どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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四章 雪闇ブラッド

第三十三話

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そんな事少しも思っていないくせに。
本当は、僕とだけ幸せになれば良いと思っているくせに。
その癖に本心と違うことを書く僕はとんだ嘘つきだ。
凪の指輪の石を外して、小さくした手紙を入れて、もとに戻す。
夜空を見ると、あの日と同じ満天の星空がそこにあった。
そっと目を細める。
今日が晴れていて良かった。
この景色を目に焼き付けたかったから。
最後に、この景色を見たいなと思ったから。
あの夜に、君と結ばれた。
もう一度、あの頃に戻れたら。
ずっとずっとあの頃を続けられたら。
下を見る。
どこまでも続く。
地面までの距離。
下が見えないや。
おかしいなぁ。
こんなに高かったんだ。
飛び降りたらきっと死んでしまうだろう。
確実に。
勢い良く四肢を投げ出して。
衝突した瞬間弾けとんで。
内蔵全部ぶちまけながら苦しんで死ぬだろう。
普通の人間であればそれはそれは汚く惨めな死に様だろう。
落下する時、普通は途中で意識が途切れるらしい。
まるで空にダイブするような。
そんな感覚らしい。
呪いの僕も、同じような感覚が起きるかな。
起きてくれたらいいな。
僕のからだの主な構成要素は魔力。
死んだら僕の体は跡形もなく消える。
僕が存在していたって言うのは、凪の記憶とこの指輪と、手紙でしか証明できない。
それがお互いにとって、一番の最善策なのかもしれない。
綺麗に消えるし、凪の中で美しい思い出として昇華されるだろう。
時間が経てば人の記憶は美しく変わるように。
そしたら、この手紙にあるように。
幸せを求めて。
凪は生きていけるに違いない。
そうだ。
こんな汚い感情を抱いたまま凪の傍にいちゃだめだ。
あの子は純粋で、綺麗で。
僕が汚しちゃ駄目だ。
今、消えてしまおう。
その方が僕は綺麗に終われる。
そう思って足をかけた瞬間。
「アテネ」
凪が僕の事を呼んだ。
後ろを振り返る。
凪は寝たままだった。
寝言で僕の名前を呼んだのか。
無意識か。
なんだぁ。
「驚かさないでくださいよ。せっかくの決意が揺らいじゃうじゃないですか」
凪の頬に触れる。
そういう思わせ振りなことはやめて欲しい。
期待しちゃうじゃないか。
何無意識に僕の名前を呼んでくれてるの。
もしかしたら、なんて。
この方がお互いにとって良いとわかっているはずなのに。
理解しているはずなのに。
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