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偽りの理想
五十一話 心の揺らぎ
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リカルドが去った後も、私はしばらく庭園に座っていた。
「これから、どう生きる?」
彼の言葉が、頭の中で何度も反響する。
戦い続けることが私の生き方だった。
王宮の腐敗を正し、悪しき貴族たちを排除する。
それが私の使命だったし、存在意義だとすら思っていた。
でも――
「……もう、その必要はないのよね」
ぽつりと呟いてみても、胸の奥にぽっかりと空いた穴は埋まらない。
これからの人生を考えなければならない。
でも、何をすればいいのか、まったく分からなかった。
「――セシリア様」
不意に、後ろから声をかけられる。
「……レオ?」
振り向くと、そこにはレオナード・グレイバー公爵が立っていた。
彼は王宮の有力な貴族の一人で、私と同じく改革派の中心人物。
私のことを常に冷静に見守り、必要な時には手を貸してくれた。
「お一人でお考えごとですか?」
「ええ、まあね」
レオは優雅な動作で私の隣に座る。
「先ほどの裁き、素晴らしかったですよ。あの二人が失脚したことで、王宮の空気もだいぶ澄んだ気がします」
「……それは、あなたも同じでしょ? 私だけの手柄じゃないわ」
「確かに、私は手を貸しました。でも、一番戦っていたのはあなたです」
静かに微笑む彼の表情は穏やかだった。
「だからこそ、気になっていたのですが――これから、セシリア様は何をなさるのですか?」
また、その質問。
「……さっきも、同じことを聞かれたわ」
「リカルド殿ですね」
レオはすぐに察したようだった。
「彼も、あなたの未来を案じているのでしょう」
「案じてるって……私は別に、何も困ってないわよ?」
「いいえ、あなたは困っていますよ」
「……」
レオの優しい眼差しに、言葉を詰まらせる。
「戦う理由を失ったあなたは、次に何をすればいいのか分からずにいる」
図星だった。
私はずっと、戦いの中にいた。
でも、戦いが終わった今、どうすればいいのか分からない。
「セシリア様」
レオが、そっと私の手を取った。
「もし、よろしければ……私と共に歩んでみませんか?」
「――え?」
「あなたが望むなら、私はあなたのそばにい続けます」
レオの手は温かく、私を包み込むようだった。
「これからの未来を、一緒に考えていきませんか?」
まっすぐな瞳が、私を射抜く。
リカルドとは違う、静かで穏やかな優しさ。
私の心が、少しだけ揺れた――。
「これから、どう生きる?」
彼の言葉が、頭の中で何度も反響する。
戦い続けることが私の生き方だった。
王宮の腐敗を正し、悪しき貴族たちを排除する。
それが私の使命だったし、存在意義だとすら思っていた。
でも――
「……もう、その必要はないのよね」
ぽつりと呟いてみても、胸の奥にぽっかりと空いた穴は埋まらない。
これからの人生を考えなければならない。
でも、何をすればいいのか、まったく分からなかった。
「――セシリア様」
不意に、後ろから声をかけられる。
「……レオ?」
振り向くと、そこにはレオナード・グレイバー公爵が立っていた。
彼は王宮の有力な貴族の一人で、私と同じく改革派の中心人物。
私のことを常に冷静に見守り、必要な時には手を貸してくれた。
「お一人でお考えごとですか?」
「ええ、まあね」
レオは優雅な動作で私の隣に座る。
「先ほどの裁き、素晴らしかったですよ。あの二人が失脚したことで、王宮の空気もだいぶ澄んだ気がします」
「……それは、あなたも同じでしょ? 私だけの手柄じゃないわ」
「確かに、私は手を貸しました。でも、一番戦っていたのはあなたです」
静かに微笑む彼の表情は穏やかだった。
「だからこそ、気になっていたのですが――これから、セシリア様は何をなさるのですか?」
また、その質問。
「……さっきも、同じことを聞かれたわ」
「リカルド殿ですね」
レオはすぐに察したようだった。
「彼も、あなたの未来を案じているのでしょう」
「案じてるって……私は別に、何も困ってないわよ?」
「いいえ、あなたは困っていますよ」
「……」
レオの優しい眼差しに、言葉を詰まらせる。
「戦う理由を失ったあなたは、次に何をすればいいのか分からずにいる」
図星だった。
私はずっと、戦いの中にいた。
でも、戦いが終わった今、どうすればいいのか分からない。
「セシリア様」
レオが、そっと私の手を取った。
「もし、よろしければ……私と共に歩んでみませんか?」
「――え?」
「あなたが望むなら、私はあなたのそばにい続けます」
レオの手は温かく、私を包み込むようだった。
「これからの未来を、一緒に考えていきませんか?」
まっすぐな瞳が、私を射抜く。
リカルドとは違う、静かで穏やかな優しさ。
私の心が、少しだけ揺れた――。
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