どうしようもない僕は報われない恋をする

四章 雪闇ブラッド

今は仮装しない姿で

闇奈は昔からお母さんが嫌いだ。
というより一族全員を嫌っていると言った方が分かりやすいかもしれない。
闇奈にとっての血影の血筋を引くものは恨むべき対象。
一緒になんていられない者。
だって、俺の代わりとして見られるのだから。
だから嫌なのだろう。
だからといって俺が消えたって解決するわけでも無いだろうし。
時々闇奈が可哀想になる。
こんな家に生まれて。
俺と双子になってしまって。
もしも別々に生まれていたらきっと良かっただろうと。
闇奈が俺に魔王城に人間を保護する事になったと言った時。
こいつはやっぱそういう方向に進むんだなと思った。
家とは真逆の方向へと。
家が絶対に嫌がる事をするようにしようと。
そういうのはなんとなくわかっていたからそれは良いけど。
「どうして殺さなかったんだよ。人間は殺すべき。父さんも母さんも言ってただろ？」
そう返すことにしよう。
俺が魔族の味方をするのはそっちの方が俺にとっては楽だから。
楽なのは良い。
苦しい思いをしなくて済む。
血影家の族長となる運命はどうなったって逃れられない。
それならば少しでも楽しく生きた方が良いだろう？
全く、理久もどうかしている。
人間は全員殺そうって決めたの理久なのに。
例外なんて作っちゃダメじゃないか。
その人間が不死だという事は闇奈から聞いたから。
きっと理久は運命だと勝手に錯覚したのだろう。
不死であれば死ぬことがないもんね。
仕方ないのかもね。
老人達も理久の事。
道具としては使えるけど後継は奏多に任せるって言ってたし。
一生孤独なら共に過ごす人間の一人や二人欲しくなるよね。
伴侶なんて一生手に入る事がないんだから。
とりあえず母さんに報告してどうするか決めなければ。
十五歳になれば族長として自由になるけど、それまでは母さんに従わなければいけない。
血影家では母さんが一番偉い。
なぜなら母さんは純血の家系なのだから。
父さんも純血ではあるけど、母さんの方が血が濃い。
だから我が家では母さんに従うようになっている。
水晶にそっと触れる。
水晶の中に一人の女が現れる。
若い頃の美貌を保ったままにしている。
吸血鬼の力で。
若い方が多くの人の能力を支配するのに楽だから。
早速相談することにした。
そうすると、母さんは俺に女装しろと言った。
俺は母さんの言うことを馬鹿正直に実行した。
その所為で俺は...。
「お待たせ、凪」
一緒に出かける約束したから。
男の姿で凪の前に現れる。
髪は長くない。
可愛い服も着ていない。
ちゃんと男の姿。
変な所は無いかと確認したら時間があっという間に解けていて。
急いで支度してここに来たのだ。
女ではなく男として。