしれない。
元の大きさになった手紙には、こう書かれていた。
「愛する凪へ。アテネより」
その名前を見た瞬間、無意識に涙を溢した。

明日、きっと僕は死ぬ。
何となく理解していた。
呪いとして呼び出された時から何となく。
だから死ぬのは怖くなかった。
凪と一緒にいる時も、どんな時も。
僕はどうせ死ぬんだろうと思いながら生きていた。
そのくせ、凪が死のうとするのは嫌だって思ったり。
自分の心がよく分からないよ。
僕が死んだ後、なぎはどうなるのかな。
そんな事ばかりが頭に浮かぶ。
それくらい、僕の中で凪が一番大事なものになっている。
少しくらい自分の心配をすれば良いのに。
そんなの微塵としていない。
きっと、僕は凪が死なないように、僕自身をかけた呪いをかけるんだろう。
凪にとって一番大事なもの。
それはきっと僕との記憶。
だから、僕の記憶を賭けた呪いをかける。
でも、その賭けに僕が負けたら。
宝石展で購入した指輪が光る。
二人で一緒に買ったペアリング。
この指輪の中に残しておこうか。
僕が存在していたって記憶を。
紙とペンを取り出して、机上に向かう。
どうせ残すなら手紙のほうがいいでしょう?
それも何度も読めるように。
きちんと魔法で作らずに既製品を使うから。
ペンを走らせようとして、止まる。
なんて書こうか。
突然思い立った事だから。
手紙の内容なんて何も考えていなかった。
お元気ですか、は違う気がする。
お久しぶりです、は他人行儀だ。
いい書き出しの言葉が浮かばない。
そこで、僕は賭けを思い出す。
僕の存在を賭けた賭け。
そっとペンを走らせた。
『僕の事、覚えてますか?覚えていてくれたら嬉しいです』
「いや、なんか滅茶苦茶キザですよ!!恥ずかしいです!!」
自分で書いたくせに恥ずかしくなって悶えてしまった。
あぁ、恥ずかしい。
こんな小っ恥ずかしい言葉書くものじゃない。
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