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アースランド帝国での日々は忙しくも充実していた。
ディーン様の補佐をしながら、公爵家の公務を一緒にこなすうち、私の心は少しずつ穏やかさを取り戻していた。
そんなある日、ザルカンド王国から私宛に手紙が届いたのだ。
最初はお父様からかと思い少し微笑んだが、封を開けてみると、それはあのマクーン王子からのものだった。
このまま捨ててしまいたい……そう思ったが、次期国王からの手紙に目を通さないわけにはいかない。
ふっと息を吐いて心を落ち着かせ、読み進めていく。
冒頭には、王子が婚約したアイリスの美しさについて並べられていた。
彼女の微笑みがいかに可憐か、誰もが振り返るほどの魅力を持っているか、など、私と比べると素晴らしい……とでも言いたいのだろう。
最初は淡々と目を通していたが、読み進めるうちに、だんだんと文章が怪しくなっていく。
「次期国王と次期王妃として、二人で公務に励んでいるものの、どうも上手くいっていない」
その一文に目を止めたとき、思わず呆れてしまった。
そんなもの、当然の結果だ。
アイリスはその美貌で皆を虜にしてきたのだろうけれど、王妃に求められる教養が備わっていない。
私が二年以上もかけて学び続け、時には辛い思いをしながらも身につけてきた知識や礼儀作法。それがなければ、次期王妃など務まるはずがないのだ。
王子は手紙の中で、最近の公務がうまくいかないのをまるで私に当てつけるかのように語り続けていた。そして、陛下が婚約破棄についてだいぶお怒りであることが書かれている。
あれだけ強引に私を婚約者の座から引き摺り下ろしておきながら、その責任が重くのしかかってきたのだろう。
「このままでは、第二王子が次期国王になってしまうかもしれない……」
なるほど、とうとう王位継承権が危ぶまれるところまで来ているらしい。
私を捨て、アイリスを次期王妃に据える決断をした結果がこれだ。
何の準備もしていない彼女に国政を任せ、そもそもアイリスには私のような補佐役もいないのだ。
公務に失敗して当然だろう。
続けて読み進めると、王子は手紙の終わりに、こう書いていた。
「お前はどうせまだ俺のことが好きなのだろうから、戻ってきて一緒に仕事を手伝え。側室としてなら囲ってやってもいい」
私はその一文を読み終え、しばらく無言で手紙を握りしめた。
あまりにも身勝手で、自己中心的な考え方に、もはや怒りを通り越して可哀想とすら思えてくる。
この期に及んで自分を助けに来いというのか。
側室として囲ってやるなどと、あれほどの屈辱を受けた私にそんな条件をつけるつもりなのか。
そのとき、私の部屋の扉をノックする音が。
ディーン様の補佐をしながら、公爵家の公務を一緒にこなすうち、私の心は少しずつ穏やかさを取り戻していた。
そんなある日、ザルカンド王国から私宛に手紙が届いたのだ。
最初はお父様からかと思い少し微笑んだが、封を開けてみると、それはあのマクーン王子からのものだった。
このまま捨ててしまいたい……そう思ったが、次期国王からの手紙に目を通さないわけにはいかない。
ふっと息を吐いて心を落ち着かせ、読み進めていく。
冒頭には、王子が婚約したアイリスの美しさについて並べられていた。
彼女の微笑みがいかに可憐か、誰もが振り返るほどの魅力を持っているか、など、私と比べると素晴らしい……とでも言いたいのだろう。
最初は淡々と目を通していたが、読み進めるうちに、だんだんと文章が怪しくなっていく。
「次期国王と次期王妃として、二人で公務に励んでいるものの、どうも上手くいっていない」
その一文に目を止めたとき、思わず呆れてしまった。
そんなもの、当然の結果だ。
アイリスはその美貌で皆を虜にしてきたのだろうけれど、王妃に求められる教養が備わっていない。
私が二年以上もかけて学び続け、時には辛い思いをしながらも身につけてきた知識や礼儀作法。それがなければ、次期王妃など務まるはずがないのだ。
王子は手紙の中で、最近の公務がうまくいかないのをまるで私に当てつけるかのように語り続けていた。そして、陛下が婚約破棄についてだいぶお怒りであることが書かれている。
あれだけ強引に私を婚約者の座から引き摺り下ろしておきながら、その責任が重くのしかかってきたのだろう。
「このままでは、第二王子が次期国王になってしまうかもしれない……」
なるほど、とうとう王位継承権が危ぶまれるところまで来ているらしい。
私を捨て、アイリスを次期王妃に据える決断をした結果がこれだ。
何の準備もしていない彼女に国政を任せ、そもそもアイリスには私のような補佐役もいないのだ。
公務に失敗して当然だろう。
続けて読み進めると、王子は手紙の終わりに、こう書いていた。
「お前はどうせまだ俺のことが好きなのだろうから、戻ってきて一緒に仕事を手伝え。側室としてなら囲ってやってもいい」
私はその一文を読み終え、しばらく無言で手紙を握りしめた。
あまりにも身勝手で、自己中心的な考え方に、もはや怒りを通り越して可哀想とすら思えてくる。
この期に及んで自分を助けに来いというのか。
側室として囲ってやるなどと、あれほどの屈辱を受けた私にそんな条件をつけるつもりなのか。
そのとき、私の部屋の扉をノックする音が。
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