婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ

文字の大きさ
7 / 54
婚約破棄、大いに結構

七話 一員として

しおりを挟む
「合格だ。お前、なかなか面白いな」

 レオンの言葉を聞いて、私はほっと息を吐いた。

 全身が汗ばみ、腕は少し痺れている。思った以上に必死になっていたらしい。

「まあ、魔法を使ってくるとは驚いたがな。貴族の令嬢が魔法を鍛えてるなんて、普通はありえねえ」

「……まあ、事情があって」

 私は木剣を下ろしながら答える。

 魔法の訓練は、公爵家では禁止されていた。でも、私はどうしても力を持ちたかった。だから、隠れて独学で学んできたのだ。

「なるほどな。まあいい、とにかく今日からお前は”蒼狼の牙”の一員だ」

 レオンがにっと笑い、私の肩をぽんと叩いた。

 周囲にいたギルドの仲間たちも、それぞれ頷いたり、軽く拍手したりしている。

「ようこそ、蒼狼の牙へ」

 カイルが言い、私を見つめる。その目はどこか試すような光を帯びていた。

「……ありがとうございます」

 私はそう答えながら、心の中で小さく決意を固める。

 これで、私は本当に貴族の世界から離れたのだ。

***

「さて、新入りには恒例の仕事がある」

 試験の後、私はギルドの建物内に案内された。そこには大きな掲示板があり、さまざまな依頼が貼られている。

「ここから適当な仕事を選んで、実際にやってみてもらう。ま、最初は簡単なやつだがな」

「簡単なやつ、ですか」

 私は掲示板に目を向けた。

 そこには「指定された魔獣の討伐」「薬草の採取」「護衛任務」など、さまざまな依頼が並んでいる。

「お前はまだギルドの仕事に慣れてねえ。だから、まずはこの辺りの雑用から始めてもらう」

 レオンが指差したのは「市場の荷運び手伝い」と「薬草の採取」だった。

「……なるほど」

 貴族時代の私からすれば、どちらもやったことのない仕事だ。でも、ここでの生活に慣れるためには、選り好みはできない。

「どっちをやります?」

 カイルが私に尋ねる。

 私は少し考えたあと――

「薬草の採取にします」

 屋敷にいた頃、薬草の知識は少しだけ学んでいた。貴族の女性として、簡単な薬の調合くらいは教養として求められていたからだ。

「ほう、いい選択だな。じゃあ、ちょうど別の依頼で採取に行くメンバーがいるから、一緒に行ってこい」

 カイルがそう言い、奥にいた女性を手招きした。

「新入りを連れてってくれ。セシリアって名前だ」

「了解」

 現れたのは、すらりとした体格の黒髪の女性だった。

「私はミア。よろしく、新入り」

「セシリアです。よろしくお願いします」

 私は軽く頭を下げた。

 こうして、私はギルドでの最初の仕事へ向かうことになった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)

恩知らずの婚約破棄とその顛末

みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。 それも、婚約披露宴の前日に。 さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという! 家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが…… 好奇にさらされる彼女を助けた人は。 前後編+おまけ、執筆済みです。 【続編開始しました】 執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。 矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。

王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。 ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。

お望み通り、別れて差し上げます!

珊瑚
恋愛
「幼なじみと子供が出来たから別れてくれ。」 本当の理解者は幼なじみだったのだと婚約者のリオルから突然婚約破棄を突きつけられたフェリア。彼は自分の家からの支援が無くなれば困るに違いないと思っているようだが……?

妹と違って無能な姉だと蔑まれてきましたが、実際は逆でした

黒木 楓
恋愛
 魔力が優れていた公爵令嬢の姉妹は、どちらかが次の聖女になることが決まっていた。  新たな聖女に妹のセローナが選ばれ、私シャロンは無能な姉だと貴族や王子達に蔑まれている。  傍に私が居たからこそセローナは活躍できているも、セローナは全て自分の手柄にしていた。  私の力によるものだとバレないよう、セローナは婚約者となった王子を利用して私を貶めてくる。  その結果――私は幽閉されることとなっていた。  幽閉されて数日後、ある魔道具が完成して、それによって真実が発覚する。  セローナが聖女に相応しくないと発覚するも、聖女の力を継承したから手遅れらしい。  幽閉しておいてセローナに協力して欲しいと私に貴族達が頼み始めるけど、協力する気は一切なかった。

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

愛せないですか。それなら別れましょう

黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」  婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。  バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。  そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。  王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。 「愛せないですか。それなら別れましょう」  この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。

処理中です...