どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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四章 雪闇ブラッド

決意

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純白で高潔。
そう思えたらいいのに。
そうなれたら良かったのに。
どうしてもなれないその存在に。
あぁ、なんて憧れを宿して。
その時、凪の目に反射した俺の瞳から、光がなくなったように見えた。
光なんて光の反射だけなんだから気にしなきゃいいのに。
ポツリと、口の中から何かが漏れた。
「…、本当は、俺は。純白じゃないよ。高潔なんかじゃないよ」
むしろ薄汚れてすらいるよ。
全く綺麗じゃ無いんだよ。
純白なんかじゃない。
純白だったらどんなに良かっただろうが。
雪のような外見は天使のようで美しいと言われる事があるが、本当は美しくなんて無い。
外見だけ取り繕った獣だ。
ただの生き血をすする事でしか生きる事が出来ない。
酷く哀れな生き物だ。
汚らわしい存在だ。
まるで蚊のような害獣だ。
ただ見かけが綺麗なだけな。
そう自分を卑下できるポイントがあるのが嫌だった。
ただの人間であったら良かったのに。
ただの人間だったら、明るく生きること出来たのに。
当たり前のように朝起きて、ご飯食べて、会話を交わして、そして。
日光の下ちゃんと歩けたら良いのに。
そしたらきっと、ちゃんと自己肯定出来たような気がするのに。
人じゃなかったら。
魔物であったとしたら人と同じ様に生きれるものであれば良いのに。
まるで理久みたいに。
そしたら、自身を。
ちゃんと認められたのかな。
そう思って。
打ち消して。
そのことを全て打ち消すように。
飲み込むように。
残りのケーキを残らず食べた。
クリームをフォークで掬って食べて、スポンジを切り取って、飲み込んで。
全てを紅茶で飲み干して。
口の中でヴァンベリーを噛み潰して。
全部美味しくて。
ご馳走様と言った。
凪がそっと白いハンカチを取り出す。
僕の口元を拭いて、赤いソースがついてたよ、と言った。
ありがとう、と返した。
そっと席を立って、
「今度、俺もお茶会開くから。その時呼ぶよ。今回はありがとう」
そう言い残して、家に帰った。
凪の顔なんてまともに見れなかった。
見ようともしなかった。
なんて言えば良いのか分からないから。
ただ、もう咲として会うのは最後だろうなと思った。
チョコレートケーキが好きなのは、僕に相応しいと思ったから。
真っ白の生クリームに、カカオを混ぜ込んでチョコクリームを作るらしい。
純粋なものに、不純物を混ぜ込んで作るという製法が、俺に相応しいと思った。
穢れきった俺に。
別に汚れてはいないと思うけれど。
外見は綺麗だけど。
闇奈の一件や、吸血鬼という生き物がまるで俺の呪われた人生を示しているような感じだった。
鏡の前に立って、髪を切る。
鋏を取り出して、一房の髪を掴んで刃を通す。
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