どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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四章 雪闇ブラッド

信頼が嫌になる

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理久は笑って、もちろん、という。
「でも、凪は両親と一緒に住みたいとか思わないの?無理してこっちに戻ってくる訳じゃなくてさ」
そう理久が聞く。
凪を帰さない為に今回の帰国を計画した癖に。
どの口が言うのかと俺は思った。
凪は間髪入れずに、
「両親と住むってさ、いまいち実感が湧かないんだよね。まだ一年も経っていないけれど、この魔界の方が僕にとっては居心地が良くて。出来たらここから出たくない」
そう凪は答えた。
理久は、そっか、なんて言って笑う。
人間界と魔界を繋ぐゲートの境目に凪は立って、理久にこう言い放つ。
「戻ってきたらさ、今度は帰還記念のパーティーでもして盛り上がろうよ」
そう言ってゲートを潜る。
俺もその後を追いかけて潜る。
また会えると思っているから、大した別れの言葉も切り出さない。
いいな、いいな。
信じあっていて羨ましいな。
ゲートは城の付近にある大きな森の中に繋げた。
そこから出入りをすることにした。
別にワープを使用して往復しても良かったけれど。
もし帰るときに魔力を切らしていたら大変だからとゲート形式を採用した。
それにゲートであれば一度繋げて仕舞えば今後も何度も繋げる事が可能となり楽になるから。
今後も定期的に凪が来たくなるかもしれない可能性を考慮したものだ。
ゲートを潜り、揺れる木々と空に朧げに浮かぶ月を見て、ちゃんと人間界の方に来れたことを実感する。
凪の方を見ると、少し背伸びをしていた。
リラックスするかのように。
深呼吸をして、凪はこちらを見る。
「さ、これからどこに行くのか教えて欲しいな」
そう凪は言う。
そんな凪に聞かずにはいられなかった。
「…、怖くないの?戻ったらすぐに自分の葬式見ることになるかもしれないのに」
そう凪に問いかける。
今ならまだ戻れるよ。
暖かい部屋でお茶とケーキを準備してゆっくりしよう。
俺のパーティーの時みたいにさ。
それって凄く幸せな時間だと思うんだ。
それに帰ったらみんなでパーティーをするんでしょ?
ならさ、余計したら楽しいよ。
みんなで集まって楽しくパーティーでもしようよ。
怖い思いなんてする必要一切ないじゃないか。
そうじゃないの?
凪と目が合う。
少しだけ、見つめあった。
「怖くない、なんて言ったら嘘になるかな。だって普通に怖いし」
そう凪が言う。
はっきりと、怖いと口に出した。
どうしてここで。
凪は少し笑いながら言う。
「だってさぁ、僕の葬式が行われるのなんて多分確定しているしさ。どうせ目を背けたっていつか見ることになるんだろうし」
そう凪は遠くを見ながら言った。
その視線を辿るとその先には凪の暮らすはずだった城。
「いつかは向き合うべき問題なんだよね。それが今か今じゃないかだけの問題。それなら、今向き合っちゃった方が楽じゃない?理久が言いたいのもそう言うことだろうし」
そう凪が言うのにも信用が滲み出ていてとても嫌になる。
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