どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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四章 雪闇ブラッド

初めて見る景色

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直視したら、恥ずかしさで頬に熱が集まってしまうから。
自分から距離を詰めるのは慣れているけれど、他人に距離を詰められるのは慣れてないから。
だから急に距離を詰められるのは苦手だ。
どうすれば良いのかわからなくなるから。
美空に抱き締められたまま滑り出した。
「あ!!待ってよ凪!先に行かないで!!」
理久が後ろから叫ぶ声が聞こえる。
少し振り返ると、スケート靴から刃を取り出し、滑り出そうとしている姿が見えた。
その姿に、どこか既視感を覚えるけども。
「ごめんね。先に行ってる!!」
美空に導かれるように滑っていくから。
僕に止める方法は無い。
手を離せば良いだろうけれど。
手を離して転んでしまうのが怖くて掴んだままでいる。
と言うよりも。
美空の胸の中の居心地がいいいからそのままでいいかと思っている自分がいる。
美空に抱かれたまま移動しているから。
理久の事も一度振り返ったのみで、それ以来見ていない。
ほんの少しだけ後ろ髪引かれるような感覚でいた。
美空のドクドクとした心音が奏られる胸に抱かれながら滑っていた。
どこか音楽みたいだ。
ミカエルって天使の名前らしい。
前に見た本にそう書いてあった。
きっと美空は音楽を司る天使だ。
そう思える何かが美空にはあった。
どことなく神聖で、美しいイメージが。
「着きましたよ。目を開けてください。…、凄く綺麗でしょう?」
そう美空が笑いながら言う。
見えないけれど、わずかに笑い声が聞こえたから。
笑ったんだなと思った。
胸から顔を外し、目を開ける。
でも、急に強い光が入って来たせいで、よく見えない。
目を擦りながら何度も瞬きを繰り返す。
何度も瞬きを繰り返して、やっと見えるようになった世界はとてつもなく美しい光景であった。
極彩色のライトに照らされたスケート場に。
軽やかな音楽が流れる場所だった。
奥の方には沢山の出店が立っている。
とても綺麗な光景だ。
どこかお祭りのような光景。
男女が一緒になって滑っている。
楽しそうだ。
お互いを見つめあって、楽しそうに踊って。
「まるで舞踏会みたいだ。二人でペアになって踊っているのが」
そう言うと、美空は少し驚いたような顔をする。
「舞踏会に行った事があるんですか?」
驚くのも無理はないだろう。
だって僕は十五年間表に出てなかったのだから。
舞踏会に参加してるなんてありえない。
だって舞踏会に参加するには身分を証明したりするから、記録には残るし。
だから記録に残さずに行動することなんて出来ない。
だから無理なのだ。
出来ないのだ。
いや、正確に言うと出られなかった、が正しいけれど。
出る事なんて許されるはずがない。
だって僕は呪い子。
絶対的な禁忌だったのだから。
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