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四章 雪闇ブラッド
悲しかった誕生日
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いつも僕の分の誕生日プレゼントはない。
ケーキに乗ったプレートにも。
僕の名前がない。
雪の名前はあるのに。
チョコクリームのホールケーキ。
雪が好きだからと毎年注文されていた。
雪の好きなものばかりが並んだテーブル。
僕の元には少ししか運ばれないけれど。
僕は本当は白い生クリームのケーキが好きだった。
なめらかな舌触りで。
クリームの味わいが良くて。
白くデコレーションされていて。
まるで純白のドレスを着ているような。
純粋で。
口の中でシュワシュワと生クリームが溶けていくのだ。
白に赤いイチゴが良く映えるのも良い所だ。
雪みたいで。
本当は、生クリームケーキを食べたら純粋になれる気がして。
雪みたいになれる気がして。
その頃から僕は周囲にどう思われてるのかわかってたから。
だからゆきみたいになりたいって思うようになった。
髪を染めるのは無駄だってわかってたからしないけど。
だから生クリームケーキを食べれば雪みたいになれると思ってた。
そんな幻想を抱いていた。
けれど、食べられる事はなかった。
出てくる事はなかった。
まるで僕は一生綺麗になれないと言われているような気がして。
自分で買えば良いじゃないかと言われそうだけど。
誕生日に食べたかったのだ。
誰かにお祝いされながら。
生クリームケーキをプレゼントされたかった。
呪い子を持つ家族は。
その成長スピードの速さに合わせて、五歳になるまでは。
半年に一回お祝いする。
その習慣は血影家にもちゃんとあった。
その3回全て。
雪の誕生日会だった。
僕の誕生日なんてものはなかった。
きっと生まれた瞬間から。
望まれない命だったんだろう。
「雪。次の誕生日会だけど、ケーキは何が良いかしら。ガトーショコラ?それとも...」
雪と二人で部屋にいた時。
母がそんなことを言った。
いつもと変わらない笑みを浮かべながら。
その時、誕生日会について話し合っていた。
すでに何度も他人の誕生日会に参加していたから。
血影家の後継だから幼い時から数えないレベルのパーティーに参加させられる。
パーティーに参加するのは特に嫌じゃなかった。
初めての誕生日パーティーまでは。
その度に目にする様々な食事やケーキ。
素敵なプレゼントを見て、当時僕らは楽しみにしていた。
一歳まではお互い中が良かったのだ。
二人分だからきっとものすごく豪華で。
素晴らしい物なんだと期待していた。
「そろそろ俺たち誕生日近いよな。誕生日プレゼントお前は何願うんだよ?」
そう雪が首を傾げてきく。
「僕は...生クリームケーキがあればええねん。それだけで十分なんや」
そう僕はいう。
「はっ、ケーキなんてあって当然だろ?全く。プレゼントはケーキとは違うやつだよ!俺は...うーん...最新のゲームとか?」
そう雪は考えながらいう。
「だったら僕は本がええかな」
ケーキに乗ったプレートにも。
僕の名前がない。
雪の名前はあるのに。
チョコクリームのホールケーキ。
雪が好きだからと毎年注文されていた。
雪の好きなものばかりが並んだテーブル。
僕の元には少ししか運ばれないけれど。
僕は本当は白い生クリームのケーキが好きだった。
なめらかな舌触りで。
クリームの味わいが良くて。
白くデコレーションされていて。
まるで純白のドレスを着ているような。
純粋で。
口の中でシュワシュワと生クリームが溶けていくのだ。
白に赤いイチゴが良く映えるのも良い所だ。
雪みたいで。
本当は、生クリームケーキを食べたら純粋になれる気がして。
雪みたいになれる気がして。
その頃から僕は周囲にどう思われてるのかわかってたから。
だからゆきみたいになりたいって思うようになった。
髪を染めるのは無駄だってわかってたからしないけど。
だから生クリームケーキを食べれば雪みたいになれると思ってた。
そんな幻想を抱いていた。
けれど、食べられる事はなかった。
出てくる事はなかった。
まるで僕は一生綺麗になれないと言われているような気がして。
自分で買えば良いじゃないかと言われそうだけど。
誕生日に食べたかったのだ。
誰かにお祝いされながら。
生クリームケーキをプレゼントされたかった。
呪い子を持つ家族は。
その成長スピードの速さに合わせて、五歳になるまでは。
半年に一回お祝いする。
その習慣は血影家にもちゃんとあった。
その3回全て。
雪の誕生日会だった。
僕の誕生日なんてものはなかった。
きっと生まれた瞬間から。
望まれない命だったんだろう。
「雪。次の誕生日会だけど、ケーキは何が良いかしら。ガトーショコラ?それとも...」
雪と二人で部屋にいた時。
母がそんなことを言った。
いつもと変わらない笑みを浮かべながら。
その時、誕生日会について話し合っていた。
すでに何度も他人の誕生日会に参加していたから。
血影家の後継だから幼い時から数えないレベルのパーティーに参加させられる。
パーティーに参加するのは特に嫌じゃなかった。
初めての誕生日パーティーまでは。
その度に目にする様々な食事やケーキ。
素敵なプレゼントを見て、当時僕らは楽しみにしていた。
一歳まではお互い中が良かったのだ。
二人分だからきっとものすごく豪華で。
素晴らしい物なんだと期待していた。
「そろそろ俺たち誕生日近いよな。誕生日プレゼントお前は何願うんだよ?」
そう雪が首を傾げてきく。
「僕は...生クリームケーキがあればええねん。それだけで十分なんや」
そう僕はいう。
「はっ、ケーキなんてあって当然だろ?全く。プレゼントはケーキとは違うやつだよ!俺は...うーん...最新のゲームとか?」
そう雪は考えながらいう。
「だったら僕は本がええかな」
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